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無能領主を演じて生き延びます  作者: ガスト


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第27話 王都動揺。『反逆者』は、なぜ支持されるのか

すいません

王都――。


 朝の鐘が鳴り響く中、

 貴族街の空気は、明らかに重かった。


「……おかしい」


 王都騎士団詰所で、若い騎士が呟く。


「反逆者のはずだろう?

 なのに、なぜ各地で“味方”が増えている?」


 報告書の山。

 そこに並ぶ文字は、どれも信じがたいものだった。


・北部三領、兵の派遣を拒否

・南部商業都市、臨時税の納付を延期

・東部辺境、住民が王都役人を追い返した


 ――反乱ではない。

 だが、確実に「従わない」という意思。


 


◆◇◆◇◆


 


 王城・政務室。


 宰相アーウィンは、静かに立っていた。


 怒鳴らない。

 机も叩かない。


 それが、逆に恐ろしかった。


「……理解できぬ」


 低い声。


「なぜ、アレン・グリードが支持される」


 側近が、恐る恐る答える。


「彼は……

 “民を見捨てなかった”と、噂されています」


 アーウィンの眉が、わずかに動く。


「民?

 国とは、上に立つ者が支配するものだ」


 だが、側近は続けた。


「……今の王都は、“支配している”だけです。

 彼は、“守っている”と」


 一瞬の沈黙。


 その言葉は、

 宰相が最も恐れていた“本質”を突いていた。


(力でも、血でもない……

 “理由”を与えてしまったか)


 アーウィンは、唇を噛む。


 


◆◇◆◇◆


 


 一方、山間の連合拠点。


 アレンは、集まった代表者たちを前に、静かに話していた。


「勘違いしないでください」


 全員の視線が集まる。


「僕は、英雄じゃない。

 完璧な指導者でもない」


 少しだけ、笑う。


「ただ――

 逃げなかっただけです」


 その言葉に、誰かが拳を握った。


「王都に従えば、安全だった。

 頭を下げれば、命は助かった」


 アレンは、視線を落とす。


「でも、その代わりに

 “次に切られる誰か”を見捨てることになる」


 顔を上げる。


「それが、嫌だった」


 


◆◇◆◇◆


 


 若い兵士が、声を震わせながら言った。


「……俺は、王国のために剣を持った。

 でも今は……」


 アレンは、はっきりと答える。


「それでもいい。

 民のために剣を持てるなら」


 静寂。


 そして――

 一人、また一人と、膝をつく。


「……従います」


「あなたの旗の下で、戦わせてください」


 アレンは、深く息を吸った。


(重いな……

 でも、背負わなきゃいけない)


 


◆◇◆◇◆


 


 同時刻、王都。


 王城の高い塔から、

 王都全体を見下ろしながら、宰相アーウィンは呟いた。


「……力で抑えれば、国は割れる」


 だからこそ――

 彼は、次の手を選ぶ。


「――“王”を前に出せ」


 側近が、凍りつく。


「し、しかし……!」


「民は、“王の言葉”には従う」


 冷たい笑み。


「アレン・グリードを

 王への反逆者として、公式に断罪する」


 


◆◇◆◇◆


 


 その報せは、

 夜明けとともに、王国全土へ広がった。


――王自らが、反逆者を糾弾する。


 人々は、息を呑む。


 そして同時に、

 一つの問いが、胸に生まれる。


 「それでも、あの領主は間違っているのか?」

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