かわいいウルフたちとの尊い時間
本日二話目です。
ご注意ください。
閑話みたいな感じなので短いです。
「は~さすがにつっかれた~!」
『死ぬかと思った』
「実際、この子がいなかったら死んでたよね、私たち」
紫色の魔石を空に掲げる。
さきほどまでの曇天が嘘のように、澄み渡った青空。
『間違いなく死んでいた』
「さすがに2回も死ぬのは嫌だな~」
『死んだ時の記憶が残っていないなら実質1回だから大丈夫』
「なにが大丈夫なのやら……」
『それと、リィンにも救われた』
「え?私?」
フリーからの意外な言葉に、思わず起き上がってしまう。
『なんで突然神聖魔法が使えたの?』
「あ~それかぁ……私が天才的な魔術師様だから、と言いたいところなんだけど、本当に自分でもなんで使えたのかよくわかっていないんだよね」
あの時は無我夢中で。
なんとしてでも、ケルベロスの雪だるまを守らないと!と思っただけだから。
「アルが使っているのを何度か見たし、前世の知識もあるからかな」
『それだけで使えるようになったら聖女はいらない』
「いや~まいったな~私が天才すぎるせいで」
『それと、魔人にとどめを刺したあれ』
「え?あれやったのはフリーじゃないの?魔人の魂を砕いた紫色の矢でしょ?」
『あたしじゃないと思う。別段なにか力を発動させてやろうとか思ってなかったし』
「私もそうなんだけど……。体が勝手に動くからてっきりフリーかと思っていたよ」
『消滅する間際にあいつが言っていたセリフも気になる。そんなことができるのは―――みたいな』
「あぁ~なんか言っていたね。あんま聞こえなかったけど。まあ、なんでもいいんじゃない?勝てたし」
ぼふん、再び雪の上に寝転がるリィン。
『考えてもわからない、か』
「そゆことだよ」
さきほどまでの死闘が嘘のようにまったりとした空気が流れるが、ふいに、近くにウルフたちが寄ってくる気配がする。
「あ~まだ残っているのか、残党が」
『さすがにウルフ程度には負けないけど。……?』
だが、ウルフたちが襲ってくる気配はない。
ただどうしたらいいのかわからずに、リィンたちから一定の距離を取りこちらの様子を伺っている。
「ボスがいなくなったからどうしたらいいのかわからないのかな?」
『多分そう。命令するものもいなくなったし、力の差はわかっているはずだから、きっと襲ってこない』
「なんだよかった。いまさらだけど、ただ操られていただけのウルフたちを殺すのはさすがにかわいそうだからね」
『冒険者になったころ、魔法の練習がてら散々……』
「それは今言わなくてもいいでしょ!ほら、あんたたちも、そっちから襲ってこないなら私から襲うことはないからどっか行きなさい。できれば、聖都に迷惑が掛からないようなところまでね」
リィンが周囲のウルフたちに声をかけると、はじめは戸惑っていたが一匹、また一匹とリィンの近くに寄ってくる。
「いやなんで……?」
『新しいボスだと思っているんじゃない?同じ狼だし』
「いや狼人族って別に狼ってわけじゃないでしょ?どちらかというと人間……」
『人間と同じって言われるぐらいなら狼と同じの方がいい』
「めんどくさいなぁもう。じゃあ狼同士仲良くやってなよ」
珍しくリィンの方が呆れて奥へ引っ込んでしまう。
フリーは、横に座る1匹のウルフの喉元をくすぐる。
気持ちよさそうにグルグル喉を鳴らすウルフ。
「かわいいかも」
『そんなこと言われたらもう今後ウルフ討伐依頼受けれないじゃん!』
「こんなかわいいウルフたちを殺すなんて。リィンの鬼。魔人」
『散々ぶった切ってきたやつには言われたくないんだけどなぁ!?』
ケルベロスの魔石を胸に抱き、周囲をウルフたちに囲まれて、さきほどとは考えられないほど穏やかな時を過ごした。
ウルフたちの毛を撫でたり、頬を嘗められたりして遊んでいる間に体力、魔力ともにかなり回復した。
名残惜しいが、いつまでもこうしているわけにはいかない。
「そろそろ下山する」
フリーが立ち上がり、周囲のウルフたちにそう告げる。
言葉がわかるのか、少しだけ残念そうな表情を見せ、一鳴きすると1匹、また1匹と山奥へと消えていく。
最後に、一際大きい個体が三体、フリーに対してしっかり頭を下げて去っていった。
『あの三頭が群れの新しいボスなのかな』
「多分、そう。普通のウルフたちを見守るような感じで周囲にいたし」
『あの子たちも、自由に暮らせたらいいね』
「あの三頭がしっかりと統率をとって、人間を襲わないようにできるならきっと大丈夫」
『そうだね』
ウルフたちの姿が見えなくなるまで見送ると、フリーも山を下り始めた。
お気に入りエピソードです。
呆れるリィンを書きたかった。
ただそれだけです。
読んでくださりありがとうございます!




