奴隷として
※暴力による残酷な描写があります。
ただただ絶望の毎日。
今日も殴られて、蹴られて、吐くものなんてなにもなく、胃液だけが流れる。
汚れた!と怒鳴られて、また殴られる。
ああ、今日は肋骨何本折られたのかな……。
激しく痛む肋骨を抑える……こともできない。両腕なんてとっくに使えなくなっている。
唯一、歩かせるための足だけは無事だが、なんの救いにもならない。
死にたい……死にたい……死にたい……。
助けなんて求めない。
助けを求めても、誰も助けてくれないのはわかっているから。
誰か……私を……殺して……。
なんのために生きているのか。
これは生きているといえるのか。
ただ死んでいないだけではないか。
毎日同じことを考える。
こんな時ばかりは簡単に死ねない自分が嫌になる。
なんでもっと弱い体じゃなかったのか。
もう動かなくなった、自分と同じ年ぐらいの子を何人も見てきた。
光を宿さない虚ろな瞳に、虚ろなあたしが映る。
羨ましい……。
この地獄から抜け出せるなら、きっと死んだ方がましだ。
あれから何日も過ぎ、何人もの子供が捨てられるのを見てきた。
そして、いよいよあたしの番になったようだ。
その日は意識を戻した時からおかしかった。
誰かの言い合う声。罵声、怒声が牢まで響いてくる。
一つの破壊音が響き、半分機能していない耳が甲高く鳴る。
荒々しく鉄の扉が開かれ、重厚なドアが力任せに閉じられる。
一瞬入ってきた光は、またすぐ暗闇へと飲み込まれる。
揺らめく火の光が細長い影と、騒々しい足音を連れてくる。
影はあたしの牢の前で止まり、ガチャリと鍵が外されて、肥え太った男が入ってくる。
あたしたちの所有主。
きっとまたなにか気に食わないことでもあったのだろう。
冷たい地面に横たわるあたしの髪を掴んで無理やり立たせる。
ふぅー……!ふぅー……!
不快な、生ぬるい風があたしの頬を撫でる。
突如、お腹に激痛が走った。
「ぐっ……!」
くぐもった悲鳴が漏れ、ジュっと肉の焼ける臭い。意識が飛びかけて痛みでまた覚醒する繰り返し。
掴まれていた手が離れ、地面に落ちる。石の冷たさを求めて、お腹を地面につける。
その時ようやく自分は、所有者に火を押し付けられたことがわかった。
文字通り、焼けた痛み。
じわじわと浸透してくる痛みは、ましになる気配がない。
「どいつもこいつも儂を馬鹿にしおって……!」
横腹を蹴とばされ、仰向けに転がる。
「貴様も!いつまで生きているつもりだ!儂の暴力など効かんと、そういうことか!」
なにを言っているのか、なにに怒っているのかわからない。
罵られるままに殴られ、蹴られ、焼かれ……。
あ、これは、ダメだ……。
どんどん痛みが無くなっていく。声も聞こえなくなる。
なにも感じない。
眠い。
もう、いいよね……。
薄れゆく意識の中、私はかすかに声を聞いた。
「ん?ああ、ついに死んだか……おい、どっかに捨ててこい。」
私の人生は、奴隷として、最後にはゴミとして捨てられた。
それでいい。
この地獄から抜け出せるのなら……。