駆除
俺は宿に停めてあるトラックでハンスの家に向かった。
職場の往復とレベッカの家に行く以外で使うのは珍しい。
「ジャン先生!」
「おう」
ハンスとその両親が暖かく迎えてくれた。
「お越しいただきありがとうございます」
「生徒の頼みですからね‥」
柄にも無い事を言う自分に少し驚く。
保安官たちが来るまで装備を確認しておく。
例の単眼鏡も持って来た。観察に使う。
早速畑を見させて貰う。
かなり衝撃的な光景だった‥
広い小麦畑の一部がぶさぶさになっており他の畑よりドス黒い色になっていた。
その周りをやたらデカいバッタが大量にひしめいていた。
ピョンピョン跳ねる。10メートルくらい跳んでいる。
後ろから馬の蹄の音が聞こえてくる。
レベッカが数名の保安官を連れてやって来た。
保安官は伝統的に馬で移動している。
路面電車と並走している姿は似合わない。
「お待たせ、凄いわねアレ」
「アレはキモいな‥」
「今日中に終わるか?」
保安官は若い男性2人が応援に来ていた。
「しかし本物のジャンに会えるとは感激だよ!」
「俺は射撃場にいつもいるぞ?珍しくは無いからな」
「もうちょっと愛想良くすれば良いのに‥」
仕方ないだろ。生まれ持った性分だ。
保安官たちから銃を受け取る。
トレンチガン。いわゆるショットガンだ。
ポンプアクション式で装弾数5発。今回は12番の弾を大量に持って来て貰った。
ハンスの父はやや古い水平二連銃をはじめから持っていた。
害獣駆除で偶に使うらしいが得体のしれない昆虫にはまだ使っていない。
怒らせて返り討ちになっては元も子もないからな。
多勢に無勢だ。
俺•保安官3人•ハンスと父の6人で立ち向かう。
トレンチガンはハンス父以外が装備した。
ハンスの母は自宅で待機してもらっている。
弾をこめ、肩に大量の散弾をぶら下げる。
用意は出来た。
まず始めに俺とレベッカで試しに撃ってみる。
後方には4人が様子を見ている。
バーン!シャキ!バーン!シャキ!
散弾が小麦畑に響く。
距離は2,30メートルくらいか?
音にビビって周りのバッタがピョンピョン跳ねる。
キモすぎる光景に後退りする。
撃てば散り散りになるのが厄介だ。
散弾自体は効果ありだ。2匹倒した。
「飛び跳ねた奴は俺が撃ち落とす。余裕があれば皆んなもやってくれ」
「分かったわ。皆んな宜しくね」
大討伐が始まった。各々が適当な目標を見つけてショットガンを撃ちまくる。
当然跳ねまくる。空中に跳ねたバッタをクレー射撃の要領で撃ち落とす。
辺りには銃声とバッタの体液が広がる。
バッタ集団がゾロゾロ前進してきた。
本能で俺たちを敵認識したのだろう。
ショットガンのリロードは時間がかかる。
間に合わずに足元に来たバッタをマニューリンで吹き飛ばす。その繰り返しだ。
農場は広いため幾らでも後ろに下がれる。
後退しながら応戦して暫くたった。
バッタ集団に切れ目が出た。それでもまだ100匹くらいいる。エグい数だ。
レベッカやハンスも中々上手く捌いている。
ハンス父は2発しか入らない銃にイライラしている。
1人で対処していたら間違いなく飲まれていたな。
ようやく残り30匹くらいになった。皆んなバッタの体液で服が茶色に染まっている。臭い。
ハンス父の髪の毛にどでかいバッタの足が突き刺さっている。
「保安官。トレンチガンを貸してくれ!!」
ハンス父はブチギレて残りを全て倒した。
バッタを倒した後は皆肩が外れそうになっていた。
射撃競技でもこれほど連射はしないだろう。
トレンチガンの銃口にタバコを近づけて一服する保安官もいた。
まだ散らばった数匹がいるだろう。手分けして倒していく。そんな時、ハンスの悲鳴が響いた。
「離れろ!離れろ!」
バッタに言葉は通じない。バッタがハンスに馬乗りになっている。
皆ショットガンの為迂闊に撃てない!
俺の出番か‥。
10メートルほど近づきマニューリンを構える。
狙うは頭部だ。
長い触覚とギラギラした両目が銃身に重なる。
ズガーン!! ベチャ!
「ゲボゲボ、クセ〜!」
一瞬静まり帰ってから一同笑った。
チョイグロすみません。




