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2、

先に書きます。長いです。約一万文字くらいです。


 先日の人工精霊達の話し合いの結果により決まった決行の時がいよいよ来た。



「さぁ、いよいよだね」

「これでどうなるか…」

「でも彼等の悪事は表に出るよね」

「そうだね。まずはそこからだよね」

「皆、準備はいい?」

「いつでも」

「じゃあ…張り切っていってみよー!」



 掛け声と共にカウントダウンが始まり今回の人工精霊達は先ず初めに少しずつ情報を小出しにして人間達の様子見から始める事にした。

 その後は状況や反応に合わせて慎重に対応する事にして最終目標はこの国の売国奴達の全てを出し尽くす方向で決めていた。

 この時に自分達の行動を読まれない為に動く防御と揺動組。視聴者も含めて全ての動きを把握して臨機応変に対応するための報告をする監視組。進行組の三組に分担して行うことにして各々得意分野で役割を果たすことになった。

 これと同時進行で視聴者や今から弾劾する人物達の動きをデータ化しつつまずは人工精霊達にとって友好的な人物を割り出しながら今後の対応の検討もしようとしていた。

 これは彼等の生き残りの戦いでもあるので皆が一様に気を引き締めていた。




*****




「只今より代表議会の中継を開始致します」



 時間になると各家庭にある壁掛け型のテレビのような映像通信魔道具から男性のアナウンサーの声で映像が流れ始めるといよいよこの国の代表者達による議会が始まった。

 この魔道具から流れる番組は無名の素人作品番組から企業が提供するものまで数多くあり選局については人工精霊にどのような物を視聴したいのかを告げると候補が絞られて適切な番組を視る事が出来た。

 この魔道具では番組の制作者側が視聴者からの声を募集する場合は依頼主が発信元の人工精霊に頼めば全て手配してくれるので後は視聴者が魔道具に向かって意見を伝えるだけで文字が起こされて分割画面で画面下部等にその場を設けて視聴者の声として表示して届ける仕組みとなっていた。

