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12.私見

ダンジョンは潜れば潜るほどに

漂う魔力の濃度が高まり、

当然、その環境に耐えうるだけの力を持つ

生物のみがそこに存在することを許される。


土竜にとってその卵を素材として狙う

冒険者は食欲満載のワイバーンに比べれば

リスクの少ない相手ではある。


だが、人には知恵がある。


思わぬ方法と手段で土竜の卵を奪うものが

現れるかも知れない。


ならばそれらがたどり着けない

ところまで潜るまでだ。


ただ抱卵した状態でダンジョンの

奥深くに潜り、結局は土竜に負担が

かかってしまうのでは意味がない。


その辺のさじ加減の見極めが必要だ。






『いや、別にそんな心配いらないわよ?』


多分、この子らは私の力を大きく誤解している。

確かに虚を付かれたのもあって

あっさり勝負ありになってしまったけど・・・

私の力も弱くはない。


土竜は実際のところ別のダンジョンの

何ならその最下層に巣を構えていた。

抱卵していたところで別にダンジョンを

潜ることには何の苦もない。

ダンジョン深くの高密度の魔力程度で

その身体が参ることなどは無い。

当然その環境はほとんどの生物の

生存に適さないものだが、それ故に

外敵に襲われる可能性が低く、

営巣するのには都合が良かったのだ。



『ならばもう少し奥を目指してみるか』


この初めて訪れたダンジョンが

どこまで深いのかは解らないが

問題が無いというのであれば

産卵場所は深ければ深いほど良いだろう。


それに深く潜れば潜るほどに魔力の奔流が

強く渦巻く。

その景色こそがモンショがアイルとマグに

見せてあげたいものだった。


当然、潜れば潜るほどに襲い掛かる魔物も

手強くなってくるものだが、まるで

意にも返さない様にそれを退けつつ一行は

歩みを進めた。


ほどなくして開けた空間を見つけた。


だいぶ深いところまで来たせいか、

そこにはダンジョン特有のグロテスクな

魔物の群れが営巣していたがそれが

孫たちの目に入る前に一瞬で燃やし尽くした。


『ここ、良くない!?』


その入口は狭いが入ってしまえば

土竜が頭をぶつけることもなく

存外に広くて天井も高く居心地が良い。

魔力の流れに滞りもなく、

まさに産卵場所としてうってつけだろう。


『決まりだな』


土竜と簡単なレイアウトの打ち合わせを行うと、

ダンジョンに入ってからずっと腕に抱いていた

アイルとマグを地に下ろした。


『これからワシが見ているこの世界を見せる』

『予め言っておくが・・・』

『それをどう思うかについて正邪などは無い』


アイルとマグの頭を優しく撫でながら

その手を伝いモンショの魔力が二人に

流れ込んでゆく。


『いや・・・』

『誰もが探しておるのだ』

『その答えをな』


そのまま抱きしめられた二人の目に

注ぎ込まれたモンショの魔力が集中し始めた。




―――!!


言葉を失った。


普段とはまるで違う祖父の雰囲気に

飲まれてしまい、どう答えて良いのかと

考えているところに急に目の前に現れた

その景色にただ目を見開いた。


まるで七色に輝く美しい光の帯の様な、

その光が齎す影は何もかもを飲み込んでしまう

漆黒の闇の様な・・・

まるで風を可視化したかのように規則性を持って

ダンジョン内を駆け巡るそれに目を奪われた。


幼いアイルにはその見えたものを説明する術を

持っていなかった。


『ワシは・・・』


その光と影の奔流の中に立つ祖父が口を開いた。


『魔力はその陰陽より』

『その流れの方を本質だと思っておる』


頭が真っ白になっているであろう孫の

一助となればと答えの一例として長い研究を経て

自らが得た自分だけの答えを孫たちに開示した。


アイルが何かを言う前にモンショは言葉を続けた。


『もちろん・・・』

『それが合っているかなどは解らん』

『解らんのだ・・・誰にもな』


見れば祖父の纏うそれはダンジョンの奔流に比べて

随分と薄暗い。

だがその流れは比べ物にならない程に

鋭く強い激流となってその全身を駆け巡っていた。


土竜は土竜でエスとビーもそれぞれに違う

色彩と流れをその身に纏っている。


これが魔力・・・?


マグは姉の腕の中から目を輝かせて

その奔流に触れようと中空に手を伸ばしている。


じっとよく見てみればその小さな手にも僅かに

その流れが見て取れた。

そしてその小さな流れの支流が自らに

繋がっていることにも気が付いた。

その支流はいくつにも枝分かれしてモンショ、

エスとビーや土竜に互いに繋がり合っている。

その僅かな光の糸の様な支流はひと際、美しく

強い光と闇を放っているように感じた。


これは・・・?

縁みたいなものかしら・・・?


アイルはモンショの方に向き直ると

思ったことを問う前に祖父が遮った。


『何を問われようと・・・』

『その答えをワシでは与えることができん』

『それを証明することが出来ないからな』

『だからお前は・・・お前たちはお前たち自身で』

『自分だけの答えを見つけだすのだ』


困惑の色を露わにするアイルの頬にモンショの

手が優しく触れた。


『今は何も解らなくともよい・・・』


どうしてか涙目になるアイルに微笑みかけながら

モンショは呟くように言った。


『いつか・・・』

『長い旅路の果てにお前が得た、お前だけの

 その答えをどうかワシに教えておくれ・・・』












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