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こ、こいつ……直接脳内に……!!!

『首とんっ!で意識を狩ることができるなんて、漫画の中だけの話だと思っていたよ』


全員の意識を刈り取ったところで、リィンの呟きが聞こえる。


「何言ってるかわからないけど、とんっ!した瞬間に少しだけ魔力をぶつけて体に衝撃を与えて意識を刈り取った」

『はぁ~ん、よくわからんけどこれが首とんっ!の原理か』

「多分違うと思う。そんなことより、あの魔人を追う」

『あ、でもさすがにこのままっていうわけにはいかないんじゃない?』

裏庭や屋根の上に倒れる複数の子供たち。そして血だまりに伏せるオーガ。

「確かに……」

とりあえず子供たちは一つの部屋に寝かせて、オーガは魔石だけ取り出す。

最後に、部屋全部を包み込む大きな防御魔法を張る。

『一応これで安心、かな』

「あとは、子供たちの意識が戻る前に全部終わらせよう」

『そうだね。あの魔人を捕まえて、拷問でもしたら元に戻る方法を吐くでしょ』

「多分だけど、魔人の魔力を使って洗脳もしくは眷属化していると思うから殺したら元に戻ると思う」

『なぁんだ。じゃあ話は簡単だね。魔人を殺そう』


殺るときは殺るタイプの自分と違い、リィンはそこまで好戦的ではない。そんなリィンが拷問だの殺そうだの言っているのは、やはり子供たちを利用されて怒っているのだろう。

自分も、少なからず胸中に渦巻くどす黒いものを感じていたが、リィンの怒りを感じて少しだけ治まる。


「殺すのはいいけど、問題はどこにいったかわからない」

『教会じゃない?絶対教会もグルでしょ。ていうか、そうだった場合アルが心配だよ』

無言でフリーがうなづき、駆けだす。

「教会全部が敵かどうかはわからないけど、あのゲルマ―ってやつは、少しだけ嫌な感じがした。さっきのやつに近づいてわかったけど、魔人の魔力に似た気配がする」

『急ごう。正体がばれた以上、なにをしだすかわからない!』

「急いでる」

文字通り、風のように民家の屋根を蹴りながら教会へ一直線に駆けている。

元々大した距離が開いているわけでもないので、教会へは一瞬でついた。

「なにごと?」

だが、教会の前には多数の人が集まっていた。

地面におり、民衆に近づいていくと騒ぎの原因がわかった。


「魔物の群れがこの都を襲ってきているのは本当なのか!?」

「聖女様の加護はどうなったんだ!?」

「俺たちは助かるのか!?」


等々、群れの話を聞いた民衆が不安に駆られて教会に詰めかけてきたようだ。

『これじゃあ中に入れないね』

「厄介」

遠巻きにどうしようか考えていると、教会の上。バルコニーらしきところから白いローブを纏った聖女様――アウルディアが姿を現した。

隣には、同じく白いローブを羽織り、長い髭をたずさえた初老の男性も立っている。


「聖女様だ……」

「教皇様もいるぞ」


あれが、教皇様か。

『確かに威厳たっぷりだね。それに、強そう』

遠巻きに教皇を眺めるフリー。

一瞬、自分の勘違いかもしれないが、教皇の目がこちらを見たような気がした。


「みなさん」


聖女の声が広場に広がり、ざわめいていた民衆たちの声が途端に静まり返る。

「みなさん、もうお聞きでしょうが、いまこの都に未曾有の危機が迫っています」

聖女は両腕を広げ、語り掛けるように、静かに言葉を紡ぐ。

決して声を張っているわけではないのに、遠くまで言葉が聞こえるのはなにかしらの魔法を使っているからか。

「この聖都クラウディアに、多数の魔物の群れが迫っています。おそらく、私の加護では防ぎきれないでしょう」

静かだった広場にざわめきが戻ってくる。

「ですが、心配はいりません」

聖女から放たれた白い光が、まるで雪のように降り注ぐ。

光を浴びた人々は、焦りや恐怖などの感情が安らぎ、落ち着いていく。

『すごいね、これ。これも神聖魔法の一つなのかな』

「多分、そう」

すっ、と差し出した手のひらに光が降り吸収されるように消えていく。

途端、自分の中にあった魔人に対する怒りや憎しみが少しだけ薄れたように感じる。

「聖女様、と呼ばれる所以」

『は~聖女様やってんねぇ』

民衆が落ち着きを取り戻したのを見計らって、再び聖女は口を開く。

「この都には、神の祝福をうけた守護騎士がいます。私も、より強い加護が与えられるように祈ります。私たちの聖都を、魔物の群れなんかに壊させはしません」


おぉー!!!


