47話
大通りから一本入った、人通りの少ない路地裏。昼でも薄暗いそこは、湿ったコンクリートの匂いと、自動販売機の機械音だけが耳に残る。
スルメ、苦楽、愛嬌の三人の前で、賢治が電話で話しをしている。その横顔は、いつになく真剣だった。
電話を終えた賢治が、ジーパンのポケットにスマホをしまいながら振り返った。
「龍一さんからだった」
「誰よそれ」
愛嬌が眉をひそめる。
「僕の祖父だよ。警察官をしていてね。何か困ったことがあれば、力になるって前から言ってくれてる」
「そういえば、あんたの家って家族を下の名前で呼び合う変なルールなんだっけ」
愛嬌は面倒くさそうにため息をついた。
「それで、祖父が――苦楽に会って話をしたいって」
「話を?」
苦楽が眉を上げる。
「孫の友達のためとはいえ、警察官が事件の容疑者に肩入れするようなことはできない。だから会って、直接話をして、本当に苦楽が犯人じゃないかどうかを見極めたいんだって」
「会って話しただけで、分かるもんかね」
苦楽が首を傾げる。
「昔の人だからね。刑事の勘ってやつを大事にしてるんだと思う」
「うーむ………」
苦楽は無意識に顎をさすった。胸の奥に、じっとりとした不安が広がっていた。
自分と警察は相性が悪い。
中学の頃からそうだった。自転車に乗っているだけで職質され、体格や人相のせいで、自転車泥棒に間違えられることもしばしば。
その後も、何かあるたびに警察官に呼び止められ、そのたびに鞄の中を隅々まで調べられた。「覚せい剤でも持ってるんじゃないか?」とまで言われたこともある。
そんな過去があるからこそ、たとえ賢治の祖父でも、自分の姿を見ただけで「犯人だ」と決めつけてくるんじゃないか――そんな疑念が、どうしても拭えない。
「絶対に会うべき」
スルメがきっぱりと言った。静かながらも、強い口調だった。
「……分かったよ」
苦楽が、しぶしぶと頷く。
「よし、それじゃあ場所は『ディオゲネス倶楽部』でいいね?」と
賢治。
「それなら、特別室を使えるように連絡しておくわ」
愛嬌がスマホを取り出しながら言う。
そうして四人は、愛嬌の実家が経営している喫茶店――『ディオゲネス倶楽部』へと向かって歩き出した。
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