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気になること

夜が明け、テントからでてリィンはぐっと伸びをする。

「お~いい朝ですな~!」


早朝。

太陽の光をキラキラと反射する白い世界がなんともまぶしい。


「雪降ったせいで昨日の夜は退屈だったけど、この景色が見れたからまぁいいか」

『なんかずっと歌みたいなの歌ってなかった?』

「あ、ばれてた?地球の話したから、なんか好きだったアニソンのこと思い出して」

『あにそん?』

「私がよくいうアニメの曲だよ」

『あんまりうまくなかった』

「辛辣な感想!元の曲知らないのにうまいも下手もわからんでしょうが!」

早朝からディスられつつ、テントを魔法袋になおして、主導権がフリーへと移る。

さて、とさっそく双剣を抜くフリー。鋭い眼光の先にいるのは一体のウルフ。

普段会うウルフと違い、毛が白い。

「あれがスノーウルフ」

『ほんとに白いんだ。昨日は暗かったからわからなかったけど、ホッキョクグマとは違って本当に毛が白いんだね』

「そう」

『ホッキョクグマなんて知らないくせに知ったかぶりするな~!』

向こうも、フリーのことを敵と認識し、さらに奥から数匹唸り声をあげながらにじり寄ってくる。

「何体いるか知らないけど、あたしがまとめて切り裂いてあげる」

獰猛に笑うフリー。

言葉を理解したわけではないだろう。

だが、フリーの言葉をうけて怒ったように一鳴きすると全員が同時にとびかかってくる。

「甘い」

フリーはわずかな動作で5匹のスノーウルフの首元を切り裂き、地面に倒す。

「雪山では見つけづらくて厄介っていうだけで、強さはただのウルフと同じ」

こいつらはただの見張りか、斥候。

相手するだけ無駄。

もっと大きな群れがあるはず。

雪山を駆け上り、道中ですれ違うスノーウルフたちを同じように切り伏せていく。


『あ、雪だるま』


唐突にリィンの言葉が聞こえる。

「遊びたいの?後にして」

『違うよ!ほら、あそこの木の横。雪だるまがある』

フリーが立ち止まり、リィンがいう場所をみると確かに雪だるまがあった。

『冒険者が作ったのかな?』

あれだけ冒険者がいたのだ。

何人か先行していてもおかしくない。

それに冒険者とはいえ、人間だ。

これだけの雪があれば雪だるまの一つでも作って遊びたくなるのだろう。

ただ、大の男が数人であれ一個作っている姿を想像すると少しおかしい。


「あれは魔物」


そんなリィンの平和な想像は、フリーの一言であっけなく崩される。

『え?あれが!?』

見た目は本当にただの雪だるまにしか見えない。

「魔石に雪が積もって、魔物化したやつ」

『魔石ってその辺に落ちているものなの?ていうか、なんで雪が積もったら雪だるまの形になるの?』

「自然に落ちることはない。だから、魔獣とか魔物が死んだ跡。死んだ恨みとかが残っているから、一見するとただの雪だるまだけど襲ってくる。なんで雪だるまの形になるのかは知らない」

『異世界怖』

と、異世界雪だるま講座を受けていると、見ている雪だるまの周囲に氷の矢が出現する。

「ほら、氷魔法使ってきた」

飛んでくる矢を切り落とし、雪だるまに肉薄すると頭と胴体を切断する。

ごろりと転がる頭部分。

『これでやっつけたの?』

「こいつらは雪だから、こういう雪のある場所だと無限に再生する」

『無敵かよ』

「そうでもない。魔石を破壊したら倒せる」

『あ、なるほど。で、その魔石はどこにあるの?』

「個体によって違う。大きさもバラバラ。大きい魔石から生まれた雪だるまは巨大になると言われているから、この雪だるまは精々ウルフの魔石から生まれた程度だと思う」

頭の下から雪が盛り上がり、再び雪だるまの形となって再生される。

「別に強くないし、めんどくさいだけだから無視でいい」

再び頭を切り落として、再生される前に駆け上がりその場を離れる。

『ちょっと悲しそうだったよ、あの子』

「気のせい。時間の無駄」

『相変わらずクールだね。雪よりもクールだぜ』

「はいはい」

『辛辣なつっこみもつらいけど適当に流されるのもつらいね』

宣言通り、道中の雪だるまをすべて無視してフリーは山頂を目指す。


中腹辺りを超えると、スノーウルフだけでなくスノータイガー、ホワイトベアなどギルドで聞いて魔獣たちも襲ってくるようになった。

スノータイガーは素早く、ホワイトベアは力が強く、二体とも油断していたらフリーでも大怪我を負ってしまうだろう。

だが、フリーは一切油断なく双剣を構え、確実に切り伏せていく。


『やっぱり気になるなぁ』


それは何体目かのスノータイガーを切り伏せた時だった。

ぽつりとリィンがつぶやく。

「あたしも気になっていた。群れという話だったけど、スノータイガーやホワイトベアは群れというほどじゃない」

『あ、そっち?』

てっきり同じ疑問を感じたのだと思ったが、リィンは違ったらしい。

「リィンはなにが気になったの?」

『なんでベアだけ、ホワイトベアなのかなって』

「…………ギルドかどっかで名前の由来でも聞いたら」

『フリーいま呆れたでしょ?』

「大丈夫。前から呆れている」

『それ大丈夫じゃないやつ!だって気になるんだもん!』

「はいはい」

『はい!もう一つ気になることがあります!なんかウルフ系多くないですか!?』

下がった信用を取り戻すためか、必死さが伝わってくる。

『はじめはスノーウルフだけだったのに、なんかいつの間にか黒い上位種みたいなやつもいるし!』

ね?ね?そうでしょ?と同意を求める声が頭に響く。

「……まぁいいけど。ウルフ系が多いのはあたしも気になっていた。魔獣の群れというより、これはウルフの群れって呼んだ方がいいかもしれない」

『ですよね!うんうん、私もそれが気になってた!』

「そのほかの魔獣は、もともと住んでいた魔獣で、ウルフの群れに居場所を奪われて暴れている感じがする」

『でもウルフって上位種でもそこまで強くないよね?スノータイガーなら返り討ちにできると思うけど』

「一体一体はそこまで強くないけど、群れとなると話は変わってくる。それに、多分この歪な群れを作り出した張本人もいるだろうし」

『魔人、ドレアム』

リィンの言葉が聞こえるわけもないが、ちょうどリィンがそうつぶやいたのと同じタイミングで山を覆う魔力が濃くなる。

『挑発されてるのかな?』

「そうだと思う。来れるものなら来てみろって」

フリーがいまだ見えない山頂を見上げる。

山頂から山全体を覆うように溢れている魔力。

隠れる気などさらさらないのだろう。


「間違いなく、山頂にあいつがいる」


流れてくる魔力に、フリーの殺気がぶつかりあう。


―――来てみろ、この山の頂まで


そんな声が聞こえた気がした。


50エピソード目!


ここまで読んでくださっている方、ありがとうございます!

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