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守護騎士の務め

―――フリーとリィンがキマイラと戦い始めた頃。

 

 聖都クラウディアの門の前でも、守護騎士たちの戦いが激化していた。


襲いくる多種多様な魔物や魔獣たちを切り伏せていくが、いかんせん数が多い。

都の守護騎士たちは、王都の守護騎士たちと比べても遜色がない。

だが、聖女の加護と、聖壁により守られているこの都に魔物や魔獣が襲ってくることなどあまりない。

なので、実力はあれど数が少ない。

冒険者も討伐に参加してくれているが、冒険者も同じような理由で、そこまでランクが高い者も練度が高いものもいない。

下位ランクの魔物たちならば問題ないが、今回襲ってきた群れはランクCからB相当になる。

そもそも、ここにいる冒険者たちは観光目的で来ているので、ランクが低い上に戦う覚悟ができていなかった冒険者たちでは太刀打ちできない。

結果、敵前で逃亡する冒険者まででてしまう始末。


「あ~ぁ、こりゃギルマスのおっさん怒り狂うぞ」


日頃ツァリと共に門番をしているリオンが、逃亡していく冒険者たちに憐れみの視線を向ける。


「って、そういやあのおっさんおせぇな」


聖都のギルドマスターを務めていることを誇りに思っているような人だ。

「そんな人がこの群れ討伐に参戦しないとは思えないが……」

こりゃなにかあったか?

そんなギルドマスターは、いまもなおリィンの魔法で拘束されておりもがいている、などど思いもよらない。


「ドランクがここにいない理由か……」

リオンの呟きを拾い、わずかに考えを巡らせる。


まぁ、なんとなく想像がつくな。

きっと、フリーを無理やりこちらの戦場に駆り出そうとして失敗したのだろう。

それはきっと後々問題に……いや、いま考えることではないか。


「まぁ問題などない。もともと、聖都を守るのは我々守護騎士の役目!」


覚悟と誇りを口にして、ツァリが握る剣に光が宿る。


「はあああ!!!!!」


裂帛の気合を共に振りぬいた剣は、光の軌跡を描きながら多数の魔物を両断する。


「ひゅ~!さっすがツァリ!頼りになるぜぇ」

「ふざけている場合か、リオン」

隣で同じく剣を振っていたリオンが茶化してくる。

「ほかのやつらは知らねーが、俺たちは余裕だろ」

「油断していて、1体でも都に入ったら大問題だぞ」

「真面目だねぇ、ツァリちゃんは」

「お前は―――!」

へらへらと笑っているリオンに喝を入れてやろうと、彼の方を振り返る。

と同時に頭の上を光の矢が何十本も飛び、迫っていた魔物たちをまとめて射貫く。


「俺とお前がいて、一体も通すわけがない。そうだろう?」


先ほどとは打って変わって引き締められた表情は、間違いなくこの都を守る守護騎士の顔。

一匹たりともここを通さない。通れるわけがないという自信。

その様子を見て、ツァリはため息を吐く。

「はじめからそうしてくれ……」

そうして再び、自分も剣を振るう。

門番、という中に敵を入れない最初で最後の守る者。

その役割を担うこの2人は、守護騎士の中でもとびぬけた実力者。

現に、2人がこの役割を担って以降、一度たりとも外敵の侵入を許したことはない。

最もそれは、門から来たものに限るが。

まさか敵が下水を伝ってくるとは思わなかった。

この群れを退けたら、水路の警戒を強めた方がいいと進言するとしよう。

冒険者やほかの守護騎士が打ち漏らした、もしくは倒せないと判断された魔物たちが2人の元に集まる。

それらを苦戦することなく排除していく2人。

この調子なら、被害を出さずに状況を収めることができそうだな。


だが…………。


「妙だな」

「あぁ、やっぱりツァリも感じたか?」

ツァリの呟きを、リオンが拾い同意を示す。

「スタンピートと言われていたが、どうもその気配がない、だろ?」

無言で首肯。

そうなのだ。

スタンピートとは本来天災にも等しい災害だ。

数多の魔物、魔獣の群れが町を襲い、破壊しつくし、食糧など軒並み食い荒らされる。

原因ははっきりとわかっていないが、増えすぎた魔物たちが飢餓状態になり食物を求めて移動するという説や一定の周期で魔石が暴走する説など様々だ。

いくつかある説の中で共通しているのは、魔物たちは自我を失い、狂気を剥き出しにして襲ってくるというもの。


結果、何百、何千もの死者を出しようやく収束する。


そんな災害。



だが、此度聖都に襲来してきた魔物たちは皆、敵愾心こそあるものの狂気に満ちているとは言えない。


むしろ、どこか焦りさえも感じられる。


「これはただの魔物の群れではない、そんな気がする」


フリーが倒したという魔人ドレアム。

下水道にいた魔人化された子供たち。

そのタイミングでこの襲撃。


「何者かによる意図的なものを感じるな」


また一体、まるでなにかに追い立てられるように襲ってくる魔物を切り伏せる。


最後に見た、魔物の瞳に映るのは恐怖の色。


この魔物や魔獣たちも、なにかから逃げてきたのか……?


それとも……


ツァリが思考しているその時。


「あらあら、可愛い子たちをこんなにた~くさん集めたっていうのに。一向に門を破れないと思ったら厄介な守護騎士様がいたのね~」


頭上から声がふってきた。

妙に間延びした、人をいらつかせる口調。


「おいおい、なんだありゃあ?」

リオンが驚きの声を上げ、空を見上げている。


ツァリも見上げようとして―――


すぐに動きを止めた。


この声は……いや、まさかそんなはず……。


なぜなら、その声に聞き覚えがあったから。


「でも、そうねぇ。これは仕方がないのかもしれないわね~」


口調こそは違えど、自分が間違えるはずがない。


この声の主を、自分はよく知っている。


この声は…………!


ツァリは恐る恐る空を見上げた。


そして、見た。


空に浮かぶ、真っ赤な翼と真っ赤な瞳、そして魔人の特徴でもある赤く歪んだ角を生やした魔人。


「久しぶりねぇ~お姉ちゃん」


自分のもっとも大事な妹、カルネスと瓜二つな魔人の姿を。


読んでくださりありがとうございます。

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