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22.サプライズ

孫たちと番犬たちに晩御飯を用意しなければ

ならないモンショは早々に王都から帰宅していた。


この数年で料理の腕はだいぶ上がったと思う。

孫たちが喜ぶ顔が見たくて試行錯誤を繰り返した。


『・・・?』


気配で孫たちが帰路についたことは解ったが

どうやら土竜も孫たちと一緒にダンジョンを

出るつもりらしい。そして傍らにある3つの

この新たな魔力は・・・


『産まれたか』


モンショは口角を少しあげると孫たちと番犬の

食事をいつもより豪華に大急ぎで用意した。


料理を大急ぎで中庭に運ぶとこの日のために

用意してきたサプライズの準備を始めた。


地上に出れば全員で土竜の背に乗って

あっと言う間に館に着いてしまうだろう。

残された時間は多くは無い。


だが、すぐに孵るはずだった卵が割れるのを待つ

時間が長くなるにつれて首を長くし始めた2人と

3匹の姿にオリ―に言われたある日のことを

思い出した。




「覚えていますか?」

「去年、私たち初めて一緒にダンジョンに

 いったんですよ」


「そうだな・・・」


この1年でたどたどしくも思いを口にできる

様にはなったけれど、それでもやっぱり

言葉が足りない旦那にオリ―は笑みを深くした。

その去年までは知らなかったその柔らかな表情は

本当にちゃんと覚えていることを物語っている。


「じゃじゃーんっ!!」

「記念日なんでご馳走を作ってみました」


モンショは言葉を失った。

生れて初めてのサプライズに感動した訳では無い。

その料理の数々は見目には余りにも酷すぎた。


だがしかし・・・

まるで魔女の窯の中の様に毒々しい料理でも

妻の作る料理が味が良いことはもう解りきっている。


確かに何時にも増してヤバい見た目だが・・・

逆にその味には期待して良いのかも知れない。


その日、モンショはオリ―に大事な日には

こっそり互いに喜ばせ合う準備をするもの

なんだって教わった。


次の記念日に初めて旦那自身が自分のために選んだ

ネックレスを受け取って―――

実は不器用すぎてバレバレでこっそり用意しようと

していたんだろうけど、とっくに知ってた・・・

んだけど、それでもやっぱりそれをその手にすれば

嬉しすぎて緩みまくる口角を隠す様に旦那に抱き着いて

隠しそうとした。


そんなオリ―の姿に―――

モンショは初めて感じる喜びを感じていた。


そうか、他者の喜びとは自分にその数倍の

喜びを齎すものとなり得るものであったのか。




まるで母親の様に孫たちに接する土竜と共に

この喜ばしい日を迎える事はわかりきっていた。

ならば、その礼を示す準備は当然のようにできている。


ふむ・・・

久々の地上での食事となれば何が良いものか?

魔力溢れるダンジョンでは口にできないもの・・・


ダンジョンでは得ることのできない甘味、

特大のケーキを中庭に据えたモンショは思わず

笑ってしまった。


『随分と待たされたせいで・・・』

『もはや大きさですら奴と変わらんな』


モンショの作り出す異空間には時間の概念がない。

悪くなることを心配する必要が無いことで

時間を追うごとに大きくなる土竜の姿を模した

ケーキは中庭にその荘厳な彫像の様にその姿を現した。


こんなサプライズを・・・

自らの子が生まれた時にやってみたかった・・・


ケーキを作るうちにそんな考えが頭を過ったが

その考えは今は頭の中に押し込めるべきであろう。


サプライズの準備が終わるとモンショは家族の

帰りを待った。

この贈り物を喜んでくれると良いのだが・・・







『ほぉ・・・?』


状況を聞いたモンショはその後の言葉が出てこなかった。

サプライズを皆で喜んでくれたのはもちろん嬉しい。


新しく生を受けた3人だって嬉しそうにケーキを

頬張っていた。



ヴィーヴル・・・


その額に極上の宝石を持つ人型のその伝説の竜属は

雌しかいないとされている。

そして自らが主と認めたものだけにその命に等しい程の

宝石を忠誠の証として贈り、その強大な魔力で

生涯をもって尽くすとある。


額にそれぞれに宝玉をはめて帰宅した孫たちの姿と

伝説でしか聞いたことも無いはずのに

急に3人も現れた目の前の伝説の姿にモンショは

何と言って良いのか解らなかった。


『そういう訳で・・・』

『どうか私の石を受け取って頂けませんか?』


唯一、額に宝玉を残していた短髪のヴィーヴルが

モンショにその宝玉を差し出した。


サプライズはされる側もする側も嬉しい

素晴らしいものであることはかつて教わった。

だが、そんなサプライズを別にサプライズで返す

必要なんてないはずだった。


『まずはその覚悟に』

『その気持ちには最大限の礼を示させてもらう』


産まれてすぐに生涯の主を決めるとはこの者たちは

伝説の存在とあってなかなかに度し難い。

だがそれを孫たちと、そして自分と決めたならば

それは敬意と感謝を示すべきものだ。


『だが・・・』

『それは受け取れんな』


伝説の力を得るはずの機会を断るモンショの姿に

今度は家族たちがその言葉を失った。











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