片眼のジャック
隻眼の男が逃走してから半月。
秘密警察と政府が威信をかけて追跡した。
やはり首都だけありその包囲網を完全に振り切る事は出来ないみたいだ。
アントンの護衛は客船で関わりのあった別のSPが担当していた。そこに再び奴が現れた。
秘密警察とSPが何重にも張り巡らした防御によって負傷させる事に成功した。
手負の獣ほど危険な者は無い。
片足を引きづりながら廃工場地帯に逃げ込んだ。
ここは犯罪者やホームレスなどがたむろしている事が多い。
政府に恨みを持つ連中ばかりなので捜査が思うように進まない。庇い立てすれば逮捕すると言っても通用しない。
しばらく続けていたが完全に政府の人間の顔を覚えられてしまい、逆に脅迫めいた態度を取られてしまった。
部隊を交代させるしか無いと上層部は判断した。
それから数日して廃工場の顔役から秘密警察宛にメッセージが届いた。
なんと隻眼の男が要求をしてきたのだ。
これは好機と内容を飲む事にした。
闇取引もここまで来たか。
「それでなんでまた俺たちなんだよ〜?」
ザックが怠そうにする。分からんでも無い。
「正確には俺たちの1人に用があるらしい‥」
バートは俺の目を見て話してきた。
「アンタのそれはもはや天命だね」
マチルダも諦め気味だ。
「内容を知りたい‥」
知りたくは無いが避けて通れない。
「今から文章を読み上げるぞ」
“秘密警察と愉快な仲間たちへ”
『追っかけご苦労さん。知っての通り片足を撃たれた。マグレに等しいがな。あれだけの日数と人員でただの男を殺せないとは呆れたぜ。だがお前らの中に一人だけ凄腕がいるな。そいつとサシで勝負したい。ダムで俺の片眼をぶち抜いた野郎だ。俺はここで待ってるぜ。
片眼のジャック 』
独特の文章で要件を伝えて来た。
待てよ、俺はコイツを知っているかも知れない。
かつての召集でブルーランドと戦った時だ。
我が軍の観測兵が敵スナイパーに立て続けに狙われた事があった。
狙撃銃やサブマシンガンを巧に操る者の渾名は
《殺しのジャック》だ。
もしかしたらそいつかもしれない。
「そいつ宛に手紙を書く。出来らたバートに渡す。廃工場の顔役に渡して欲しい」
「死ぬぞ!‥とはいえそれ以外無さそうだな‥」
妙な因果だ。お互い戦争など終わったはずなのにな。
こうしていつも以上に武器を磨いて備えておいた。




