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博打英雄  作者: 海川鮮魚
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第三話 魔力と感覚

 夢を見た。夢の中では温かな日差しの中、少年と少女が花畑で楽しげに遊んでいる。花の冠を作ったり、二人でかくれんぼをしたり

まるで世界にはその二人しかいないような感じさえした。

辺りが夕焼け色に染まり出した頃、少女が少年に語りかけた。


「ねぇ七三くん、お願いがあるのーーー」


少女がそう口にしたところで夢から覚めた。


「またこの夢か...」


最近妙にリアルな全く同じ夢を見る。夢の中の少女に関してはほとんど覚えていない。夢から覚めるとさっきまで見ていた夢に霧がかかるような感じがして、その子の顔も声音もあの時何て言ったのかも分からない。


ただその子が『シオン』という名前だったことだけは不思議と明確に覚えている。


そもそも夢に出てくる頃の俺は毎日と言っていいほど親友の結城海と遊んでいた。なのに夢では海は出てこず俺はシオンと名乗る少女とよく遊んでいる。


「まぁ夢のことを真剣に考えているほど今は余裕無いか」


俺は昨日車に撥ねられて死んだ。それなのに俺は今こうして宿屋で朝を迎えている。目が覚めたとき死んだことも、あの世も、異世界も全部夢だったんじゃないかとも思ったが部屋の窓から外を見てすぐに全部本当のことだったと理解した。

前の世界では無かったような街並み、武器を持って歩く人たち、そして何より昨日この世界に来て実感した魔力という感じたこともない力


目の前に映る光景も体感する魔力も全て現実だということを教えてくれる


「とりあえず今日の予定を決めるか」


昨日この世界に来てすぐにある程度のこの世界の常識を学んだが、それでもまだ分からない事は多々ある。だがそれよりもまず俺は持って生まれた自分のスキルについてより詳しく調べることにした。

宿屋を出てすぐに俺は昨日初めてこの世界に降り立った草原へ向かった。


昨日街へ向かう際、草原に何匹かのゲル状の動く生物を見つけ、その場でダチュラから貰った本で調べてみたが案の定というかスライムという名前の魔物らしい。

スライムの特徴は打撃に少しだけ強くゲル状の体の中にピンポン玉より一回り大きい核を有しており、核を破壊すれば死ぬ。

魔物なので当然人に襲い掛かるが武器を持っていれば一般の人でも難なく対処できるという。


ダチュラから渡されたバックの中に鞘に収まった短剣が入っていたので安全面も大丈夫だろうと思いとりあえずスキルの実験には最適ということでスライム相手に試してみることにした。

だがやはり改めて自分のスキルのことを考えてみたが


「どう考えてもヒーローとして程遠いような能力だよな...まぁ物は試しか」


さっそくスキルを使ってみることにした。最初はどうやって発動すればいいのかとも考えていたが使おうと思い立った瞬間、まるで呼吸をするかの様に自然に使うことができた。


『願運博戯・東』


「これでスキルは使えてるんだよな...」


確か『東』は相手を攻撃した際に319.7分の1を抽選し当たればその後10回攻撃の威力が上がり魔力が回復するというものだったはず


そう思い俺はスライムを剣で攻撃した。剣がスライムのゲル状の体を切った途端頭上に0〜9の数字が回転する3桁の画面が浮かび上がった。

その後すぐに数字は『2 7 6』で止まりその後すぐ画面は消えた。


俺はその後スライムの核を傷つけないようにゲル状の部分を30回程度切りいくつかの能力の条件が分かった。


一つ、攻撃するたびに数字のルーレットの下にストックが溜まっていきストックを消費することで自動で抽選がされる。

二つ、ストックの上限は5つまででそれ以降の攻撃は魔力が消費される事はない。


それとスキルの発動は俺自身の魔力の10%ほどを消費し『東』の効果による攻撃では一度につき魔力の0.5%ほどを消費することも分かった。


「後は当たりを引いた時の効果だな」


そう呟いたと同時に後ろの方からに全身に鳥肌が立つような威圧感を感じた。一度死を経験したらからこそ研ぎ澄まされた死への直感が全身に危険信号を出している。振り返ると数十メートルは離れているであろう場所から巨大な犬のような見た目をした生物がこちらを睨みつけていた。

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