#22 婚活動
「学校教育修了したら、卒業からの結婚だろー? 在学中には嫁さん決めときたいけどなぁ」
「ヒラタちんはどんな感じよ?」
「NAITEAが薦めてくる子、4人は会ってみてるけど、なんだかなぁって感じ」
「うぉっ! 4人も? やるじゃん! なんだかなぁってなんですよ」
「決め手に欠けるらしいよ。ヒラタってば、合同授業で一緒になった子とか、廊下ですれ違った子にまで目移りしてるんだよ」
「えぇー?! 声かけちゃうわけ? 前世紀の人みたいじゃん」
ミワの爆弾リークにユウキは素で驚いたみたいだ。
俺も思わずヒラタとミワの顔を交互に見てしまった。
今朝、ちょうどオオヌキとの会話でも出てきた、「ナンパ」と呼ばれた行為。
そんなこと、やる奴なんていない。
言葉と同様に廃れて、既に歴史だ。
ヒラタは顔も四角いし、ゴツい男々しいタイプだから、そんなこともやってしまうのか?
「かけねぇよ。俺どんだけよ、そんな男いたら通報されるわ。ミワも誤解生む言い方止めれ」
「えー俺嘘も誇張も言ってないしー。目に入る女の子全部ヒラタ評始めては俺に言ってくる、て言えば良いわけ?」
「え゛、それも結構キワドくない?」
「言葉で聞くとヤバいな。ミワ、それ二度と口に出すな。女に聞かれたら俺は終わる」
「そんなヘマするわけ、ナイカラ・ジョーダンっ!!」
「スーパーダンク出たぁ!」
「あのさぁー、一緒に言ってると思われて俺も終わるんですけど。今まで独りハラハラしてた俺の立場分からない?」
「ぐっ、その時言えよぉー」
「言ったよーぉ」
テンポの良い二人の掛け合いに、ユウキがぶはっっと笑い出した。
すごい、ジョーダンネタにちゃんとツッコミ入ってた!
「もーっほんと仲良いよなお前たち!」
「学校帰り俺んちで遊ぶ仲だからな。ユウキも暇な時来ていいよ」
「まぢ? お誘いサンキュー」
「ヒラタが話すネタ、女の話ばっかだけどね」
「キテますなぁ~。ミワは? 嫁さん探ししてんの?」
「俺はたぶん、もう決まり」
「まぢか!」
「NAITEAのオススメの二人と会って、良い感じっぽい方が、向こうも良い感じっぽいんだよね。だから、ずっと連絡取ってる。多分来年か再来年には婚約するんじゃないかなぁ」
可能性としてはない話ではない。
けれど実際に当事者を目の前にすると、サラッと話すミワを本当かとまじまじ見てしまう。
自分とは違い、凄く先を進んでいることになんだかドキドキする。
ふわふわ揺れるキノコ頭が急に大人びて見えた。
ユウキもなんだかミワを見る目が変わったような気がする?
少子化対策の一つと言われているが、俺らは皆、学校を卒業と同時に結婚することになっている。
相手を自分で決められる猶予は、卒業から一年間。
それを過ぎると、国が決めた相手と強制的に婚姻することになる。
大抵の人間が、自分で決めた相手と結婚したいみたいで、在学中から相手探しを始めるのだ。
「ヒラタちんががっついてるのはミワちんの影響?」
「「いや、そうではない」ね」
ヒラタとミワが声を被らせた。
ユウキはハズレたか、と気まずそうな笑いを俺に投げて、
「そうなんだ」
と相槌を打った。
「俺は結構前からだから。そーゆうユウキは?」
「サクマグループともなると、別システムだったりするのか? 親同士で決めた婚約者だとか、家繋がりで候補がどっさりいるとか」
確かに、と俺も興味がわいた。
特別な奴は特別な人間同士で結婚するようになってるんだろうか?
「んー……正直なところは、俺も良くわからないんだよねぇ。親は何か考えてるとは思うんだけど、NAITEA以外の誰かを紹介されたりってことはないし。卒業まで後三年になった時に、そろそろ婚活動を始める時期だからお前も始めとけ、て言われたくらいかなぁ」
「へぇー、なんか意外」
「だな。まぁ、NAITEAはサクマグループに釣り合いのとれる女をお薦めするんだろ。俺もどこぞのご令嬢に婿入りとかどうかなって思ったことあるけど、お薦めに出てきたことねぇわ」
「ヒラタはご令嬢の婿って感じじゃないでしょー」
「どっちかっていったらミワちんの方が適性ありそうだよな」
「俺は無理だねー。タドコロさんとかじゃない? 務まりそうなの。我慢耐性強そうじゃん」
急に話題を振られた。
俺? 我慢耐性?
ミワは髪をふわふわさせながらニヤニヤ俺の返答を待って……はいないか。
どうしたものかとユウキに目で訴えると、ユウキはニッコリと笑みを返した。
「タドコロはどーなの? 婚活動、始めてる?」
…… タドコロが喋る番、か。
俺は頭の中に飛び交ういろんな考えに折り合いをつけて、深く一呼吸した。




