真の目的
「ブルーランドではな、決闘のやり方が違うんだぜ?」
俺たちは今屋外に来ている。
廃工場の隣にある誰もいない空き地だ。
「弾をこめて互いが背中合わせになる。お互いに歩調を合わせて進む。10歩すぎたら決着だ!」
なるほど。小賢しい連中が思いつきそうなやり方だ。
正面から堂々としないあたりが何とも言えん。
お互いにスチェッキンを装備しているが見た目が違う。
ジャックは普通のピストルと同じ状態だ。
俺はグリップにストックを着けている。
マシンピストル的運用がしやすいようにホルスターがストックになるように設計されているからだ。
この時俺は辺りを見まわした。
障害物が何一つ無い。
これは一瞬で決まるな‥
「行くぜ英雄」
「わかった‥」
ツッコむ暇はない。
1、2、3‥
5歩過ぎた辺りで妙な違和感を覚えたが気付かないフリをする。
相手は片足を負傷している筈だが‥
9、10!
俺は素早く振り返ると同時に伏せた!
案の定奴は既にこちらを向いて構えており、腰だめで連射してきた!
ドロロロ!!
あと1歩で蜂の巣だった。
伏せ撃ちで正確に足を狙う。
ダン!!
「イギ〜〜!!」
両足をやられて真正面から倒れ込む。
顔は砂だらけだ。
そのまま鬼の形相で銃口を向けてきた。
構わず発砲する。
奴のスチェッキンは火花を散らして飛んで行った。
「お前!!殺す!!」
当たり前の事を叫んでナイフが飛び出した!
早い!
投げナイフをスチェッキンのストックで受け止める。
引き抜いて奴の右手に投げ返す。
「アガッ!!」
死にはしないが暫く銃は握れまい。
近づいて両手を縛る。
ついでに手足に応急処置をする。
「ズルをしてまで勝とうとした。本当の理由を教えろ、ジャック」
「俺の家族はな‥アントンに殺されたんだ‥」
「いつの話だ?」
「俺がまだクソガキの頃だ‥小銃と手榴弾ばかりの時代だ。村がデザートストーンに襲撃された」
奴の話では我が軍がゲリラ掃討作戦でブルーランドの村を焼き討ちにしたらしい。
銃剣と手榴弾で家族を殺されたらしい。
身体が小さかったジャックは陰に隠れて生き延びたらしい。
その時の兵士がアントンだった訳だ。
他の兵士が名前で呼んでいたのを聞いていた。
顔と名前を覚えて復讐に燃えていたらしい。
俺が戦場でこいつの勇猛さを耳にしていた頃もずっと探していたらしい。
だが既にアントンは政界入りを果たしており、その事実を知ったのは8年前だと言う。
それからブルーランドの特殊部隊を辞めてフリーの殺し屋になった。
一度は諦めた復讐だったが、思いがけずこの話しが舞い込んだ。
「俺も兵隊上がりだ。気持ちは痛いほど分かる。だがそっちもこっちもお互い様だ。似たような話は両国からいくらでもでてくるぞ!」
「そんな事は百も承知だぜ‥別に国なんか好きじゃない‥だが本能が諦めないんだ‥それにこの足じゃな‥」
「俺を殺して名を残し、あわよくばもう一度チャンスを伺ったというところか?」
「欲をかきすぎたな、少し眠る‥」
それからジャックは息を引き取った。
決して銃弾による出血だけでは無い。
精一杯、奴なりに生きたのだろう。
廃工場の連中に金を弾んで遺体を丁寧に運び出した。
何処へ行っても戦争の爪痕は残るな‥




