温かな転生
温かなぬくもりを感じて意識が覚醒した。
言いようのない心地よさがこそばゆい。
なんだこれ?
自分にも縁が無さ過ぎて。
はじめ、それがなにかわからなかった。
もっと意識がはっきりしてくると理解できた。
私がいま抱っこされているということを。
うすぼんやりとした視界の中、穏やかに笑う女性が見える。
その隣には、同じく幸せそうに笑う男性の姿。
きっと、両親だろう。
両親の愛情などうけたこともない。
そっと柔らかいものの上に降ろされる。
花のような、心地よい香りが全身を包みこむ。
ベッドでなんて寝たことがないので、この温もりがベッドであるという確証は抱けなかったが。
しばらくの間両親は私の顔を覗き込んで笑っていたが、やがてどこかに行ってしまう。
見えるのはぼんやりとした白い天井。
少し視線を動かすと、ベッドの柵が見える。
部屋はそれなりに広そうだ。
自分が知っている部屋なんて、物置のような部屋か牢屋ぐらいなものだ。
こんなふわふわなベッドでなんて寝たことがないし、明るい部屋も、日差しが差し込む部屋も知らない。
鼻をつく悪臭もない。
自然と涙が流れていた。
ぽろりとこぼれた涙が頬を伝って枕を濡らす。
前世、前前世の記憶を持ち、三度の転生。
私はついに幸福な家に転生することができた。
この温かな世界で、今度こそ私は幸せになれる……!