潜入
顔役に手紙を渡した後に俺は廃工場へと向かった。
どうやら話は既に通っているみたいだ。
腰のガバメントのみが頼りだ。
「あんたがジャン•リーンだな?着いてきな」
黙って従う。銃を取り上げないのは何故だ?
錆びついた柱や崩れたコンクリート壁が至る所にある。意外にも生活出来るレベルの賑わいはある。
屋台•賭場•売春•偽札工房•麻薬‥数え上げたらキリがないくらいの密度だ。
ボロい服を纏いドラム缶に焚き火を組んでいる連中が多い。行く先々で好奇の目で見られる。
だが誰も手出しして来ない。
「この通路からは1人で行け‥」
それだけ言って案内役は過ぎていった。
カチッ‥
通路の影に数名潜んでいる。
音や視覚だけじゃない。殺気だ!
素早くジグザグに走り回る!
ピストルがあらゆる方向から銃撃してくる!
銃声が廃工場に反響する。
ズパーン!!ズパーン!!
ダン!ダン!
ピキーン!
薄暗い通路で銃火だけがはっきりと分かる。
3人だ。
走りながらガバメントを抜く。
前転した後に地面に足を伸ばした状態で発砲する。
バン!!バン!!
1人倒した。
受け身の姿勢から体の向きを横にズラす。
バン!!バン!!バン!!
2人目。
そのままゴロゴロと転がる。
ズパーン!!ズパーン!!
ピストルの弾丸が近くを掠めるが問題は無い。
伏せ撃ちで2発発砲。全員を倒した。
素早くリロードをする。
起き上がって一度物陰に隠れる。
どうやら刺客は来ないようだ。
真っ直ぐ道を進む。
しばらくしてテンガロンハットとロングコートのシルエットが浮かび上がる。
「待ってたぜ、ジャン。来な!」
ガバメントは剥き出しのまま着いていく。
こじんまりとした部屋に通された。
内装や調度品は割と綺麗だ。
「本物かどうか試したのさ。まぁ一杯付き合え!」
「酒は飲まない。手元が狂う」
「勿体ねーなぁ。勝手に飲むぜ!」
グビグビと安いウィスキーをあおるジャック。
「死ぬ気も無いが見逃す気もない」
「まぁそう焦るな。この通り片足は使えん。逃げ切るのも限界だ」
「俺に何の用だ?」
「フェアな戦いをしたいのさ。どっちが死んでも恨みっこ無しだぜ?」
「じゃあ俺が死んだら自首するか?」
あまり意味のない質問をしてみる。
「あぁ喜んでな」
「ルールは?」
「ケッ!お前は知りたく無いのか?なぜアントンを狙っているかを」
「話したきゃ話せ。どの道政治絡みだろ?」
「ギヒャハハハハ!」
それからジャックはマイペースに語り始めた。
面倒だから要約する。
やはり元ブルーランド兵士で間違い無いみたいだ。
戦場では敵無しと恐れられていた。
現在はフリーの殺し屋をしている。
ダムでは新型の対物ライフルを使用していた。
太陽を背にしなかったのは武器の優位性を確かめる為だ。普通の護衛に対物ライフルなど配備されていないからだ。
楽に終わるとみていたが俺たちの連携が上手かった事と俺のモーゼルの精度に驚いていた。
国からの依頼など最早どうでも良くなり単純に戦ってみたくなった訳だ。
「あくまでフリーだ。大金を無くそうが、国からお咎め受けようが知らん!やりたいようにやって死ぬ」
戦争上がりや特殊部隊出身はどこかネジがぶっ飛んでいる。
「ハジキはコイツだ!」
2丁のスチェッキンを机の上に投げた。
ブルーランドの銃は偶に撃つくらいだ。
「それにな!コイツを左眼につけろ」
眼帯を用意していた。コイツ割と根に持ってるな。
「分かった。やるしかないだろう」
俺たち2人は部屋を後にした。




