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エルダートレント……?

さきほどまでの神聖な気配がする森はどこへやら。

いまは、隠す気もなくなったトレントの闇の魔力が充満している。

溢れる魔力がわずかに降り注いでいた聖女の加護を打ち消し、普通の木々をトレントへと変えている。

「なるほどねぇ、そんな感じなんだ。いかにもトレントたちの親玉って感じだよね。名前とかあるのかな?」

「少なくとも私は知らないし、どんな文献にも載っていなかったと思う……。教会でもこんな魔樹の話、聞いたことない……」

不敵に笑うリィンとは対照的に、アルの声は少しだけ震えている。

蠢く枝がなにかしてくるのではないかと、気が気でないのだろう。

「じゃあ、エルダートレントってところかな。あんまり私が知っているエルダー感はないけど。」

エルダートレントといえば、なんかもっとこう、神聖なイメージがあるが目の前にいるこいつは真っ黒。邪悪なイメージしかない。

「エルダートレントはもっと神聖なものだから、あれをエルダートレントって呼んだらきっと怒られるよ……。」

「なんと。」

エルダーはエルダーで別にいるのか。そしてやっぱり神聖なものっていうのはあっているのか。

「ていうか、リィンはエルダートレントって知っているの?あれは教会よりの人じゃないと存在すら知らないと思うんだけど……」

「あ、まぁうん。冒険の最中にどっかで聞いたような気がしないでもないかな~?」

あんまり適当に名前いうもんじゃないね……。この世界の常識がわからないし。

「じゃあダークトレントとかでいいや」

「エルダーじゃなかったらいいと思うけど……て、適当!」

『安直ともいう』

はいフリーさんは突然声を挟まないでください。

二人で眺めていると、ざわりと木が揺れ、木の根が地面から飛び出し、黒い葉が刃のように降ってくる。

リィンは炎の壁で、アルは光の膜で自分を覆い防御する。

「弱点は炎ですか~?」

根の防ぎ、葉を焼いた炎の壁が槍の形へと変わり、ダークトレント目がけて飛んでいく。

太い幹にしっかりと槍は突き刺さったが、燃え広がる気配はない。

「魔法耐性も上がってるか。効いてないことはないみたいだけど……。」

傷はついたが、燃えることなく槍は消えてしまう。

悲鳴が上がることもないので、どれだけのダメージが与えられたのかもわからない。

焦げてるってことは、ノーダメージではないと思いたいけど。

お返しと言わんばかりにトレントは巨体を揺らし、何本も伸びている枝に黒い実をつけて一斉に飛ばしてくる。

「枝でしばいてくるのかと思っていたけど、違うんだ。あれ、絶対に爆発するよね」

「そんな冷静にいうこと!?リィン、こっちにきて!」

どう対処しようか考える前に、アルに呼ばれたので素早く横に立つ。

「プロテクション!」

アルが小さく詠唱し、二人は輝く光の壁に包まれる。

振ってきた実が、光の壁に当たり次々と爆発を起こす。

地面に落ちた実も、その瞬間から爆発して大地を揺らす。

うん、予想通り。

「やっぱり爆発したね。」

「なんでリィンそんなに冷静なの!?あんなのランクC冒険者二人で挑む相手じゃないよ!?」

変わらず呑気な様子のリィンに、アルがついにキレる。

「ま、これまであんなやつとばっかり戦ってきたし。」

「いやリィンとは今度じっくりとお話してみたくなってきたよ……。」

トライホーンとどっちが強いかな?

「炎の効きが悪いなら、次は氷かな。」

実が落ち切った隙に素早く魔力を練り、氷の槍を作り出してさきほどのように打ち込む。

「むむむ、これも効きが悪いな……。」

だが、期待していたほど効果を得られなかった。

刺さってダメージは多少与えているようだが、凍りついたりはしない。

「多分、魔法防御力がかなり高いんだと思う。魔法主体の私たちじゃちょっと相手が悪い。」

「なるほどねぇ……。」

だったらフリーに代わってもらって接近戦でもいいけど……。

『あたしはいつでもいける。』

なんかくやしいんだよなぁ。それに、アルにばれちゃうかもしれないし。別にアルにだったらばれてもいいような気はするけど。

『ずいぶんと信頼してる。』

そういうわけじゃないけど、なんか、うん、アルは悪い人間じゃないような気がする。

『それには同意する。代わってほしかったらいつでも呼んで。』

さっきはなにがあっても助けないから、とか言ってたくせに~。このツンデレちゃんめ!

『トレントの栄養になれ。』

かなり遠回しに死ねって言われたねこれは。

「さすがにこんなところで木の養分にされるのは嫌かな~。」

「え?なんの話?」

「あいつをぶっ倒してやるっていう話!」

リィンの周囲に炎の球がいくつも浮かびあがり、トレントが放ってきた爆弾の実と空中でぶつかりあい爆発を起こす。

「アルはもっと強い攻撃魔法なにか使えるの?」

「セレスティアル・アローと、少し時間さえもらえればホーリー・レイが打てるよ。」

どっちも知らない魔法だが、アルが強い魔法だというならそうなのだろう。

「少しってどれくらい?」

「集中と詠唱がいるから、2,3分ってところ。」

「んじゃ、その時間は私が稼ぐからよろしく~。」

「そんな軽い感じで!?」

通常ならば2、3分などすぐに過ぎてしまう。だがいまは、未知なる魔物と交戦中だ。こちらの魔法は通りが悪く、向こうの攻撃は一撃一撃が重たい。

そんなやつ相手に持たせる2,3分がどれだけ長いか、わからないリィンではないだろう。

「私がやられちゃう前に、なるはやでよろ」

両手を地面につけ、土を硬く固めて根っこの攻撃を防ぐ。

降ってくる実は火球で防ぎ、ちくちくと氷の矢を打ち込む。


土に、炎に、氷をあんなにも器用に使いわけるなんて。

光魔法の習得も早かったし、本当にリィンはただの獣人族なの?というか、なるはやでよろってなに?なにをよろされたのは私……?

疑問が頭の中を駆け巡るが、いまはそんなことを考えている場合ではない。

落ち着いてからしっかりと問い詰めてやることにしよう。


ふぅ~……。


落ち着き、大きく深呼吸してから両手を組み、両膝を地面について祈りの体制をとる。


リィンが命がけで稼いでくれる時間、無駄にはしない!

なるはやで更新できるように頑張ります……!


読んでくださってありがとうございます!

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