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その瞳に映るのは

二部開始です。

チッ チッ チッ


時計の音が静かに響き。


微かに紙をめくる音がする。


頭上に浮かぶ光の球が淡く室内を照らす。

あまり広くない部屋の両脇には大きな本棚がおいてあり、太い本がしっかりと詰まっている。

狂暴と名高いエビルタイガーの毛皮が一面に広がり、一番奥の窓のそばに大き目のデスクがある。

初老の男性が、また一枚、ぱらりと読んでいる本をめくる。


いや、それは本ではなくなにかの数字の羅列。

びっちりと書き込まれた数字を見て、男性がにやりと笑う。


「報告があります。」


影が伸びて、邪魔にならない声量で声をかける。

「なんだ。」

少ししわがれた、しかし力を感じる声。

「獣人族の子の仕入れに失敗しました。」


ぱらりとまた一枚、紙がめくられる。


「そうか。」


静かな答えが響く。


「どこの商人だ?」

「ホースボーン商会です。」

「わかった。」

本棚から一冊の本が浮かびあがり、男性の手に収まる。

勝手にページがめくられていき、やがてとまる。

「こいつらとの取引は終わりだ。」

ページを破ると、燃え、灰になり消えていく。


「新しい商人を探せ。どうせ、獣人など吐いて捨てるほどいる。」


「商会から逃れた獣人たちはみな、この町を目指しているようです。」


仄かに照らされた部屋で、男性がわずかに思案気な表情を作る。


「なるほど。ならば―――。」


影が男性の部屋から消え、再び静寂が訪れる。


男性は白紙のページをぺらりと開く。

その笑みは、醜く歪んでいた。


チッ チッ チッ


秒針が静かに刻まれる。


小高い丘の上に立つ建物から、一匹の烏が飛び立つ。

遥か上空から白い街並みを見下ろし、その目に獣人を映す。


様々な獣人の子供を引き連れた、狼人族の少女の姿を。


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