第28話 最初の一撃は、守るために
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王国軍の進軍は、規律正しく、冷酷だった。
揃った足並み。
翻る王国旗。
鎧の隙間から覗く、感情のない視線。
「……正規軍だ」
誰かが呟く。
恐怖が、隊列の中を伝染していく。
だが――
アレンは、前に出た。
◆◇◆◇◆
「止まれ!」
王国軍の指揮官が、声を張り上げる。
「王命により、反逆者アレン・グリードを拘束する!
抵抗すれば、容赦なく――」
「――待ってください」
アレンの声は、大きくはなかった。
だが、不思議と、よく通った。
「ここにいるのは、
王に刃を向けた兵ではありません」
一歩、前へ。
「畑を耕す者。
家族を守る者。
――ただ、逃げなかっただけの人たちです」
指揮官は、眉をひそめる。
「だからどうした」
冷たい声。
「王命に逆らう者は、
等しく罪人だ」
アレンは、ゆっくりと首を振った。
「……なら」
剣を、地面に突き立てる。
「最初に斬るべきは、僕です」
◆◇◆◇◆
一瞬。
戦場の時間が、止まった。
「な……?」
ざわめく王国軍。
背後で、誰かが叫ぶ。
「領主様!?」
アレンは、振り返らない。
「命令です」
静かに、しかし確実に。
「――誰一人、前に出るな」
彼は、正規軍を真っ直ぐに見据えた。
「この戦いで、
最初に血を流すのは――
指導者であるべきだ」
◆◇◆◇◆
指揮官の手が、震えた。
(……狂っている)
だが同時に、
胸の奥が、わずかに痛んだ。
(こんな領主を、
反逆者と呼ぶのか?)
その迷いを、
後方の声が打ち砕く。
「ためらうな!
王命だ!」
後詰めの将校。
命令は、絶対。
指揮官は、歯を食いしばり――
剣を振り上げた。
「前進――!」
◆◇◆◇◆
その瞬間。
――地面が、唸った。
土が盛り上がり、
影が蠢く。
森の縁から、
黒い獣影が、静かに姿を現す。
「……なに?」
王国軍の兵が、息を呑む。
狼。
蜘蛛。
鳥。
だが――
吠えない。飛びかからない。
ただ、前に立つ。
アレンは、低く呟いた。
「攻撃はしない」
群れに、命じる。
「――今日は、守るだけだ」
◆◇◆◇◆
最初の矢が、放たれた。
だが、それは――
人ではなく、空を裂く。
《スカイバット》が体当たりし、
矢の軌道を逸らす。
突進してきた騎兵の前に、
《アースボア》が割って入る。
衝突。
馬が転び、
兵が地面を転がる。
血は出ない。
致命傷も、ない。
王国軍が、混乱する。
「……殺していない?」
「攻撃してこない……!」
◆◇◆◇◆
アレンは、叫んだ。
「退いてください!」
戦場に、不釣り合いな声。
「これ以上進めば、
誰かが死ぬ!」
王国軍の兵士たちは、
剣を握ったまま、動けない。
――敵が、
自分たちを守ろうとしている。
その矛盾が、
心を縛った。
◆◇◆◇◆
背後で、誰かが泣いた。
「……守られてる」
「俺たち、
守られてる……!」
アレンは、剣を構え直す。
肩が、震えていた。
(怖い。
でも――)
背後から、確かな気配。
逃げなかった人たち。
(……これでいい)
◆◇◆◇◆
指揮官は、剣を下ろした。
「……前進、停止」
後方がざわつく。
「なぜだ!?」
彼は、叫び返した。
「この戦場に、反逆者はいない!」
沈黙。
王国軍と、領民。
その間に立つ、
一人の領主。
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