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4話 ~気持ち~

 



 湿り気を帯びた洞窟の空間を、壁や天井に群生する発光性の白いキノコがぼんやりと照らしている。


 ここはダンジョンの一階層。


 人工の光ではないその仄明るさは、どこか夢の中のような非現実感を漂わせていた。ダンジョンで最も浅い階層であり魔物も弱いが、独特の緊張感がある。


 金色の髪が光に照らされ淡く輝く。その小柄な少女に向かって、巨大な影がゆらりと迫る。


 魔物。


 マンボウの姿に酷似したその魔物は、探索者たちから『マンボウ』と呼ばれ、この一階層で最も弱い存在とされている。


 だがいくら弱いとはいえ、咬みつきには注意が必要だ。油断すれば指くらいは簡単に失う。


 少女――スルメは一歩も動かず、二丁拳銃を構える。魔物との距離が二、三メートルにまで詰まったその瞬間、「ぱしゅっ」と乾いた音が連続し、弾丸が放たれた。


「んぼ~!」


 まぬけな声を上げて魔物が崩れ落ち、やがて白い泡に変わる。泡はしばらく漂ったあと、地面に吸い込まれるようにして宝箱へと変化した。


「スルメちゃん!さすが!」


 後方から歩み寄ってきたのは、熊のような巨体の男・苦楽だった。控えめに手を叩く彼へスルメは振り返った。


「別に………」


「いやいや、確かにマンボウは弱いけど、全弾同じ場所に当ててたでしょ? それって相当すごいことだよ」


「見てたの?」


「もちろんだよ」


「ふーん………」


 そっけない態度を取りつつも、スルメはどこか満足そうな表情を浮かべる。


 最弱とは言えどうしてマンボウがBB弾で倒れたのか、それは彼女が超能力者だから。


 スルメが開けた宝箱の中には、和紙に丁寧に包まれた300グラムほどの赤身の肉が入っていた。苦楽はそれをそっとクーラーボックスへ収める。


「こんなのでも、今じゃ三万円くらいするからさ。ダンジョン肉ブーム、最高だよね」


「私の取り分は……いつも通りでお願い」


「動物の保護団体に寄付するんだよね。分かってる、ちゃんとやってるよ」


「ありがとう………」


「うん」


 彼女の微かな感謝の声に、苦楽の口元が自然と緩んだ。


 彼女には世の中の男共を全員引き付けてしまうほどの美貌、そして天性の格闘センス、さらには動物に対する愛情も持ち合わせている。


 苦楽はスルメに対して自分がどんな感情を持っているのか、はっきりと言葉にすることは出来ない。


 だけど今はこれで良い、そう思っていた。






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