第15話 王太子の謁見、そして告げられる“処刑日”
王城奥、豪奢な大理石の間。
その中央に立つのは、若き王太子・レオンハルト。
金の髪、整った顔、冷静すぎる眼差し。
その隣には宰相派の密偵が潜み、
背後の柱には王太子直属騎士が沈黙して並んでいた。
アレンは両手を魔力封じの拘束具で縛られたまま、玉座の前に立たされた。
「クロフォード領主、アレン・フォン・クロフォード」
レオンハルトの声は静かで凍るほど冷ややかだ。
「お前を、王都へ召しだした理由は知っているな?」
アレンは一歩も引かず、淡々と言う。
「反逆、および収賄の罪――そう聞いております」
「そうだ」
王太子は目を細める。
「だがそれだけではない。
お前を呼んだのは、“公開裁判にかけるため”だ」
ミレイユの表情に絶望の色が走る。
だがアレンだけは――微動だにしない。
「……公開、ですか。ふむ。良い判断ですね」
レオンハルトがわずかに眉を動かす。
「恐れも怒りも見せぬか。
噂以上だ、アレン領主」
アレンは薄笑いを浮かべた。
「私は無能領主ですので。
状況を理解するのに時間がかかるのです」
その答えに、一部の騎士が吹き出しそうになる。
だが王太子は笑わない。
鋭い目でアレンを見下ろす。
「……では、単刀直入に言おう」
レオンハルトは席を立ち、玉座の階段を降りてくる。
アレンの目の前で静かに告げた。
「公開裁判の日程は――三日後だ」
ミレイユが叫びかける。
「三日!? そんな無茶な――!」
「黙れ」
騎士に制され、ミレイユは口を噤む。
レオンハルトは続ける。
「三日のうちに『濡れ衣を証明できなければ』、
お前は公開処刑となる。
――王家の名のもとにな」
そこへルカが王太子へ歩み寄り、小声で囁いた。
(殿下、本当にこの日程で? まだ証拠は……)
レオンハルトは短く答える。
(必要ない。
彼が生き残れるなら、それはそれで利用価値がある)
(……で、死ぬ場合は?)
(宰相派の責任にすればいい)
そのやりとりを、アレンは黙って聞いていた。
そしてゆっくりと目を伏せ――わずかに、笑う。
「なるほど。
よく分かりました、王太子殿下」
レオンハルトが再びアレンと向き合う。
「何か言いたいことはあるか?」
アレンは拘束された両手を軽く動かし、
“縛られた演技”のまま、静かに頭を下げた。
「処刑を三日後に定めていただき……ありがとうございます」
王太子の目が細められる。
「ほう。命乞いではなく、礼か?」
「はい」
アレンはにこやかに答える。
「その三日間で、王都の全てを瓦解させる準備ができますので」
大広間がざわめき、一瞬空気が止まった。
レオンハルトだけが、微かに笑った。
「……言うな。面白い男だ、お前は」
だがその直後、王太子は冷酷な声で命じた。
「アレンを地下牢に拘束せよ。
王家の監視下で、好きなように足掻かせろ。
――三日後、すべてが決まる」
王太子直属騎士たちがアレンを取り囲む。
アレンは微動だにせず、ただ一言呟いた。
「三日で十分だ。
宰相派も、王太子派も――
そして“王家”すらも、あなた方が思う通りには動かない」
王太子は腕を組み、その言葉を聞きながら呟いた。
「見せてもらおう。
お前が本当に……“無能”かどうかを」
アレンが連行されていく。
ミレイユは必死に彼の名を呼ぶが、騎士に遮られる。
そしてその瞬間――
王太子の背後の扉が、静かに開いた。
黒衣の人物が、王太子の耳元で囁く。
「殿下……“例の件”、準備が整いました」
レオンハルトの顔色が、わずかに変わる。
「……そうか。
では、あの計画を――三日後に合わせて実行する」
どの計画か。
誰のための策か。
アレンはまだ知らない。
だがこの瞬間、王都の三大勢力が“同時に”動き出した。
――王都は、嵐の前夜を迎えていた。
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