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11.埋葬

「マグも連れて行くのですか?」


『館に一人、残す訳にも行くまい?』


祖父の答えにうぐっとアイルは言葉を詰まらせた。

簡単な旅装に二人とも着替えているが

ダンジョンとはこんなピクニックに

行くような感覚で向かうものなのだろうか?


「わぁっ!!」


アイルは祖父の腕にマグと共に抱き上げられた。

マグはいつものことできゃっきゃっと

はしゃいでいたがアイルは久々でつい近くなる

祖父の顔に恥ずかしくなってしまう。


『お前たちには何の危険も及ばぬと保証しよう』


祖父の優しい言葉とその力強い腕に抱かれたことで

自分でも気がついていなかった程に緊張で

強ばっていた全身から力が抜けるのを感じた。


『では、ゆくぞ』


モンショ達をその背に乗せると土竜は

ダンジョンの入り口目指して進みだした。

エスとビーも当然のようにその後に続いた。






『案外、広いわね・・・』


土竜がその背に乗せてくれたことで

あっという間に岩肌の裂け目に辿り着いた。


『入り口の拡張は必要なさそうだな』


土竜の言葉に応えるようにモンショは

呟くと孫たちを腕に抱きながらその背から

降り立った。


『お前は産卵を控えていることだしな・・・』

『荒っぽいことはワシがやろう』


エスとビーも『自分たちもいるぞ』と

言いたい様に主人に吠えて訴えた。


『良いの?』

『でも、その子たちくらいは預かるけど?』


『いや・・・』


まぁ、まだ身内を預けて貰うには信用が無いか・・・


『魔力を見せてやりたいのでな』

『この子たちはそのために連れてきたのだ』


気配からしてこの男は不死者の魔物だろう。

しかしその孫と呼ぶ存在たちがニンゲンである

ことは容易に理解できる。


『魔力どころか、灯りも無しでニンゲンに

 ダンジョンの中で視界が効くのかしら?』


『だからこそワシがこうして補助する必要がある』


モンショの魔力が腕に抱くアイルとマグを

包み込んだ。

2人にはまだ何も感じらとられなかった様で

きょとんとしている。


どうやらそのニンゲンの子を自分に預けないのは

信用の問題ではなく、その必要があるからの様だ。


『まぁ、いざとなったら私も力を貸すわよ?』


『そうはなるまい・・・』

『ワシがいるのだからな』




真っ暗で何も見えない・・・はずなのに

ありありとその景色が目に映る不思議な状況に

アイルとマグは興味深そうにダンジョン内に

眼を巡らせた。


入ってすぐはただの洞窟の様であったが

進むにつれてその景色は見慣れなく

ありとあらゆるものが興味を引いた。

頼れる祖父と番犬たちと土竜が傍にいるせいか

未知への恐怖は湧いてこなかった。


ダンジョン内の見たことの無いような

魔物たちから危険が及ばされることも無かった。

むしろその魔物たちの多くは巨大な土竜の姿に

恐れおののいて逃げ出すばかりだった。

それでも襲い掛かってくる魔物もいたが

モンショが手を下すまでも無くエスとビーに

残らず狩られてしまっていた。


『アイル、しばらく目を閉じるのだ』

『悪いがマグの目も塞いでやってくれ』


不意に祖父の言葉が響いた。

えっ?と顔を向けるアイルに


『あ~・・・』

『その、何といえば良いのか・・・』

『怖いものがいるのでな』


祖父のどう言って良いかわからず苦慮する姿に

アイルは薄く微笑むと「わかりました」と短く答え

素直に言うとおりにした。

その姿に今度はモンショが微笑むとこちらに

向かってくる5人の人影を見た。


不死者だ。


遺体がダンジョンに漂う魔力に汚されたのだろう。

その腐った身を引きずるようにしてこちらに

向かってくるその姿はとても孫には見せられない。


え~っと・・・

これはニンゲンっぽいけど倒して良いの?


と聞きたい様にエスとビーは揃ってモンショを

振り返りながら鼻を鳴らした。

その辺の分別がつく当たり、どうやら

この番犬たちは本当に賢いらしい。


モンショは孫たちを抱いていない手で

不死者を指し示すとその周囲のダンジョンの

闇が蠢き出しあっという間に不死者たちを

地面深くに引きずり込んだ。

その手に持っていた武器のみが宙に不可解に

残るとその各々が引きずりこまれた主人の元に

向かうようにしてその大地に突き刺さった。


『目を開けても良いぞ』


何があったか解らなかったが目を開けてみれば

大きな音のした方向にいくつかの武器が大地に

突き刺さっていた。


・・・ああ、そういえばこの男も不死者よね


その辺のデリケートなことはあまり聞いちゃ

いけない気がするという気遣いを見せる土竜は

ある意味モンショよりずっと心遣いが出来る

性格であったが、聞いてみたいことがあった。


『え~っと・・・』

『あの手のやつは解呪して灰にするか、

 燃やし尽くして灰にしちゃうのが定番よね?』


もし土竜が不死者と戦うならば同じように

地中深くに埋めてしまい、さっさとその場所を

後にしてしまうだろう。

あいつ等はそれでもすぐに出てきてしまうのだから。

土竜はその資質から例えダンジョンの中でもその

大地を感知することが出来る。

地面に引きずり込まれた不死者から放たれる魔力が

何故か薄まっているのを感じとることができた。


『そうだな』

『不死者は死なないが故に不死者なのだ』


あ、不死者ってこいつにNGワードじゃないんだ。


『ワシは解呪はできんのでな』


さっきのあれは確かにそんな神聖な力では無かった。

それにこの男はとても聖職者には見えない。


『だから、これは【埋葬】だ』


その会話からアイルは何があったのかを理解した。


「あの・・・」

「お祈りしても良いですか?」


『ああ』

『むしろ、してやってくれ』


それはこの世界での慣習であった。

埋葬に必要なものは【墓標】と【祈り】だ。

本来は不死者とならない様に例え見ず知らずのもので

あっても誰かがその埋葬行為を済ませなければならない。

それが行われなかったということはその不死者たちの

縁者がここで誰一人助からなかった証であり、そして

それ以降ここに誰も訪れるものもいなかった証でもある。


アイルが埋葬されたものに対して安らかに

眠れるように祈ると土竜にはその大地から

不死者の魔力を完全に感じ取られなくなった。


へぇ?

不死者ってこんな倒しかたもあるのね・・・


『お前もこういったことは得意であろう?』

『次に不死者と戦うときには試してみると良い』


アナタ(不死者)がそれを私に言うの!?


その不気味さに土竜が青ざめたのを理解したのか

していなかったのかは解らないがモンショは更に

言葉を続けた。


『まぁ・・・』

『恐らくワシには効かぬのだろうがな・・・』


祈るアイルの後ろから墓標となった武器を見てみれば

装飾から自分が帝国に仕えていた頃などよりずっと、

もう随分と古い時代の遺体であったことが解る。

少なくともその時代にはここに人が訪れていたのであろう。


つまりここに人―――冒険者が訪れる可能性が出てきた。


『もう少し奥に行く必要があるな・・・』

















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