30.邂逅
「へぇ・・・?」
「ほお・・・?」
フェンリル・ウルフを従えた妖艶な魔女と女騎士、
そして軽装だが目を疑う程の身の軽さを披露した
シーカーらしき少女の三姉妹とそして身の丈を遥かに
越えている大剣をその背に背負ったあどけない少女と
魔法剣士の少年の姉弟で構成された冒険者の一団・・・
辺境の村から来たというなかなかに強烈な
その冒険者の一団の報告を血の王女と覇王子は
それぞれに配下から興味深そうに聞いていた。
フェンリル・ウルフ・・・
確かに一般的にはとてつもない脅威と言える
魔物であろうがそれを狩ること自体は自身にとって
容易いことだ。
だが、それを従えるとなると話が変わってくる。
自分たちにとっても脅威と呼べる存在なのかも
知れない。
「まぁ、別に構わねぇんじゃねぇか?」
「何かやらかすなら俺が直々に出向いて
ぶっ飛ばしてやるさ」
「入門は認めますがしっかりと監視しなさい」
「民に仇なすと言うのであれば容赦はしないわ」
それほど強大な力を持っていると言うのであれば
自陣に引き込めばこの王位争いを優位に
持っていけるだろう。
だが、力を持っていても忠誠心を得られるとは
限らない冒険者の存在は些事とも言える。
その力が冒険者としてこの国のためになると
言うのであれば特に構うものでもない。
「いずれまみえる事もあるでしょう・・・」
「そのうち、会ってみてぇな」
確かに見てみたい気もするが、王族たる自分たちが
無名の冒険者たちとわざわざ謁見するのも
違うだろう。
血の王女と覇王子がそれぞれその冒険者パーティーの
入門を早々に許可したことで約束通り1週間後に
訪れた一行はすんなりと王都に入ることが出来た。
「すっげぇ~・・・」
目の前に広がる王都の姿に目を丸くしたマグは
一言だけ発した。
「ふふ・・・」
その姿にアイルからは笑みが零れた。
強大な力を持った冒険者が訪れると言うことを聞いた
末の王族は興味本位にその姿を一目見て見てみようと
王門へと馬車を走らせていた。
大型の魔物を従えて良くも悪くも目立っていた
その一行は直ぐに見つけることが出来た。
こういった自由が利くのも後継者争いから
今は一線を引いている自分だからできることだ。
格が落ちるとかそういうしがらみなんて元々無かった。
呆けた様に街並みを見渡す少年に笑いかける
その少女の姿をその目に映した瞬間に
考えるよりも前に身体は動き出していた。
従者が止める間もなく馬車から飛び降りる様に
駆けだすと一直線に少女に抱き着いた。
「アイル・・・」
「アイルよね?」
害意を全く感じなかったことで近づくその気配に
反応が遅れたアイルはその震える声の元に
その目を向けると驚愕の表情が浮かんだ。
「姫様・・・!?」
「私と友だちになってくれませんか?」
何言ってんだ、こいつ・・・?
ディーエル家に身を置くようになったばかりの頃に
どうやらこの国の王族らしい同年っぽい少女と出会った。
まだ荒みまくっていた心ではその申し出にまるで
皮肉の様な悪意しか感じなかった。
そんなの恐れ多いですわーと形だけの謙遜をしながら
その態度にはありありと敵意が現れていたが
少女はその不遜な態度を責めることは無かった。
むしろ悲し気な色を瞳に湛え手を奪うように
握りしめると
「後生ですから・・・」
と懇願を始め、こいつ面倒くせぇなと渋々と承諾した
アイルに少女はぱぁっと顔色を明るくした。
「私、友だちと呼べる人がいなくって・・・」
聞けば力のない王族である少女を相手にする
同年代の貴族の子女などはいなく、一人
結構寂しい思いをしてきたらしい。
「私たちならきっとできます!!」
いっしょに貧民街を無くすんだって鼻息荒く夢を語る
少女の姿に辟易しながらもその話に付き合ってやった。
気がつけば―――
いつの間にか新たに得た家族と同様に
その少女も友として大事に思える様になっていた。
「お久しぶりです」
思わず跪こうとしたアイルを少女は制止した。
「私たち、友だちじゃなかったの?」
泣き笑いの表情で自らを見つめる少女の姿に
アイルから自然と柔らかな笑みが零れた。
互いの無事を確かめ合うようにギュッと
どちらからともなく抱きしめ合うと
2人は声を上げてそのままま泣き崩れて
長い間ずっとそうしていた。
まるで状況を飲み込めない周囲は見守ることしか
出来なかった。
「紹介しますね・・・」
少し時が経って共に落ち着いたアイルは少女に
家族を紹介した。
勿論、隠し事をしてごめんなさいとは思ったが
3人のヴィーヴルのことは伏せておいた。
「え・・・」
ディーエル家の正当な後継者としてマグを紹介された
少女から少しの動揺の色が見えたのをその守護竜たる
ヴィーヴルたちは見逃さなかった。
だがそれは失ってしまったと思っていた盟友の
忘れ形見を目にすれば当たり前のことなのかも
知れない。
不審に思った少しの違和感を3人のヴィーヴルたちは
それぞれに今は胸にしまい込んだ。
ヒラメハイシーズンと言うのに全くと言って良いほど
作者がヒラメをその手にすることが出来ずに
意地になってサーフに作者が通い詰めていることで
更新が滞っております・・・