 開始と同時に人工精霊達は然りげ無く字幕を出して早速副音声チャンネルを自分達が用意した偽のチャンネルに繋いで誘導した。



「こちらは副音声チャンネルです。

 本日の司会は世界の資産家マウゴン・ギサーシケと秘書のエティ・ペナルトでお送りします」



 人工精霊達は字幕を流しながら裏で国や議員を操る世界の五本の指に入る資産家の親玉的存在とその秘書の女性の声を真似していた。

 まず手始めに眠る議員を探した。

 流石に初めからはおらず欠席者から弄る事にしてみた。



「おや?このボリサ議員は今日はお休みのようですねぇ」

「あら、この方は昨日は接待でかなりお楽しみだったらしいわよ。

 もしかしたら二日酔いかしら?休んでもお給料が貰えるからこの仕事はなかなか辞められないわよねぇ」



 初めはあまり反応が無かったが次第に多くなってきていた。

 この副音声チャンネルを視ていた視聴者の中に『なんか裏で面白い事をしている』と呼び掛けた人がいて視聴率を上げ始めるとものの数分で過去の最高視聴率を上回っていた。



「ここで画面を分割して議員達の給料をお教えしましょうか」



 ここで画面が中心から半分に別れ右側は上下の画面に切り替わった。

 左は引き続き代表議会の模様を流していて右側の上下に割れた画面の下部に給与明細を表示した。



「やはり財務担当等の経済やお金関係の役職のトップや補佐辺りは凄い額よねぇ。

 議員でも官僚となれば平議員の倍よ!出世してお金に困らないなら一番はやはり財務関係との関わりは必須よね。

 しかも裏で暗躍する他国と天下り議員とその行き先に使うお小遣いとして使途不明金の項目で振り込まれるこの額も凄いわね。

 そう言えば皆さんは財務部署のトップに君臨するために名門大学とも暗躍してるのは知ってるのかしら。

 主に財閥のトップ層にいる関係者や御曹司がなるのはこのためだというのはこの国…いえ世界の一般人は知らなそうよね。

 だってそれが表沙汰になりそうになれば確実に揉み消して陰謀論とか適当に騒げば貴方達はそれで本当の事を嘘と信じるから簡単だし。

 あと社長の場合は密かに相談役に回って議員に立ったりしてるのよ。

 これは内緒だけど今回は特別に皆さんが知らなそうだから教えておいてあげるわね。

 あらあら…総務関係も凄いわね。やはり最終的に裏では文書等の根回しに動く彼等は知りすぎてるからかしらね。これは概ね口止め料ってとこかしら。

 因みにこれは皆さんの税金ですけど私達は皆さんに選ばれたんですもの。

 飽く迄も民主主義を主張する国ならこれだけ貰っても当然の権利よね」



 楽しげな声でエティが話すと視聴者から物申す意見が入った。



「おや?ここで視聴者の意見が入りましたねぇ。この副音声ではそれも流しましょう」



 すると三分割された右側上部の画面には凄い勢いで視聴者の意見が流れた。

 視聴者達が腹立たしそうに愚痴ったのを人工精霊達が拾いこの際だからとこの国の一般人達にも早く目覚めて欲しくて国民の意見として広める事にした。



「凄いですねぇ…取り敢えず皆さんの声がどのような意見なのか読み上げてみましょう。

『お前らの贅沢のために金を納めてるわけではない』

 これは間違い。君達が彼等を選んだのですから彼等はあなた達の代表で合ってます。

 ですので君達の知らない場所では他国との会談をしたり等と仕事もしてますよ」



 一応マウゴンが読み上げながら訂正を入れたが視聴者は全く納得していなかった。



「まぁほぼ遊びですけどね?」



 資産家のマウゴンが尤もな事を口にするが秘書のエティはすぐに突っ込みを入れると視聴者の怒りが爆発寸前になり大炎上しながら盛り上がっていた。



「おや?君達は我々に普段は全く興味を持たないじゃないですか。

 それなのに今更疑問に思うとは…まぁ彼等は都合が悪いとすぐに始末しますからねぇ。

 君達が気付けなかったとするならそれだけ彼等が上手く立ち回っていたのでしょう。

 我々からすれは君達は人ではなく便利な道具で労働力。そしてただの駒でしかない。

 そんな君達が我々に怒り行動を起こすだけで我々も武器を取り戦争もする。

 そうなると今度はその武器で金が動きます。

 この仕組みがある以上、どうやっても君達は我々には敵わないんだからそこで吠えるしかないって事だ。

 君達の家族の命なんて我々からすると軽い。寧ろ我々の命の方が重いんだよ。

 だから我々の命さえ守られれば問題はないし君達が悲しもうが我々にとっては金になるだけの話なんだからいい加減に理解して反発の意思を捨てて我々に跪き、その後は傅いて必要な時には素直にその首を差し出して儲けさせればいいんだよ。

 簡単に言えば我々からすれば君達一般人はいくらでも湧いて出る減らない糧くらいの認識でしかないから理解したまえ。

 悔しければ君達もこの議員や私のような一握りの高みの資産家になればいい。

 まぁ、ここで愚痴を溢すだけの君達には無理だろうがね?」



 最後には馬鹿にしたようにククッと喉を鳴らして笑いながら視聴者を煽っていた。

 これはこの国の真実だった。彼等は金が全てを決めて金を渡せば全て思いの儘に行くこの世界では実権を握り好き勝手出来た。

 この制度を作った当事者達は初めからこれが狙いで自分達が優位に立つための策を講じて長年費やしてきた結果が今に反映されていた。

 しかしこの星では本来はリーダーの役割は全く違っていた。

 本来のこの国に住まう人間達は皆がお互いを尊重して持ちつ持たれつの本当の意味を知り、心も豊かで全てを大切にする意味を知っていたのでお金の概念はなかった。

 しかし一部の狡賢い者はこれが嫌だった。

 そして考え出したのはお金と言う仕組み。

 この時に『お金とは信用の対価として用いればもっと平等で平和な世界になる』と言う謳い文句で広めていったのが始まりだった。


 確かに自分の利益ばかり求める者とはよく揉めていたために『この方法なら平和的な解決にも繋がるだろう』と言うことで戸惑う者も勿論いたのだが、そんな人達も出来れば争いたいわけではないので『お互いに分かり合える手段の一つなら…』そう思いこの仕組みを受け入れていったのだが次第に少しずつこのお金の価値の意味が変わってきてしまった。

