初めての気持ち(new)
家に帰るなりいきなり自分の部屋に行きベットの上に飛び込んだ。いつもは制服のままそんなことは絶対にしない。
だが今日はそんなこと気にならないくらいに嬉しいことがあった。
やっと、やっとだ。
♦ ♦ ♦ ♦
私が彼と初めて会ったのは一年前だ。
生徒会長に就任し初めての生徒会会議の議題で挙げられた倉庫の整理を行っていた。
倉庫は全部で3つあり生徒会役員全員で手分けして片付けを行うという形になり私は一人で片づけを行っていた。
すると北里先生が来た。隣には一人の男子生徒がいた。
北里先生に連れられてきた彼はとてもやる気がなさそうにしていた。無理やり連れてこられたのだろう。
先生は私に彼と一緒にやって終わらせるようにとだけ伝え戻っていった。
「ここは私一人で十分だから他を手伝うなり帰るなりしてもらっても構わないよ」
私は彼にそう伝えた。
すると彼は私の言葉が聞こえていないのか片づけを始めた。
「えっと、大丈夫だから君は帰ってもらっても...」
そこまで言うと私の言葉にかぶせるように彼が言った。
「この量を一人でやるって疲れるし時間もかかりますよね?どうせここまで来たんだから手伝いますよ」
そう言って彼は黙々と片づけをする。表情は相変わらずめんどくさそうにしているが。
手伝ってくれるというならお言葉に甘えよう。
黙々と片づけをしている間、私がある事を考えていた。
なんでこの子は帰らないんだろうか。
この時私はある可能性を考えていた。
私は自分で言うのもあれだがすごくモテる。告白も何度断ってきたかわからないくらい。
そのどれもほとんど話したことがない男子からの告白だ。話したことがあると言っても隣の席になり挨拶を交わす程度のものだ。
私の見た目だけで告白をしてくるということは私よりもかわいい人が現れたら私よりもその人を好きになるということだ。だから私は人を見た目では判断したくない。そう決めてる。
だがこの子はどうだろうか。無理やり連れてこられて面倒なことを押し付けられて素直にやる人は限られてくる。
この子はそうなのだろうか。私に近づくために残っているんじゃないんだろうか。
そんなことを考えてやっていたからだろう上から落ちてくる物に気が付かなかった。
「ッ!危ない!?」
彼の言葉が聞こえた時にはもう目の前に迫っていた。このまま直撃したら大けがだろう。だが避ける事もできずに目をつぶることしかできなかった。
すると腕が引っ張られる感覚があった。
ガッシャーン!
物が落ちてものすごい音がした。おそるおそる目を開けると目の前には彼の顔があった。
彼が咄嗟に私を引っ張ってくれたのだろう。おかげでけがをすることはなかった。
「あ、ありがとう」
「どういたしまして」
そのあと先生たちが駆けつけてことの経緯を話し今日は解散となった。
私は彼に改めてお礼をした。
「あ、あの!今日はありがとう!」
「あぁ、気にしないでください」
「何かお礼を...」
ここまで言って気が付いた。少し無理なお願いをされてもこの状況じゃ断る事が出来ない。だが何もしないのは嫌だしなどと考えているとそんな考えも杞憂に終わる。
「別にいらないです」
「え?」
「お礼がほしくて助けたわけじゃないですからね。無事でよかったです」
そう言って笑う彼の顔は今まで見てきた男の子の中で一番魅力的で忘れることが出来なかった。
それからの学校生活は楽しかった。彼を見つけるたびに嬉しくなったりたまに話すときには舞い上がってしまって変な事を言ってしまうこともあった。
過ごしていく中で私の中にあるこの感情はだんだん大きくなっていった。
自覚してからが早かった。私は...。
♦ ♦ ♦ ♦
いつのまにか寝ていたようだ。窓から見える外の景色はもう日がすっかり落ちており真っ暗だ。
近くに置いてあったスマホの画面にある名前を確認して夢ではないと実感できる。
ようやく一歩近づく事が出来た。初めて抱くこの気持ちに嘘は必要ない。
今はまだ画面に映る名前にしか言えないこの言葉をいつか...。
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