覚悟
ここ数ヶ月は平和な日々を送っている。
俺も弟も護衛の仕事は順調だ。
そんな中レベッカに変化が起きた。
「私妊娠したみたい」
俺はコップを盛大に落としてしまった。
ダンも一瞬食べるのをやめた。
気が付けば瞬きせずに涙を流していた。
人前どころか泣くことすら今まで無かった‥。
「おめでとう2人とも!この歳でおじさんか〜」
気を遣ってダンが盛り上げてくれるが喉が詰まって喋れない。
「貴方の子よ。嬉しくないの?」
俺は勢いよく首をふる。
「そう。ありがとう。いずれ産休を取るわ」
それからいつも通りレベッカは出勤した。
気がつけば俺は時間ギリギリだった。
涙を拭いてトラックを走らせる。
いかんな、仕事でミスをしそうだ。
前もって貯金をしておいて良かった。
これから大変になるぞ。
もしかしたら俺はこんな日々を夢みて来たのかもしれない。未だに現実と思えない。
後日レベッカと病院へ行った。
どうやら本当らしい。
来年出産予定だ。
簡単に死ねないんじゃない!
死んではならないんだ俺は!!
これまでは命のやりとりを戦場や旅で経験してきた。
単純な怖さは最初の召集だけだった。
独り身の時は死んでも仕方ないと割り切っていた。
今は違う。
死んだら家族が路頭に迷う。
その為に死ねないんだ。
俺の意識はガラッと変わった。
だが銃は手放せない生き方だ。慎重になる。
いつだったか漁師のナジが言っていた言葉を反芻する。こういう事か‥。
それからは仕事に励む姿勢が少し変わった。
休める時は休む。周りの護衛や運転手にも気を配る。
いつしか口数も増えてきた。
もう迷わなくていい。生きるだけだ。
そして父になる。