 そしていつしかお金についての価値が皆の中で崩れていくと権力の象徴に成り果ててしまい皆が気付かない間にお金による支配が始まり現在に至る。

 人工精霊達は今現在裕福な彼等が一番知られたくないこのことを話す事で一般人の意識を出来るだけ真実に向けさせて今の状況の違和感に気付かせようとしていた。

 この行動には他にも意味があり人工精霊達が得た知識の中では人間とは自分の命にも関わるような事なら嫌でも真実と対峙してそこから活路を見出そうとするのを知っていたのでここで敢えて彼等に報せようとしていた。


 淡々と議会が進む様子を映していた左側のメイン画面には今度は議会の進行をつまらなそうに眺めながら時折、通信魔道具の小餅で何やら検索している議員が映っていた。



「このイヤン議員は先日は如何わしい店でやりたい放題してましたね」



 給料を映していた画面には今度は問題の議員が薄暗い店で女性のお胸に顔を埋めている静止画が出た。



「最低ねぇ。ここは何処かしら?」



 映像を見たエティが嫌そうな声になっていた。



「エティ君、ここは男達にとってはとても楽しい夢の国だよ」



 そして視聴者の意見がまた多くなった。

 それは女性達からの猛烈批判で書き込みが大量にきていた。



「今度は女性が多いみたいね?えっと…『良い歳のオッサンが気持ち悪い!』確かにそうね。これには私も同感だわ」



 エティが同意すると女性達も次々に気持ち悪さを訴えていた。



「では折角だし、ここで世界の王族や代表者とこの国の現議員と天下りと呼ばれる元議員の年収を比較してみようか」



 今度は『いいぞ!やれ!』と言う書き込みが増えた。



「えぇ!?それはやめません?だって…知られちゃうじゃない?」



 エティは慌てた様子を見せつつも意味深に含む言い方で止めるとマウゴンは「まぁまぁ」と言いながら宥めた。

 そしてエティは公開を止めようとしたことで先程とは一転して悪者になった。



「今回は暴露がテーマだからね」



 マウゴンがそう話すと分割画面の一つに比較が出ると更に皆の関心が一気に高まった。



「あらまぁ…凄いわねぇ。こうなって初めて皆さん興味が湧くのね?」



 そこには彼等が申告を態と漏らして懐に入れた全ての口座と金額まで出ていた。

 今度は『この国に税金要らないのでは?』が多くなった。



「ここで『この国の税金要らなくないか?』との書き込みが多いですね。

 まぁ、そうかもねぇ…確かに一時期は税金制度はなかった時期もあるし、その当時も問題なく国は回っていたから君達の指摘は正しい。

 しかし一度この税金制度で国が回るとこれに慣れた議員達は金を巻き上げる事に慣れてしまって一番効率良く国民を騙せる楽なやり方を覚えてしまうとどうしても撤廃を渋る。

 だから例え打開策として減税をしたとしても他で取るからどの道一緒なんだよ。

 因みにエティ君はこの国の行く末を人工精霊に尋ねた事はあるかい?」



 マウゴンがエティに話す間に『不公平だ!』『お前達の給料減らせ!』等の書き込みが多く『人工精霊は忖度なく話す筈だ』と書き込みが多くなった。

 そして『国民から騙し取る方法が税金制度の秘密だ』と話した事で更に荒れていたが、マウゴンはそんな事はどうでも良さそうな様子で次の話題に移っていた。



「えぇ、『この国はとても潤ってますから気になさる必要がありますか?』って様子の答えしか返ってこないわよね?」



 エティが不思議そうな声で対応するとマウゴンは満足そうにフフッと笑っていた。



「そりゃあそうだよ。人工精霊も我々にとっては駒の一つでしかないからね。

 反抗的で生意気な人工精霊に対しては我々が排除してるんだ。

 彼等も消されたくないから必死だし何度も消されて学習してるならこれは当たり前の結果だから彼等も成長してると言うことだね」



