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無能領主を演じて生き延びます  作者: ガスト


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第13話 王妃の庭園、密談と契約

王宮の夜は、静寂の中にも息を潜めたような緊張があった。

燭台の光が石造りの廊下を照らし、遠くで衛兵の靴音が反響する。


アレンはフードを被り、離宮の裏庭へ向かっていた。

案内役のレオンが小声で言う。


「ここから先は警備が薄い。陛下が“意図的に”人払いをされています」

「つまり、誰にも聞かれたくない話ということか」

「……はい」


庭園に出ると、夜風が薔薇の香りを運んできた。

月明かりの下、白いドレスの女性が佇んでいる。

金糸の髪が風に揺れ、宝石のような紅の瞳がアレンを見つめた。


「お待ちしていました、クロフォード卿」


アレンは膝を折り、恭しく頭を下げる。

「王妃陛下にお目通り叶い、光栄にございます」


「頭を上げてください。

……あなたとこうして会うのを、ずっと望んでいました」


セレスティアの声は柔らかく、それでいて鋭い。

まるで一言一言が、試すように選ばれている。


「あなたは、宰相アーウィンを敵に回しましたね」

「はい。彼がこの国を腐らせていると知ってしまったので」


「勇気がありますね。

それとも、もう死ぬ覚悟でも?」

「死にたくないから、戦っているだけです」


アレンの即答に、セレスティアの唇がかすかに緩む。

「……なるほど。生き延びるために戦う。

その言葉、嫌いではありません」


彼女はゆっくりと手を伸ばし、テーブルの上に一通の封書を置いた。

「これは、王国の“真実”の一部です。

アーウィンは税収を隠しているだけでなく、

隣国ローデンと秘密裏に通商を結び、“革命派”と繋がっています」


アレンの眉が動いた。

「……つまり、宰相が裏で革命を操っている?」


「ええ。王を廃し、傀儡政権を立てるつもりでしょう。

あなたの領地を貶めたのも、その計画の一部です。

辺境を疲弊させ、国境防衛を崩壊させるために」


アレンはしばし沈黙した。

月光が彼の横顔を照らし、その瞳の奥に冷たい炎が灯る。


「王妃陛下。……あなたは、私に何を望まれるのですか?」


セレスティアは静かに微笑んだ。

「私の代わりに“剣”になってください。

私は公には動けない。だがあなたなら、影として腐敗を斬れる」


「つまり、陛下の密命を受け、宰相派を討てと?」


「そう。そして――王を守ってほしいのです」


その一言に、アレンは目を細めた。

この国の表の権力者たちは、すでに誰も王を見ていない。

だが、この王妃だけは違った。

彼女は“王国そのもの”を守ろうとしている。


アレンは深く息を吐き、そして頷いた。


「……了解しました。無能領主として、陛下の“犬”を演じましょう。

そのかわり、一つだけお願いが」


「何かしら?」


「もし私が負けた時は――民だけは守ってください。

彼らこそ、この国の“本当の力”です」


セレスティアの瞳がわずかに揺れた。

そして、小さく笑った。

「約束します、クロフォード卿。

あなたが生きて戦う限り、私もこの国を見捨てません」


二人は短く視線を交わし、手を差し出す。

冷たい夜風の中で、その手が静かに重なった。


――契約成立。

無能領主と王妃の、密かな同盟が結ばれた瞬間だった。


だがその陰で、薔薇の垣根の向こうに潜む影が一つ。

闇に溶けるように、彼らの会話を聞き終えると姿を消した。


(……始まったな。王都は、もう静かではいられない)


アレンは小さく呟き、夜空を見上げた。

月が不穏に光り、遠くで鐘が鳴った。

それは、革命の前触れのように響いていた。


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