さきほどの不安や恐れの空気など吹き飛ばすかのような、広場に響く人々の歓声。

守護騎士なら、聖女様なら絶対に守ってくれるという信頼。

「ですが、魔物の規模はまだ正確に判明しておりません。この広い聖都をすべて守るのは難しいでしょう。ですので、どうか皆様。できる限り中央広場の方へ集まってください。守る範囲が狭くなればなるほど、私の結界もより強固な物になります。まだ時間はあります。ここにいない人々に、どうか伝えてあげてください。この危機で、1人も犠牲を出さないために……!」


聖女の決死の演説が終わった。

広場は一瞬だけ静まり返ったが、やがて言葉の意味を理解した人々が方々に散っていく。ここにきていなかった大事な人のもとへ。

開かれる教会の扉。

我先にと飛び込んでいく人々。

そんな人々をフリーは、どこか冷めた目で見ていた。

広場に人が減り、ふと見上げるとこちらを見ている聖女アウルディアと目があった。

アウルディアは少し困ったように笑うと手を振りわずかに頭を下げた。

おそらく、今は会って話すことができないということだろう。


(聞こえる?フリー)


踵を返そうとしたその時、頭の中にアルの声が響いてきた。


『こ、こいつ、直接脳内に……!!!』


それ以上に、なんでかわからないがテンションの高いリィンの甲高い声が頭に響きわたる。

「リィン、うるさい。頭がキンキンする」

『だって脳内だよ脳内!こいつ、直接脳内に!!って死ぬまでに言いたい言葉ベスト100に入っているセリフをまさか言うことができるなんて!』

「死ぬ前ではない。リィンは一回死んでる」

『そんな細かいことはどうでもいいんだよ!』


(あ、あの、続けてもよろしいでしょうか……?)


フリーとリィンの会話はアルにも聞こえていたのだろう。戸惑い、思わず敬語になってしまったアルの言葉が頭に響く。


(というか、リィンが一回死んでるっていうのは一体……?)


『そんな細かいことはどうでもいいんだよ!それよりどうしたの?というかなんなのこれ?念話ってやつ?』

(え、っと、心話って私たちは呼んでるけどなんでもいいですそこは)

『これも魔法なの?神聖魔術?』

(いえ、魔法は魔法なのですけど別に神聖魔術ってわけではなく、ただ単に魔力線を相手につないで、ってこの話は長くなるでまた後で!)

『え~ここまで話しておいてお預けはひどいなー』

(まってまって!本当に時間がないの!このあと聖女としていろいろとやらないといけないこともあるし!魔力線そこまで伸ばすことができないからそのうち切れちゃうし!だから先に私の要件を全部言わせて!)

『しょうがないな。じゃあ全部終わったあと洗いざらい吐いてもらうよ?』

(わかりました……。で、では)

一瞬間ができたのは、咳払いでもしているのだろう。さすがにそこまでは伝わってこない。


(魔物の群れの討伐は守護騎士たちと私でやるから、フリーたちは聖都を守ってほしいの)

その言葉に反応したのはずっと黙っていたフリーだった。


「あたしに人間を守れ、と?」


フリーの纏う空気が、張り詰めたものに変わる。

そこに気が付いているのか、いないのか。

アルは言葉を続ける。

(はい。いえ、正確にいうと孤児院の子供たちを守ってほしいのです)

「守護騎士たちは守ってくれないの?」

(フリーにこんなこと、言いづらいんだけど、もしも魔物の群れが聖壁を突破して聖都の中に入ってきた時、優先順位がある)

「なるほどわかった。守護騎士様が守るのは聖都の住民、教会関係者ってところね。孤児院を守る優先度は低い」

(そういう、ことになるの……)

「大した守護騎士様」

フリーの皮肉はしっかりと伝わり、アルはこっそりと唇を噛む。

(耳が痛いんだけど、こればっかりは私の一存では変えられない。お願いできるのは、フリーとリィンしかいないの!)


心話は、繋がったもの全員の思考がそのまま相手に伝わってしまう。

アルがどんな思いで繋げてきたのかも。

どれだけ無理なことを頼んでいるのかも。


守護騎士が見捨てるといった孤児院の大半は獣人が占めていることを理解した上で、フリーに話した。


リィンはなにも言わない。

あくまでも、この体の主導権はフリーが握っているから。


それに、リィンはフリーがどんな答えをだすのかもうわかっていたから。


(ありがとうございます。フリー、リィン)


だからこそ伝わってくる、アルからの感謝の言葉。


まだなにも言ってないのに。

フリーとしたら若干不服だが、仕方がない。


「礼をいうのはまだ早い。子供たちは、すでに狙われている」

(それは、どういう―――)


意味かどうかを尋ねる前に、心話が途切れる。

距離があきすぎたのか。時間制限が来てしまったのかはわからない。


「リィンが無駄話したせい」

『ここで私に振りますか!?』

「間違ってはない」

『いやだってあんなんテンション上がらない方が無理じゃん!逆になんでフリーはそんなにも冷静なの!?』

「だっていつもリィンと繋がっているようなものだから」

『ぐうの音もでないほどの正論だね!』

「くだらない話をしている時間はない。孤児院に戻る」

『そうだね。聞きたいことは聞けなかったけど、いまは子供たちを守る方が先決だね』

「そういうこと」


今度こそ踵を返し、フリーは孤児院にむけて駆けだした。


リィン「ねぇ、アル。一番初めの(聞こえる?フリー)のあとに(いまあなたの脳内に直接語りかけています)って言葉を追加してくれない?

アル(聞こえる?フリー。いまあなたの脳内に直接語りかけています)

リィン「こ、こいつ……直接脳内に……!!!」

アル(え、リィンが応えるの……?)

フリー『アル、こんな茶番に付き合う必要ない』

アル(ていうか、あなたたちの脳内どうなってるの……?)


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