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無能領主を演じて生き延びます  作者: ガスト


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第23話 宰相アーウィン、激昂。王城緊急会議

王城――深夜。


 本来なら静寂に包まれているはずの王城中枢は、異様な緊張に満ちていた。


「……もう一度言え」


 玉座の脇、宰相席に立つアーウィン・クラフトの声は、低く、抑え込まれている。

 だが、その内側に煮えたぎる怒りを、居並ぶ貴族たちは本能的に察していた。


「は……

 旧中央文書院に派遣していた“黒手の六人”が、全員……消息不明です」


 報告官の声が震える。


 ――次の瞬間。


 ドンッ!!


 宰相の拳が、重厚な会議卓を叩き砕いた。


「消えた、だと……!?

 王都最強の暗部が、跡形もなく消えるなど……!」


 貴族たちが一斉に息を呑む。


「無能領主アレン・グリード……

 貴様は、どこまで余を愚弄すれば気が済む!」


 怒声が石壁に反響する。


 だが、その怒りの裏で――

 アーウィンは、確信していた。


(これは“偶然”ではない。

 奴は……意図的に、王都の核心へ踏み込んできた)


 危険度が、一段階ではない。

 “王国存亡レベル”へ跳ね上がった。


 


◆◇◆◇◆


 


 緊急招集された王城会議。

 第一軍団、第二軍団、王都騎士団、情報局。


 王国の中枢が、一堂に会していた。


「第二軍団は現在、アレン領へ向け進軍中です」


「しかし第一軍団が撤退した以上、正面衝突は――」


「ならば包囲だ!

 兵糧線を断ち、領民ごと圧殺すればいい!」


 貴族の一人が叫ぶ。


 だが――


「却下だ」


 アーウィンが即座に言い放つ。


 全員が凍りつく。


「アレン・グリードは、

 力だけでなく“民心”を掌握している可能性が高い」


 鋭い眼光。


「無策な弾圧は、反乱の火種になる」


 そして、宰相は――

 冷酷な結論を下した。


「――“王命”を使う」


 会議室がざわめいた。


「お、王命ですか……?」


「はい。

 王の名のもとに――」


 アーウィンは、はっきりと言い切る。


「アレン・グリードを

 『反逆者』として指名手配する」


 沈黙。


 この瞬間、

 一介の地方領主だった男は――

 国家公認の“敵”になった。


 


◆◇◆◇◆


 


 一方その頃。


 王都外縁、廃屋の地下。


 アレンは、粗末な灯りの下で文書を広げていた。


「……やっぱりね」


 そこには、宰相アーウィンが地方反乱を捏造し、

 住民を虐殺した記録。

 複数の署名と、改竄前の原文。


(これが公になれば、宰相は終わり。

 でも――“今”出すのは悪手だ)


 まだ、駒が足りない。


 その時、

 《ハイウイング》から情報が流れ込んできた。


(王城、緊急会議……

 王命準備……指名手配……)


 アレンは小さく息を吐く。


「……来たか」


 そして、笑った。


「いいよ。

 なら――“反逆者”らしく動こう」


 地図の上に、指を置く。


 王都。

 王城。

 そして――地方諸侯の名前。


「宰相が恐れているのは、力じゃない。

 ――“連鎖”だ」


 アレンの瞳が、静かに燃える。


(王都が敵なら、

 王国そのものを揺らせばいい)

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