第20話 王都激震、宰相アーウィンの怒り
王都――政庁塔最上階。
宰相アーウィンの執務室に響いた報告は、政界全体を揺るがすものだった。
「……第一軍団が、“アレン領から撤退した”だと?」
静かすぎる声だった。
だが、その声に触れた瞬間、側近たちは全員、背筋が凍りつく。
「し、しかし宰相閣下……報告書には
『魔獣の大群により、軍の安全を確保できず』と……」
「魔獣? はっ。
第一軍団を退けるほどの規模が、この数ヶ月でどこに現れたというのだ?」
書類を机へ叩きつける。
重厚な机の上に、鈍い音が響き渡った。
「アーサーの査察隊も戻らぬまま……
今度は第一軍団までもが退けられたというのか?」
側近の一人が震える声で続ける。
「……『アレン・グリード、魔獣を従えていた』との目撃証言も……」
その瞬間、部屋の空気がぴんと張り詰めた。
宰相アーウィンの眼が細く光る。
「……あの出来損ないの無能が、魔獣を従える?
そんな芸当、王国でも十指に満たぬ“魔獣王”級の者しか出来ぬはずだ」
(違う。
アレン・グリードは無能だ。
そして――“処刑される運命”のはずだ)
だが今、事態は完全に予想外に動き始めている。
アーウィンは深く息を吸い――
重く、鋭い声で命じた。
「……直ちに第二軍団へ通達。
“アレン領の調査と制圧”を行わせろ」
「し、しかし! 第一軍団でさえ――」
「第一軍団は退けられたのではない。
“情報戦で負けた”のだ」
宰相が静かに立ち上がる。
「アレン・グリード……
貴様はいつから“王国の脅威”に成長した?」
怒りではない。
そこにあったのは――純然たる危機察知だった。
(このまま育てれば、いずれ王都の秩序を壊す。
芽は早いうちに摘むべきだ)
アーウィンは窓の向こうの王都を見下ろしながら、冷徹に呟く。
「次は、逃がさん。
アレン・グリード……ここまで出しゃばった以上、貴様は“敵”だ」
◆◇◆◇◆
一方その頃――アレン領。
アレンは領主館の裏手に設けられた小規模な作戦室で、地図を広げていた。
魔獣たちの群れの一部は森へ戻ったが、
その多くが領内の警備や偵察へと動いている。
アレンは椅子に深く座りながら、つぶやいた。
「……宰相は必ず次の手を打ってくる。
軍を送ってくるか、暗殺か――」
そして、彼は微笑んだ。
(だが、全部“計算済み”だ。
無能を装っていた間、動ける準備は全て整えてある)
アレンは地図のとある場所へ指を滑らせる。
「――次の舞台は、“王都”。
そろそろ僕が仕掛ける番だ」
その目は、決意に満ちていた。
(無能領主のゲームは終わり。
ここからは――『王国再編』の序章だ)
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