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無能領主を演じて生き延びます  作者: ガスト


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第24話 反逆者アレン、炎の檄

夜明け前――

 山間の小城に、静かな灯りがともっていた。


 ここは王都から外れた、旧同盟諸侯の集会所。

 かつて宰相アーウィンにより力を削がれ、

 発言権も軍権も奪われた地方領主たちの“吹き溜まり”。


「……本当に来るのか?

 “反逆者アレン・グリード”が」


「王命で指名手配された男だぞ……

 関われば、我々まで潰される」


 重苦しい空気。

 恐怖と諦めが、部屋を支配していた。


 ――その時。


 扉が、音もなく開いた。


「その心配は、もっともですね」


 現れたのは、

 質素な外套を纏った一人の青年。


 だが――

 その背後に立つ“気配”が、ただ者ではなかった。


「……アレン・グリード!」


 誰かが息を呑む。


 彼は微笑み、深く一礼した。


「王命により“反逆者”にされた、

 元・無能領主です」


 自嘲気味なその言葉に、

 思わず苦笑が漏れる。


 だが、次の瞬間――

 アレンの目が、真っ直ぐ彼らを射抜いた。


「質問を一つ。

 皆さんは――なぜ、ここにいる?」


 沈黙。


「王都が正しいから?

 宰相が正義だから?」


 一人の老領主が、絞り出すように言った。


「……逆らえば、潰されるからだ」


 別の者が続く。


「我々には、力がない」


 アレンは、ゆっくりと首を振った。


「違います」


 その声は、静かだが、力強い。


「力は、奪われただけだ」


 彼は一歩前に出る。


「兵権。財源。発言権。

 全部、“正義”の名の下に切り取られた」


 そして――拳を胸に当てた。


「でも――

 誇りまで奪われましたか?」


 その言葉が、胸を打った。


 


◆◇◆◇◆


 


 アレンは懐から、古びた文書を取り出す。


「これは、宰相アーウィンが

 地方反乱を捏造し、住民三千を“処分”した記録です」


 ざわめき。


「……本物、なのか?」


「本物です。

 署名も、改竄前の原文も揃っている」


 だが、アレンは首を振る。


「――でも、今は公開しません」


 驚きの声。


「なぜだ!?

 それを出せば――!」


「王都は、また“正義の物語”を作るだけです」


 アレンは、強く言い切った。


「必要なのは、証拠じゃない。

 立ち上がる意志だ」


 


◆◇◆◇◆


 


 彼は、全員を見渡した。


「僕は、反逆者になりました。

 でも――」


 静かに、しかし確実に言葉を刻む。


「一人で王国を壊すつもりはありません」


 息を呑む音。


「領地を守りたい者。

 民を見捨てたくない者。

 奪われたものを、取り戻したい者――」


 アレンは、胸を張った。


「共に戦ってください」


 声が、震えない。


「これは反乱じゃない。

 ――奪われた秩序の、奪還です」


 


◆◇◆◇◆


 


 長い沈黙。


 やがて――

 老領主が、杖をついて立ち上がった。


「……わしは、もう一度

 “領主”として死にたい」


 次々に、椅子が鳴る。


「我が領の兵は少ないが……出そう」


「財なら、まだ残っている」


「情報網なら、協力できる」


 アレンの喉が、わずかに鳴った。


(……来た)


 彼は深く頭を下げた。


「ありがとうございます。

 ――皆さんの決断、決して無駄にはしません」


 そして、顔を上げる。


 その瞳は、確信に満ちていた。


「ここから始まります。

 王国を、取り戻す戦いが」

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