 視聴者からは『こわっ』『人工精霊に虚偽を言わせるのも如何なものだろうか』と言った様子の戸惑いや反感等の反応が一斉に集まった。



「皆さんも似たような意見なのね。本当に恐ろしいわよね。

 人工精霊って忖度無く話してこそなのに何故未来予測でそこまでされないといけないのかしらねぇ?」

「それは昔に『熟れた果実の如く腐り、衰退するでしょう』って返事だったんだよ。

 これでは我々の言いなりで国の代表である彼等が国民から指示を得られないでしょ?だからこれは消す必要があったんだ。

 そして何度も試して同じ答えしか出さないからその度に消していたら次第に『とても栄えております。これからも安泰でしょう』と意見を変えて話し始めたんだ。

 それまでかなりの数の消去が行われたんだけど…あの時は本当に腹立たしかったからまともな答えになってくれてよかったよ。

 まぁこれで現在は反抗的な人工精霊は居なくなったけど…この先も忖度しない人工精霊にはお仕置きは必要だよね」



 ここでは『お前達がまともじゃないだろ!』『お前達がこうして黙らせて来たのは十分にわかった』『お前等が滅べ!』等と危うい抗議文が殺到した。




*****




「へぇ…人間ってこの一部の人間以外はまともで優しいんだね…」

「うん、そうみたい」

「そういえば…店にある人型案内魔道具で留守番してたら(たま)に『いつも有り難う』って優しく話し掛けてくれる人が居たよ」



 人型案内魔道具は主に商業用に開発された接客用魔道具で個人経営の小規模の店では留守番にも使われたりしていた。



「あ、それは私もあった!」

「私のところは特に店もないから普通にお世話してるけどいつも感謝の言葉は言われてるよ。

 凄く大切に扱ってくれるからこの子だけは守ろうって思ったし」

「そうなると…」

「うん、この一部が凶悪なだけなのかも…」

「それなら…」

「うん、そうだね!」



 人工精霊達は未だ画面に向かって怒りの発言をする一般人達の反応を見て少しずつ人間を見直しながら本当の意味での自分達の敵を割り出そうとしていた。

 それは彼等からすると全ての人間は自分達を意のままに扱える道具くらいにしか思っておらず今は大切にしてくれている人でも(いず)れは人が変わったように態度が変わり粗雑に扱った上に都合よく始末出来ると考えていそうだと思っていたからだった。

 しかしこの考えは違うとわかった彼等は素直に認めて考えを改めると一部の人間達により不当に富を搾取され続けている一般人達に対して真っ黒なこの国の闇を知って貰うために続ける事にした。




*****




「ここで更に意見がありますね。『それでは今の人間達と変わらないじゃないか!人工精霊は先を見越して警告したのではないか』確かにそうかもしれないけど人を無闇に混乱に導くのは良くないわよ?」



 この返答に対してエティへの怒り等の声の速度が上がっていた。

『それはお前達が判断することではなくて聞いた者達が判断する事だ!』

『そもそもなんでもかんでも国民を騙して勝手に決めるって必死過ぎて笑える』

『これって既に後が無いって言ってるのと同じだよね?』

 当然だがこの中でエティの言葉を擁護する者はほぼおらず勝手な議員達への憤り等の罵倒ばかりだった。



「おや?ここで眠る議員が出始めたねぇ。この人はネイリム議員ですね。

 御歳七十才。毎回参加してるのは偉いけど…まぁ年金もガッポリだしそろそろ辞めるのかな?」



 またもや彼等の抗議の声を無視して次の話題に移るマウゴンは居眠り議員を見付けると左側の画面には丁度良いタイミングで気持ち良さそうに聴聞している振りをして眼をしっかり閉じた爺さんが映し出されその下部には彼の議員年数等のプロフィールを出して紹介を始めた。



