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33話

 


 一体どうして――?


「スルメさん、あなたは苦楽さんのために真犯人を見つけ出そうとしていますね?」


「はい……」


 スルメの声はかすれていた。ついさっき、問答無用で協力を拒否された記憶が蘇る。


「私も、できる限りあなたに協力したいと思います」


「え……?」


「戸惑う気持ちはわかります」


 あの時、受付で聞いた声よりも、どこか柔らかく感じた。


「あの時の私にはああいう風な言い方しかできませんでした。それというのも、今回の事件、世間の注目度がかなり高くて、協会にはひっきりなしに取材の申し込みが来ているんです」


 村上愛嬌がスマホを操作しながら眉をしかめた。


「ネットニュースのトップに載ってる。それに……SNSのトレンドにも入ってるわ」


「協会としては、取材には一切答えず、事件の発表方法を専門家と相談しながら慎重に進めています。けれど、どこからかマスコミに情報が洩れているようです。記事の中には協会の防犯体制に問題があったという指摘もあります」


 そう言われてみれば――協会の警備員は、確かに数が少なかった気がする。普段は気にも留めていなかったが、二、三人の交代制で回していたのではないか。


「幹部たちは自分たちが批判されるのを避けたがっていて、私たちに対して『部外者に何も話すな』という強い通達が来ているんです」


 スルメは、あの緊張した雰囲気の理由が腑に落ちた気がした。単なる事件の影響ではなく、組織の防衛本能が働いていたのだ。


「私はこの仕事が好きです。だから、逆らってクビにされるのはごめんです。……だから、さっきはああ言うしかありませんでした。上司や同僚が何気ないふりをしながら、私の様子に注意していたのは感じていましたから」


「そうでしたか……」


「でも私は、苦楽さんがそんなことをするわけがないとも思っています。あの方は体こそ大きいですが、肝っ玉はそれほどでもない。あんな大胆な真似をするような人ではありません」


 スルメの胸の奥に、小さな灯がともる。こんなところにも、味方がいたのだ。


「それに苦楽さんは、探索者として成功していて、収入も安定しているはず。強盗事件を起こす理由がない。……でも、警察が疑うのも無理はないんです」


「それはどうしてですか?」


「警察と一緒に、私も防犯カメラの映像を確認しました。……正直、それを見た時、私も苦楽さんが犯人だと思ってしまいました」


「えっ!?」


 思わず立ち上がりかけたスルメに、中川と愛嬌も身を乗り出す。


「百聞は一見にしかずです。その映像はUSBメモリーにこっそり保存しています。そして公園のベンチの裏側に張り付けておきました。どうぞ、それを持って行ってください」


「……いいんですか?」


「もちろんです。スルメさんなら、きっと真犯人を見つけてくれる。私はそう信じています。そして、襲われた警備員の坂本さんの仇を討ってください」


 氷のようだと思っていたその声が、今はとても暖かく感じられた。


 そうだ――この事件の真犯人を見つけることは、意識不明で搬送された坂本さんのためでもある。


 目を伏せていたスルメが、そっと顔を上げた。木洩れ日がその目に差し込んでいた。


 絶対に犯人を見つけ出す。


 スルメは改めて、心に固く誓った。






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