21.愛児
『へぇ~・・・』
『もうこんなやつらまで狩れるようになったのね?』
土竜は届けられたご馳走を前に感嘆の声をあげた。
褒められたことに素直にえへへと笑うマグも
「エスとビーが手伝ってくれましたから・・・」
と照れ臭そうに謙遜するアイルも土竜から見ても
本当に強くなったと思う。
2人とも本当に幼いころから魔力の渦巻く
ダンジョンに通っていただけにその内包する
魔力は土竜から見てもかなりのものだ。
そしてそのダンジョンに生息する魔物ですら
こうして狩れるだけの戦闘経験を日々積み上げる
二人のニンゲンはもし敵であるならば土竜から
しても油断ならない相手だ。
まぁ、それがもし本当に敵であったのであれば・・・
幼い頃からその成長をずっと見守り続けた
2人は土竜からすれば例え異種族でも
もはや我が子同然に感じてしまい
その成長は素直に嬉しく感じてしまう。
土竜はいつもの様に二人に対して大きすぎる
頭を優しくこすりつける様にして労った。
最初は訳も分からず敵対していたはずのエスとビーも
土竜に近づく顔に対して親愛の情を示す様に
その顔を舐めた。
土竜と2匹の番犬が仲良く食事を始めると
思い出したようにマグは持ってきた
大量の果実を異空間から取り出した。
「あ、今日は家から果物も持ってきたんだ」
『わ、ありがとうねぇ・・・』
魔力を含んでいなくてもその瑞々しい甘さは
好物だ。今は地上に出られない土竜にとっては
嬉しい差し入れだった。
「あなたたちにもちゃんと」
「よいしょ・・・」
アイルは身の丈以上に巨大な骨をズルズルと
異空間から取り出した。
「おやつを用意してますから」
アイルがドシャっと目の前に置いた巨大な骨に
エスとビーはブンブンとしっぽを振った。
食事を続ける3匹を背にいつもの様に
アイルとマグは自分の魔力を卵がある溶岩に
注ぎ込んでいた。
モンショが造った溶岩地帯を維持管理するのも
2人の大事な役目だった
「ねぇねぇ・・・」
「卵ってホントにもう、いつ産まれるの?」
もう何度聞かれたか解らない問いに対して
『う~ん・・・』
『もう、ホントにいつ孵っても良いと思うんだけどね・・・』
土竜は何度答えたか解らない答えで応えた。
土竜の見立てではすぐ孵るはずだった卵は
未だ孵らない。
ダンジョンの魔力を吸収し続けている卵は
勿論、死んでしまった訳では無いことは解る。
むしろあまりにも不自然に吸収しすぎだった。
「はやく産まれてくれないかな・・・」
「ふふ・・・そうしたらマグもいよいよ
お兄ちゃんですね」
弟か妹がもうすぐ産まれる姉と兄の様に
アイルとマグはここに来ればいつも
一日千秋の思いを口にしていた。
そんな二人の姿に土竜は微笑みを浮かべ
母親のような優しい眼差しを向けた。
食事とおやつの時間を終えてエスとビーと
魔力で創ったボールで遊ぶ二人の姿を
卵を背で守る様に座り込んで見守る土竜の
穏やかな時間が過ぎていった。
――――ドンッ!!!
不意にマグマから水蒸気爆発が起こった。
驚いたように2人と3匹が音の方向を探ると
立てつづけに更に2回の爆発が起こった。
「はぁっ!?・・・えぇっ??」
土竜から驚愕の言葉が漏れた。
卵が孵ったのは直ぐに理解できたが
この感じ取られるこの魔力は・・・?
ただならぬ土竜の気配と急に現れた強大な
3つの魔力の気配に遊んでいた2人と2匹は
直ぐに土竜の元に駆け付けた。
『ああ、心配しなくても良いの・・・』
『卵が孵ったみたい・・・なんだけど』
えっ!?
その言葉にキラキラした目を2人は土竜に向けると
卵のあった溶岩の方に目を移した。
「わ、わ、わ・・・」
「狼狽えないの!」
「お兄ちゃんでしょう?」
「私も皆のお姉ちゃんとして
しっかりしなきゃ・・・」
主のその気配を察知してかエスとビーもその場に
おすわりすると主と同じように目を輝かせて
3つの気配の方をへっへと舌を出しながら見つめた。
が、次の瞬間には『誰だ!?お前っ!!』と
言いたい様にマグマから這い上がってきた
予想もしていなかった姿を前に吠え出した。
「「え・・・」」
アイルとマグも同時に言葉を失った。
マグマから出てきた3つの姿は自分たちの
想像していた土竜さんの小っちゃいバージョンの
赤ちゃんの姿ではなく・・・
その3つの人影は、むしろ二人からすれば
自分たちより遥かに年上のお姉さんの姿だった。
『まさか・・・』
『ヴィーヴル・・・?』
土竜は伝説の竜属の名を呟いた。




