表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無能領主を演じて生き延びます  作者: ガスト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/31

第28話 最初の一撃は、守るために

更新が遅れてすいません


 王国軍の進軍は、規律正しく、冷酷だった。


 揃った足並み。

 翻る王国旗。

 鎧の隙間から覗く、感情のない視線。


「……正規軍だ」


 誰かが呟く。


 恐怖が、隊列の中を伝染していく。


 だが――

 アレンは、前に出た。


 


◆◇◆◇◆


 


「止まれ!」


 王国軍の指揮官が、声を張り上げる。


「王命により、反逆者アレン・グリードを拘束する!

 抵抗すれば、容赦なく――」


「――待ってください」


 アレンの声は、大きくはなかった。


 だが、不思議と、よく通った。


「ここにいるのは、

 王に刃を向けた兵ではありません」


 一歩、前へ。


「畑を耕す者。

 家族を守る者。

 ――ただ、逃げなかっただけの人たちです」


 指揮官は、眉をひそめる。


「だからどうした」


 冷たい声。


「王命に逆らう者は、

 等しく罪人だ」


 アレンは、ゆっくりと首を振った。


「……なら」


 剣を、地面に突き立てる。


「最初に斬るべきは、僕です」


 


◆◇◆◇◆


 


 一瞬。


 戦場の時間が、止まった。


「な……?」


 ざわめく王国軍。


 背後で、誰かが叫ぶ。


「領主様!?」


 アレンは、振り返らない。


「命令です」


 静かに、しかし確実に。


「――誰一人、前に出るな」


 彼は、正規軍を真っ直ぐに見据えた。


「この戦いで、

 最初に血を流すのは――

 指導者であるべきだ」


 


◆◇◆◇◆


 


 指揮官の手が、震えた。


(……狂っている)


 だが同時に、

 胸の奥が、わずかに痛んだ。


(こんな領主を、

 反逆者と呼ぶのか?)


 その迷いを、

 後方の声が打ち砕く。


「ためらうな!

 王命だ!」


 後詰めの将校。


 命令は、絶対。


 指揮官は、歯を食いしばり――

 剣を振り上げた。


「前進――!」


 


◆◇◆◇◆


 


 その瞬間。


 ――地面が、唸った。


 土が盛り上がり、

 影が蠢く。


 森の縁から、

 黒い獣影が、静かに姿を現す。


「……なに?」


 王国軍の兵が、息を呑む。


 狼。

 蜘蛛。

 鳥。


 だが――

 吠えない。飛びかからない。


 ただ、前に立つ。


 アレンは、低く呟いた。


「攻撃はしない」


 群れに、命じる。


「――今日は、守るだけだ」


 


◆◇◆◇◆


 


 最初の矢が、放たれた。


 だが、それは――

 人ではなく、空を裂く。


 《スカイバット》が体当たりし、

 矢の軌道を逸らす。


 突進してきた騎兵の前に、

 《アースボア》が割って入る。


 衝突。


 馬が転び、

 兵が地面を転がる。


 血は出ない。


 致命傷も、ない。


 王国軍が、混乱する。


「……殺していない?」


「攻撃してこない……!」


 


◆◇◆◇◆


 


 アレンは、叫んだ。


「退いてください!」


 戦場に、不釣り合いな声。


「これ以上進めば、

 誰かが死ぬ!」


 王国軍の兵士たちは、

 剣を握ったまま、動けない。


 ――敵が、

 自分たちを守ろうとしている。


 その矛盾が、

 心を縛った。


 


◆◇◆◇◆


 


 背後で、誰かが泣いた。


「……守られてる」


「俺たち、

 守られてる……!」


 アレンは、剣を構え直す。


 肩が、震えていた。


(怖い。

 でも――)


 背後から、確かな気配。


 逃げなかった人たち。


(……これでいい)


 


◆◇◆◇◆


 


 指揮官は、剣を下ろした。


「……前進、停止」


 後方がざわつく。


「なぜだ!?」


 彼は、叫び返した。


「この戦場に、反逆者はいない!」


 沈黙。


 王国軍と、領民。


 その間に立つ、

 一人の領主。

高評価お願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