表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無能領主を演じて生き延びます  作者: ガスト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/39

第36話 無能領主、名を捨てる

更新遅れてすいません

剣がぶつかる音は、夜を裂く雷鳴のようだった。


 林間の空気が震える。


 騎兵の突撃を、第二陣形が受け止める。


 前列は盾。


 後列は槍。


 さらにその後ろ、弓。


 少数。


 だが、隙がない。


 


◆◇◆◇◆


 


「押し返せ!」


 騎士団長が叫ぶ。


 だが馬は罠に怯え、陣は乱れる。


 


 アレンは、最前に立っていた。


 守られていない。


 守らせてもいない。


 


 ただ、そこに立つ。


 


◆◇◆◇◆


 


 騎士団長が馬を駆り、迫る。


「なぜだ!」


 怒号。


「なぜ王に逆らう!」


 


 アレンは剣を構えたまま、答える。


 


「逆らっていない」


 


 刃が交差する。


 火花。


 


「王が、道を誤っただけだ」


 


◆◇◆◇◆


 


 力は拮抗していた。


 騎士団長は強い。


 だが焦っている。


 


「貴様は“無能”だったはずだ!」


 


 一瞬。


 アレンの目が、わずかに細まる。


 


「そうだな」


 


 剣を弾く。


 


「無能を、演じていた」


 


◆◇◆◇◆


 


 その言葉が、戦場を静かに切り裂いた。


 


 騎兵の動きが、止まる。


 


 兵たちの目が、アレンに向く。


 


◆◇◆◇◆


 


「富ませた。

 鍛えた。

 守った」


 


 一歩、踏み出す。


 


「それでも無能なら――

 俺はそのままでいい」


 


 だが。


 


「守る者を選んだ瞬間、

 仮面は捨てる」


 


◆◇◆◇◆


 


 騎士団長の剣が、弾かれた。


 喉元に刃が止まる。


 


 月明かりが、二人を照らす。


 


「……殺せ」


 騎士団長が、低く言う。


 


「いや」


 


 アレンは剣を引いた。


 


「帰れ」


 


◆◇◆◇◆


 


 その判断は、誰よりも兵を驚かせた。


 


「なぜ……」


 


「今日の目的は、一人を救うことだ」


 


 振り返る。


 救出された兵士が、立っている。


 


「それ以上は望まない」


 


◆◇◆◇◆


 


 騎士団長は、しばらく動かなかった。


 やがて、ゆっくりと馬を引く。


 


「……覚えておけ」


 


 低い声。


 


「今夜で、お前は“反逆者”だ」


 


 


 アレンは、静かに頷いた。


 


「そうだな」


 


 迷いはない。


 


◆◇◆◇◆


 


 夜が、静かに終わる。


 王都は炎を消し、

 だが火種は消えない。


 


 丘に戻ったアレンの前に、兵士が跪いた。


 


「なぜ……助けたのですか」


 


 震える声。


 


 アレンは、少しだけ考えた。


 


「剣を振らなかったからだ」


 


 それだけだった。


 


◆◇◆◇◆


 


 だがその瞬間。


 遠く王城で、新たな決定が下される。


 


 ――第四王命。


 グリード領主、討伐。


 


◆◇◆◇◆


 


 夜明け。


 朝日が昇る。


 


 もう、“無能領主”はいない。


 


 いるのは――


 


 王国に刃を向けられた、一人の男。


高評価お願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