隻眼
アントン副総理襲撃は国内の警備体制に大きく影響した。
これまでも護衛者•保安官は訓練と武装を行い事件に対処してきた。
しかし高性能な武器や戦術がこれまでの規範を越えようとしている。
安全地帯だろうが何処だろうが重武装で守らなくてはならなくなった。
保安官の装備は軍隊などに準じるように手続きが行われるようだ。どの様になるかは未定だ。
そして俺たち護衛は一部権限を拡大して武器の無制限使用が可能になった。
下手をすれば軍隊も圧倒するような装備編成になるだろう。平和が遠退いていく。
戦場にでなくとも俺の定めは変えられないようだ。
あれから暫くは事件が起きなかった。
銃撃事件は徐々に忘れ去られようとしていた。
とある酒場にて。
「いらっしゃい!」
「ウィスキー‥」
「はいよ」
大きなテンガロンハットに長めのコートを羽織りカウンターに座る男。
頬には弾丸を掠めた古い傷痕がある。
一番の特徴は目だ。
左眼に眼帯をはめている。
「最近は物騒だな‥」
「そりゃあアントンが狙われたしな〜。犯人も政治絡みなのかキチガイなのか分からないからな〜」
「フッ、キチガイかもな」
それから黙って酒を飲み続けた。
ニューストン含めて戦場で負傷した男性は多い。
手足や目、顎の無い人は珍しく無い。
とりわけ酒場ではよく見る光景だ。
誰もその身なりに疑問は抱かない。
その酒場の前を秘密警察が取り囲んでいる。
入り口は誰も通れない。
店にいる客は気付いていない。一人をのぞいて。
裏口にも数名が待機している。
「準備完了です」
「いらっしゃい!‥え!?」
「そこのカウンターの男!ちょっと来てもらおうか?拒否権は無い!」
「そうかな?」
ドロロロ!!
後ろ向きのままコートの下から銃を乱射した。
まさかの攻撃に店内にいた秘密警察は全滅した。
長いコートは穴だらけだ。
「勿体ね〜な。親父お勘定!」
カウンターに札束を置いて裏口へ向かった。
一瞬の出来事に皆呆気に取られていた。
裏口のドアを開ける前にワザとドアノブをガチャガチャと回した。
その瞬間扉は蜂の巣になった。
男はコートのしたから銃を取り出して弾倉をこめ直した。
スチェッキンピストル。
以前にレベッカが対峙したストーカーが所持していた物だ。ブルーランドの特殊部隊が使っているが今ではやや古い扱いだ。
大型の自動拳銃で単射/連射の切り替えが可能だ。
男は素早く銃を発砲した。
ドロロ!ドロロ!
左右の壁にそれぞれ連射した。
裏口の壁は古く、銃弾は簡単に貫通した。
外では倒れる音が聞こえた。
平然と裏口から男は闇夜に消えた。
「以上が秘密警察からの報告だ。あと一歩だったが死者を出して逃げられた。引き続き捜査はするだろうが厳しいな」
バートがブリーフィングで事件を解説する。
とうとうニューストンも地方と同レベルになったな。
「あれだけの警備や取締りも効かないのは納得いかないね!」
マチルダが愚痴を溢す。全くだ。
「しかもスチェッキンだろ?またブルーランドかよ」
ザックも呆れている。
「片目の傷はいつの物だろうな?」
どうでも良い疑問を俺はぶつけた。
「少し瘡蓋があったからわりかし最近だそうだ」
バートから補足が入る。
まさかな‥?




