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30話

 



「実は龍一さんに調べてもらって、もうすでに今回の事件の情報を手に入れている」


「え?」


「何それ凄いじゃないの! あんたに連絡してからまだ一時間くらいしか経ってないのよ?」


「龍一さんは退官間近の警察キャリアだから、いろんな所に顔が利くんだ。いま捜査中の情報を調べてもらったよ」


 中川賢治は、座り心地のいい椅子からスッと立ち上がり、得意げに胸を張った。


「すごいけど……そんなことして大丈夫なの?」


「もちろんアウトだ。バレたら完全にクビだし、マスコミも大騒ぎするだろう。でも事情を話したら一秒でわかってくれた。友達を救い出すためには、仕方のないことだってね」


「あんたのお爺さんって……ま、とりあえず今はあまり深くは考えないことにしましょう」


 村上愛嬌は、苦い薬を無理に飲み下したような表情でため息をついた。


「僕が得た捜査情報というのは――苦楽が任意同行された理由は、防犯カメラの映像だ」


「防犯カメラ……」


 スルメは、事件現場である探索者協会の内装を脳裏に描いた。照明の奥、天井の四隅に据え付けられていた黒いレンズ――普段は気にも留めていなかったが、今はまるで自分たちを見下ろしているように感じられた。


「何が映っていたのかは分からない。でも、警察はそれをかなり信ぴょう性の高い証拠だと判断してるらしい」


「そうなんだ……」


 愛嬌は静かに顎に手を当て、深く考え込んだ。


「けど、苦楽が事件を起こすはずがないんだから。いくら信ぴょう性が高いといっても、それは間違ってるはずだ」


 彼女とスルメの視線が、賢治の方へ向かう。その横顔に、一分の迷いもなかった。


 この男は、苦楽に対して絶対の信頼を置いている――二人は無言でそう確信した。


「そうね、あいつがそんなことするわけないもんね……」


「……見れないかな」


 スルメが、蚊の鳴くような声でつぶやいた。極度の人見知りである彼女は賢治に対して緊張していたが、それでも苦楽を助けようという強い思いは持っていた。


「防犯カメラの映像をかい?」


 賢治の問いに、スルメは小さく頷いた。


「でも証拠品は警察が押収したんじゃ……」


「いや、探索者協会が映像のコピーを持っている可能性はあるよ」


「でも、そんなの警察でもない私たちに見せてくれるわけないよ……」


 スルメの脳裏に浮かんだのは、受付にいるウサギ耳のカチューシャをつけた女性の姿だった――もしかすると、あの人なら。





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