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無能領主を演じて生き延びます  作者: ガスト


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第9話 無能領主、逆転を仕掛ける

前回、アレンは宰相家の甥・アーサーに“断罪”を宣告された。

だが、彼の目には恐れの色はなかった。

――むしろ、獲物を見据える狩人のように静かに笑っていた。

今回は、いよいよ反撃の幕が上がる。


【本文】


「……ふむ、つまり私を罷免する、と?」


アレンの声は驚くほど静かだった。

だが、執務室の空気は一瞬で凍りつく。

机の上には一通の封書。

王都の紋章入り――正式な領主罷免命令書。


アーサーは勝ち誇ったように顎を上げた。

「そうだ。お前の無能ぶりは王都でも有名だ。

領地は貧困、兵は腐敗、民は怨嗟を叫ぶ。王国の恥だな」


アレンは淡々と返す。

「……そうだな。私は無能だ。なにしろ、領地の現状も知らず、部下にすべてを任せてきた。

――だが、一つだけ知っておくといい。私は“数字”には強い」


「数字?」アーサーが眉をひそめる。


アレンは懐から帳簿を取り出し、机に置いた。

「これは、今月の税収と穀物流通記録だ。王都の帳簿と照らし合わせてみるといい。

……一割の差が出ている。どちらが正しいと思う?」


アーサーがページをめくる。

そして――眉が引きつる。

「な、なんだこれは……!」


アレンは静かに笑った。

「不思議なことだ。どうやら王都に送った分よりも、“実際に収穫された穀物”が多い。

つまり――途中で“誰か”が盗んでいるということになる」


室内に沈黙が落ちる。


「……まさか、宰相家の商人団か?」

側近のミレイユが低く呟く。

アレンは頷いた。

「君たちが査察を行うのは構わない。だが、もしこの証拠が王都の監査局に渡れば――誰が困ると思う?」


アーサーの顔色が青ざめた。

「貴様……最初から、これを狙って――!」


アレンは口角を上げた。

「私は“無能”だ。だが、罠を仕掛けるくらいの頭はある。

この領地を奪うなら――共に沈んでもらう」


その一言に、アーサーは言葉を失った。

外では雨が降り出している。

静かな雨音の中、アレンは椅子に深く腰を下ろした。


「さて、帰るか? それとも、もう少し“査察”を続けるかね」


アーサーは歯を噛みしめ、沈黙したまま踵を返した。

部屋の扉が閉まると同時に、ミレイユが息を吐く。


「お見事です、アレン様。……あの方、本気で血の気が引いてましたよ」


「ふふ、脅しはほどほどにしておかないとな。

本当の地獄はこれからだ。――次は“王都側”を動かす」


アレンの目が細められる。

その視線は、まるで次の戦場を見据えているようだった。


お読みいただきありがとうございます!


第9話では、アレンがついに“政治戦”で一手を打ちました。

王都の査察隊を逆手に取り、敵の不正を突く――これが彼のやり方です。


次回、第10話

「王都の罠、そして密書」

アレンの動きを恐れた宰相家が、ついに裏の手を使う。

果たして彼はどう動くのか――次回、最大の駆け引きが始まります。


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