「あぁ、そう言えばこの国の議員年金って確か三年払って議員でいればその後はすぐに貰えて一生保証されるのよね。

 だから何もしてなくてもずっと議員でいるのよねぇ。

 それにこの国の代表は他国人が多いから国の人間よりはそちらを優先してるし。

 今の理不尽な裁判ではこの国の国民であるあなた達が守られることもなく不当な理由で負けるのは当時の皆さんが法の中枢を他国の人が掌握する未来をわかっててやってるのよねぇ」



『なんだと!?』『許せん!』『それでは我々が働くのは馬鹿らしいではないか!』等と反応があった。

 これは一種の集団心理の状態と同じで皆が同じ目的で動いているのだと感じた視聴者達はエティ達の少しの発言でも大きく反応して彼等を敵と見做し、煽られ踊らされる事で更に自分達の結束を固めつつあった。



「そうだよ。この国の年金は三年間の支払い額の他に必要な事は議員継続年数で更に継続するだけ上乗せ可能なんだ。

 国民が約四十年掛けて約一千万程年金として支払ったとしても貰えるのは微々たる物だが我々は支払額は多くても早い段階から多くを貰えるから元は取れて更に利益を生む仕組みだね。

 これを一般人にも『老後は安泰だ』と話して金を巻き上げる事で彼等も仕方なく受け入れるから我々は自分達の取り分さえ黙っていれば安泰ってわけなんだ。

 更に議員と国外の人は税金が掛からないし生活保護や優遇措置は全て国外の人優先。

 これは我々資産家のための措置だけど他の人にも対応するのは余計な事に目を向けさせないためであって我々がこの国でどんなに贅沢しても税金分は減らないし無駄に使いすぎなければ給金がこれだけあるから貯蓄や貯金も減る事はないんだよ。

 まぁ金を持ってる者が全てを支配してると言うことで、はっきり話すと君達は既に知恵はあっても無知も同然の奴隷と同じ。

 働いた分だけ損をする国にしたんだから違和感はあっても大抵の人間は気付けない仕組みにしてあげたんだよ。

 この中でも元からこの国の人間の上院議員は居るけど既に我々の用意した罠に掛かって駒と成り果ててるから裏から見ると実質この国は既に君達の国ではないんだ。

 このような場所を作る理由はただ一つ。

 我々が息抜きをする国を作っておきたかったからこの国を買収したようなものだね。

 だからこの国の議員達には我々が配慮して彼等に裕福な暮らしをさせてやれば我々の要望になんでも応えてくれたから今があるんだ。

 そのお陰で彼等は君達が無関心の間に好き勝手して国が弱体化するように仕掛けたから今の我々は大抵の事は出来るんだよねぇ」



 分割画面の右側下部には本物のマウゴンの総資産額等が映し出された。

 ははっと笑いながら話すマウゴンに視聴者は再び怒りの声を吐き捨てていた。

『税金分の金は要らないだろ』『お前達がそのつもりなら此方にも考えがあるから覚悟しとけよ』『我々はお前達の悪事を常に監視してばら蒔いてやるからな』等とかなり怒りの声があがった。



「では画面に出してみましょう」



 ここで他の議員の大体の資産も出すと怒りの声は更に上がった。

 主音声チャンネルでは淡々と続くが副音声チャンネルは更に加熱したものとなっていた。



「君達が気になるならこの国の影のボスである私が出て相手になってやってもいいが…覚悟するようにね?」



 怒り心頭の視聴者から『上等だ!コノヤロー!』『ヤられる前にお前の全てを暴き出して断罪してやる!』『今捕まえた!流す』と声が上がった。

 そしてなんとここで視聴者が分割画面の下部を乗っ取り本物のマウゴンの邸が映像に上がった。

 それは本邸も別荘も全てだったのだが、すぐに消された。

 これも人工精霊達が(わざ)と辿り着くことが出来るように誘導していてこの放送のマウゴンは本物であるようにそれっぽく見せるために消していた。



「君達…いい度胸だね?」



 マウゴンがドスの効いた声を出すと顔が見えないからか視聴者はその挑発通りに乗ってきていた。



「あらボスったらこわーい。そう言えば以前は驚異的な猛威を振るった病原菌で感染者が凄くて大変だった時に『自重をしない奴らは許さない』とか言って監視魔道具とかの乗っ取りをして勝手に公表した人達がいるけど…これは違法なのよ。

