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無能領主を演じて生き延びます  作者: ガスト


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第17話 尋問官ソフィアの罠、そして揺らぐ旧き絆

更新遅れてすいません

本文


地下牢に冷たい空気が張り詰める。


ソフィアはフードを外し、淡い金髪を肩に落とした。

その表情は、アレンが知る“昔の彼女”とは違う。


冷たく、美しく、

そして何より——“迷いのない目”をしていた。


「……ソフィア」

アレンは静かに名を呼んだ。


「随分と偉くなったな。尋問官とは」


「手加減すると思った?」

ソフィアは淡々と返す。

「仕事よ。あなたを壊すのも、救うのも、どちらも命令ひとつ」


カインは牢の奥で息を呑む。

(この女……変わりすぎている)


ソフィアは騎士二名に合図し、

アレンの拘束具をさらに締め上げさせた。


金属が軋む。

手首が切れ、血がにじむ。


「痛いかしら?」


アレンは微笑した。


「無能は痛みを感じないんだ。教えなかったか?」


「……まだその演技を続けるのね」


ソフィアの瞳に一瞬、かすかな“怒り”が宿る。


——感情が残っている。


アレンは心の中で呟いた。


(悪くない。利用できる)


ソフィアは拷問器具には手を伸ばさず、

代わりに机の上に数枚の紙を広げた。


「これが何か分かる?」


アレンは視線だけで内容を確かめる。


宰相派が捏造した“罪状の証拠”。

裏金の帳簿、偽造された村民の陳述書、密輸の記録。


どれもアレンを処刑するための“仕込み”だ。


アレンは笑って言った。


「相変わらず仕事が早いな、宰相派は」


ソフィアは微かに眉をひそめた。


「……あなた、本当に怖くないの?」


「怖いさ」

アレンは静かに言った。

「だが、死ぬ気はない」


ソフィアは一歩近づき、机に手をつく。


「アレン。

あなたは三日後の裁判で確実に死刑が宣告されるわ。

宰相派は証人も偽装済み。

控訴も不可。

王太子派も助けない」


「知っている」


「革命派もあなたを殺すつもり」


「それも知っている」


ソフィアの声が震えた。


「……なんで笑ってるのよ!」


牢の空気が揺れた。


アレンは彼女の顔をじっと見つめる。


「ソフィア。

お前は本当は、俺を殺したくないだろう」


ソフィアの肩がビクリと震えた。

だが彼女は必死に冷徹を装う。


「私は尋問官。個人的感情は――」


「嘘だ」

アレンは低く言い切った。


「お前は、あの日も迷っていた。

宰相の命令で俺を裏切る時……

剣が震えていた」


ソフィアの表情が崩れそうになる。


「……やめて」


アレンはさらに追撃する。


「もし本当に俺を憎んでいるのなら、今すぐ斬ればいい。

ここには証人もいる。

お前の“仕事”は完了する」


沈黙。

ソフィアの手が震え、剣の柄を握りしめる。


カインは息を呑んだ。


アレンはそっと言った。


「お前は最初から……俺が死ぬ未来を選べないんだ」


その瞬間、ソフィアは剣を抜いた。


銀の刃が、アレンの首元へと向く。


ミレイユが悲鳴を上げそうになるが、拘束されて声を塞がれている。


アレンは目を逸らさない。


ソフィアの腕が震える。


「……どうして……

なんであなたは、変わらないの……!」


アレンは答えた。


「お前を信じているからだ」


ソフィアの瞳が揺れ、涙が一滴落ちた。


そして——

剣はアレンの喉元から離れた。


鉄の音を響かせ、床に落ちる。


「……私は……殺せない……」


ソフィアは膝をついた。


アレンは小さく息を吐く。


(これで、ひとつ“駒”が動いた)


だが次の瞬間——


牢の奥で“違う気配”が動いた。


カインが身を低くし、囁く。


「来たぞ……アレン。

革命派の刺客だ」


通路の奥から、三つの影が音もなく現れた。

顔を隠し、刃を携え、

“尋問官の部屋”へと向かう。


その標的はひとつ。


アレンの命だった。


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