10、詩織の決意
☆佐藤詩織サイド☆
姉が元の彼氏を裏切りセフレを作っていた。
いや。
性格には裏切った訳じゃないけど佐藤満里奈曰く。
コレクションと言っていた。
意味が分からない。
それは浮気じゃないのか。
「...」
私はゲームセンターに来たが心底気分が上がらない。
申し訳ないとは思ったが有紀さんにその事を話す。
すると有紀さんは「帰ろうか」と言ってくれた。
私は頷いてからマンションに帰る事にする。
その途中で有紀さんが「詩織」と言う。
私は「?」を浮かべてから有紀さんを見る。
「...寄りたい所があるんだが寄っても良いか」
「え?」
それから私達は住宅に来た。
一軒家の古びた家の様に見える。
私は「?」と思いながらインターフォンを押す有紀さんを見る。
有紀さんは「...実はこの家に病気の俺の婆ちゃんが居てな」と話す。
その言葉に「!」となった。
「...おばあさま?」
「ああ。筋肉が...だんだん動かなくなる病を患っていてな」
「!!!...そ、それは」
「詩織に紹介してやりたいんだ」
その言葉に私は息をのみ込み玄関が開くのを待つ。
すると玄関から「お。有紀じゃないか」と声がした。
年を取った男性。
例のおばあさんの旦那さんと言ったところか。
「...そちらは?」
「ああ。友人の女の子。佐藤詩織さん」
「...そうか。君が佐藤さんなんだね」
「初めまして」
男性は家の中に「ワシの名前は空田豊吉だ。っと。ささ。入って入って」と招く。
私は有紀さんと一緒に中に入る。
すると酸素ボンベが置かれていた。
医療用の機械なども。
「おーい。はつね!有紀が彼女を連れて来たぞ!」
「お爺ちゃん!彼女じゃない!」
「違うんか?」
「違うよ!」
そんな会話を聞きながら私はくすくす笑う。
それから廊下を見るとはつねさんという女性がやって来た。
車いすで酸素を鼻から注入している。
私はその姿を見ていると「まあ。連れて来てくれたの?彼女さんを」とおばあさまが言う。
私は赤面しながら俯いた。
「違うよ。婆ちゃん」
「あらまぁ。違うの?」
「ああ」
「そうなのね。...でも有紀をいつまでも見てくれそうな感じの女の子ね」
「...」
私は包帯を隠す。
おばあさまは「私は全身の筋肉が落ちていく病気なの。...それで...3年前まではそれなりに歩けていたんだけどね」と苦笑する。
その言葉に「...そうなんですね」と深刻な顔をする。
「貴方、お名前は?」
「佐藤詩織です」
「あら。まさに栞...ね。良い名前ね」
「...そんなにお褒め頂けるとは」
「私は...名前が好きなの」
その言葉に「...え?」となる私。
それからおばあさまを見ているとおばあさまは窓から外を見た。
そして「詩織さん」と私を見てくる。
私は「はい」と返事をした。
するとおばあさまはニコッとする。
「...私は有紀の将来が心配でね。お嫁さんになってくれないかしら」
「婆ちゃん...あのな」
「良いじゃない。...この子はとても魅力があるわ」
「是非ともなります」
まさかの返事に3人は驚愕する。
私は有紀さんを見る。
それから「私、有紀さんが心から好きなんです」と柔和になる。
その言葉におじいさまとおばあさまは「...そうなんだな」と微笑んだ。
「...詩織...」
「...」
私は「その」と言いながら「私は有紀さんの良さを分かっています」と言う。
おじいさまとおばあさまは「...良い子ね。本当に」と話した。
少しこそばゆい。
「詩織さん」
「はい?」
「...貴方を見ていると私の若い頃を思い出すわ」
「え?」
「お爺さんと出会ったのは...あの学生の頃。桜の木の下だった」
「...」
「私は...お爺さんと一緒に死にたいから頑張るわ」
「...!」
「貴方も後悔しない様な人生を歩みなさいね」
そんなおばあさまの言葉に俯いてから顔を上げた。
「...その。悩みがあるんです」と告白する。
するとおばあさまは「あら。どういうお悩み?」と言う。
私は「家族とのこの先の関わりついてなんですけど」と言う。
「...ご家族の?」
「はい。私、大嫌いな姉が居ます」
「...」
「その姉ともう一度話をしたい。...その...アドバイスが欲しいです」
「そうなのね。奇遇ね。私にも年が離れた姉が居たのよ。実は」
その言葉に「!」となる私。
それから「それは...」となった。
するとおばあさまは「でも焼夷弾が実家を焼いてね。...その時に亡くなったのよ」と懐かしく思い出すような顔をする。
そして真剣な顔をする。
「...だから話はしっかりして頂戴。...私の家族の様にいつあっという間に死ぬかも分からないわ」
「...!!!」
私はその言葉に「...はい」となってから俯く。
そうか。
あんな姉でも。
どんだけ屑でも。
家族ではあるんだ。
私を裏切っても...だ。
「有紀さん」
「...?...どうした?」
「良かったです」
「...何がだ?」
「今日、この場所に来て良かったです」
「...!」
有紀さんは私をそう見ながら「...」と唇を噛む。
私はそれを見てから2人を見る。
それから「きっかけが掴めました」と頭を下げる。
そして「...私は暗い感情に負けません」と柔和になる。
その言葉におばあさまとおじいさまは顔を見合わせてから「頑張りなさい」と言ってくれた。