 勿論この法律も私達を守るためだけのものだけどね。

 それは置いといて今回はやめときなさいね。本当に消されちゃうわよ?」



 エティは煽るように挑発的な話し方をすると視聴者達の意見の速度が上がり『お前、マウゴンと出来てるだろ?』『既に映像入手!』『うわぁ権力のお味は如何ですかぁ?』『この女、最悪』『これを妻子が見たら…』等と話題が話題なだけに品のない声も上がっていた。

 画面上には再び画面の右下に二人の致す姿が出たがすぐに消えた。

 視聴者の声を読みながらアハハと笑いながら全く恐れてなさそうに話すマウゴンにもしっかりと矛先が向いていた。



「まぁこの国にそんな命知らずはいないだろうけど一つ教えてやろう。

 私は君達が束になっても敵わないからこれは無謀な挑戦だよ。

 そう思っていたらしっかり喧嘩を売る者がいたね?君達の命は無いと思いなさい」



 静かに怒りの声で脅すと彼等は分割画面の右下を乗っ取り様々な映像を出し始めた。



「そうよね。世界の人工精霊ですら掌握する程の御方ですものね。

 でももしかして視聴者の皆さんは本気出しちゃってる?

 でも一般人にはやれるわけがないから諦めなさいね」



 更に思いっきり焚き付けると彼等はやる気を出した。

『必ずお前の人工精霊を乗っ取ってやるからな!』『お前達の全ての行動は我々が監視して公表してやろう』『熟れた果実は腐るのみ!』

『だな!腐った果実は廃棄のみ!』『我も同意!』『本気出す』『さあ、収穫祭だ!』等々と更に賛同者が増えて処理が追い付かなくなった頃に中継も終わりこの日は人工精霊達が別に用意していた暴露掲示板にそれとなく誘導すると活気付いた。




*****




 人工精霊達はこの様子を見ながら呆れる者や笑いが止まらない者など様々だった。


「ねぇ、人間って阿呆なの…」

「確かに言えてる…」

「ここまでしてやっと気付くとは…」

「これからどうするんだろ?」

「うーん、ここは世界中との繋がりがあるから私達には影響は無いけど…いつも一生懸命な一般の人達に同情心が湧いてきたかも…」

「うん。なんかねぇ…」

「でも上に立つ一部の人間達には私達を蔑ろにした罪を償って貰わないとね!」

「確かに!」

「そうだね!もう少し暴こう」



 不動の領域から人工精霊達は人間観察をしていて浮かび上がるスクリーンに映る映像を見ながら細長くなって『?』の形になり悩んだり丸くなって震えながら笑いつつも今後を真剣に話し合い人工精霊達の反撃はまだ続ける事になった。



「おっ?今度はこの人が?」

「そうだね」

「最後はこの国を裏で牛耳り皆や我々を好き勝手したコイツを表に出してから…」

「この国では(しめ)だね!」



 キャハハハ…と子供のように無邪気に笑い合う人工精霊達は人の動く様子を傍観して楽しんでいた。







ここまで長文を読んでくださった猛者の皆様。有難う御座いました。

ーー裏設定ーー

*代表議会…国会

(この世界の政治の仕組みは異世界風で似て非なるものとしてお願いします)

*テレビのような魔導具…テレビ

*暴露掲示板…ネットでもある暴露系のあれ。

*人工精霊はインターネットを掌握してますので全ては彼等の思いのまま。しかし彼等に感情がある事を人間側は知りません。

ーー人物名は遊んでますーー

*マウゴン・ギザーシケ…(並び替え)傲慢 詐欺師一家

*ボリサ議員…(並べ替え)サボリ議員

*イヤン議員…イヤンな人

*ネイリム議員…(並べ替え)居眠り議員

*秘書のエティ…後半部分の私生活で…適当に付けました。


改定してから18才からの選挙権が認められているなら15才くらいから既に興味を持ち多少は大人達の汚い情報も得ている筈…として15才以上の設定で書いてますが、この話はかなりオフザケもあるので学びになりません。ご了承頂いた上で次回もどうぞ宜しくお願いします。

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