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有名人……有名獣人?

更新頻度遅くてすみません……!

「どこにいくんだい?」


人垣に背を向けて、駆けだそうとした瞬間に手を取られた。


気配が、なかった……?


驚き、腕を掴んできた人物をみる。

禿頭で、背の高い男が自分を見下ろしていた。



「ギルドマスター……」


逃がすまいと腕を掴んだまま、もう片方の手で禿げた頭をなでながら人のよさそうな笑みを浮かべるギルドマスター。


その笑みにどこか薄ら寒いものを感じる。


「聞いただろう?この聖都クラウディアに魔物の群れが迫っている。君も、冒険者なんだから討伐に参加してもらうよ」

優しい口調で語りかけてはいるが、目が全く笑っていない。

「この前、雪山で魔獣の群れを退けた。それで十分働いている」

「そうだ。君たちはたった1人で魔人を倒している。その力、また役立たせてもらうよ」

「あたしはこの都を守るために冒険者になったわけじゃない。それに、守り手なら守護騎士様がいる。あたしたちがでる幕はない」

掴まれていた腕を振りほどき、無視して行ってしまおうと思ったが、さらに別の男が3人現れて行く手を防ぐ。

ゴロツキ、のようにも見えるが、ヘラヘラした態度とは裏腹にこちらに対する警戒をしっかりと持っている。


『ギルドマスターに従っているんだから、冒険者かな?』

こういうのは冒険者って呼ばない。冒険者崩れって呼ぶ。

『あの槍使いの人たちとは全然違う雰囲気だもんねぇ』

さすがにこれと、あの人たちを一緒に扱うつもりはない。


「どいて」

端的に。殺気を込めた口調で言い放つ。

「どいて、と言われてはいどうぞってやっていたら俺たちはいらねーんだよ」

フリーの言葉をうけても、へらへらと笑うだけで動こうともしない。

だが、フリーの殺気をうけて実力を計ったのだろう。

警戒心が上がっている。それどころか、鞘から剣を抜き放ち構える。

「悪いが嬢ちゃん。一緒にきてもらうぜ?」

じりじりと迫ってくる3人の男たち。

「聖都はこの大陸でも重要な都でね。そこの危機に助力しないというのであれば、冒険者ギルド全体から除名処分もあり得るぞ?」

前に冒険者の男が3人。後ろには圧をかけてくるハゲたギルドマスター。


やっぱり、人間っていうのは……。


もういい。こいつらを殴り倒してでも孤児院に向かう。

「ダーク・バインド」

やってしまおう、そう思った瞬間フリーの意識は奥へ引っ込まされていた。

代わりに表にでてきたリィンが、さきほど編み出したばかりの拘束魔法を使い男たちを拘束する。

「うぉ!」

「なんだこりゃ!」

「獣人は魔法が使えないはずだろ……!」

『リィン、なんででてきたの?』

困惑する男どもの言葉は無視して、リィンに問いかける。


さすがにここまでされて冒険者を続けたいとは思わないよ。冒険がしたかったら勝手にしたらいいだけの話だし。


「き、貴様ら!こんなことしてただですむと思うなよ!」

ギルドマスターの叫びが響く。

「お前たち、これが失敗したら冒険者に戻すのは白紙に戻すからな!」

次に、拘束されている男たちに叱責。

『やっぱり冒険者崩れ。多分、なにかしら犯罪まがいなことをして冒険者ライセンスを剥奪された』

白紙に戻すって言ったし、裏取引ってやつかな?

「ちっ、そりゃねーぜ、ギルマスさんよ」

「ったく、女1人を捕えたらいいだけの簡単な仕事っつーから引き受けたのによ」

「とんだ外れくじだぜ」

3人の冒険者たちが文句を言いながらもリィンの拘束を破る。

「やるじゃん。私の魔法を破るなんて」

「ライセンスの剥奪こそ受けているが、俺たちは元Aランクの冒険者だ。この程度の拘束、破るのはわけねーよ」

「というわけで、今度はお嬢ちゃんが拘束される番だよ」

にじり寄ってくる冒険者たち。

歪んだ、醜い魂が見える。

「Aランクの冒険者になるのって結構大変なことでしょ?それだけの実力はあるのでなんでこんなことやってんの?」

「真面目にコツコツやるだけが、ランクを上げる条件ってわけでもねぇんだよ」

「これを機に、嬢ちゃんももう少しこの世界を知った方がいい」

あぁ、そういうことか。

ここのギルドマスターと結託して、違法にランクを上げてたのか。

『実力があるのは本当かもしれないけど、Aまでは届かない。精々Bどまり』

だねぇ。そこまで強そうじゃないもん。

それにしても……

「私の中の冒険者のイメージがどんどん崩れていくなぁ」

『人間なんてこんなもの』

本当にはじめから人間なんて、と思っているのだろう。フリーの言葉からはなんの感情も感じない。

「同じ人間として、がっかりだよ」

すっ、とかざされた右手。

そこから、紫色の炎があふれ―――

「あ?なんだその魔法は?」

「炎系の魔法か?」

疑問に思う冒険者たちは、その答えを知る前に紫の炎に呑まれて消えた。

「なっ……!」

目の前で起こった現象に、理解が追い付かずに絶句するギルドマスター。

「私たちに首輪をつけたかったんだと思うけど、残念でした。私たちはもう誰にも捕らわれたりしないの!」

べっと舌をだしてギルドマスターにそう告げると、背を向ける。

「こんなことをして、お前たちは冒険者ライセンスの剥奪はおろか、指名手配されるぞ!」

「どうぞご勝手に~」

背中に聞こえてくる声に適当に返事をして、今度こそ孤児院に向けて駆けだす。

「前の町でも指名手配になっているだろうし、どんどん有名人……いや、有名獣人か、になっていくね、私たち」

『悪い意味で』

「それがちょっと残念だけど、しょうがないね。ま、そんなことより孤児院に急ごう!」

『だったら身体強化が使えるあたしの方が向いている』

「しまらないこと言わないでくれますかぁ!?」

きりっとかっこつけて走り出したリィンの足がカクンともつれる。

その瞬間、主導権をフリーに取られて身体強化が発動。

リィンが走り出した速度とは比べ物にならない速度で都を駆ける。


元々、少しだけ嫌な予感はしていたのだ。


ツァリの妹、カルネスに擬態していたやつがいたあの部屋。

オーガを召喚するためだけの魔法陣だと思っていたが、そうじゃなかったのかもしれない。

あの時は、たまたまオーガが召喚されただけで本当は―――


そこまで考えた時、フリーの瞳に黒い靄が映る。


『あれって、オーガが召喚されたときの……!』

「急ごう」


腕と脚を獣化させ走る姿は、まさに黒い狼。


黒い矢のように駆け、その勢いのまま孤児院へと突入する。

読んでくださりありがとうございます!

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