二度目の入学式(改)
「わが校は文武両道の精神のもと全校生徒には必ず部活に入ってもらうことになっています。体を動かすことと勉強をすることは決して無関係ではなく......」
どこかで聞いたことのある言葉を聞き流しながらあくびを噛み殺していた。相変わらずつまらん。
高校生になり二度目の入学式を体験している。
俺は高校二年生になった。去年は前に並び高校生活に胸を躍らせていた者たちももう先輩という立場になったのだ。
「今年の新入生代表の子、めっちゃかわいくなかったか?」
「あ、それ俺も思った!!やっぱりこの学校の女の子のレベル高いよな」
そんな会話が聞こえてきた。君たちは相変わらずで何よりだよ。
たしかにこの学校の女子たちはみんなレベルが高く今年の新入生代表の子も確かにかわいかった。
だがそれだけだ。俺とはかかわることがないのだから。
入学式も無事終わり予定通り今日はこれで解散となった。各自所属している部活動に向かっていく。
新入生が来たので部活動勧誘が忙しいのだろう。みんな一斉に教室から出て行ってしまった。
その後を追うように俺も帰る準備を済ませ教室を後にした。
玄関に向かうため廊下を歩いているとあちらこちらから部活勧誘の声が聞こえてくる。
みんな新入生がほしくて必死だな~。まぁ頑張ってくれたまえ。
完全に他人事なのでその光景をアトラクション気分で眺めている。
玄関につき靴を履き替え校舎の中から出る。
するとある場所から野郎どものゴツイ声が俺の耳に届いた。周りにもかなりの野次馬もいる。
なんだ?と思い俺も野次馬の中に参加する。
するとそこには複数人の女の子を囲むような形で男たちが群がっていた。
「今マネージャー募集してて、どうかな」
「サッカー部のマネージャーも募集してるんだ。興味ない?」
「僕たち将棋部なんだけど、どうかな。君なんて将棋に向いてそうな顔してるね」
将棋に向いてそうな顔ってなんだよ。
顔の形が将棋の駒の形でもしてんのかよ。悪口だろそんなの。
そんなに女子がほしいものなのかね。俺には全く分からない感情だな。
ただの部活勧誘だったのでさっさと帰ってゲームしようと思い校門に向かって歩き出した。
それと同時ぐらいに群れの中から一人出てきた。いや、正確には飛び出してきた...俺の胸の中へ。
「きゃっ」
「おっと」
とっさに抱きかかえてしまった。
うわっ、めっちゃかわいい子だな。やっぱり今年もレベルが高いんだな。
「あ、あのもう大丈夫なので離してもらえると」
「あ、ごめん」
「いえ、こちらこそありがとうございました」
「気にするな」
彼女が俺から離れた。どこかで見たことがあるような顔だな。
こんなにかわいいなら忘れることもないと思うんだが。
「あ、あの!」
「はい!」
彼女が突然大声を上げる。
やべっ、じろじろ見過ぎたか。
「わ、私とどこかで...」
「え?」
彼女は小さな声で何かを言ったが周りの声にかき消され何と言っているのか聞き取れなかった。
聞き返そうとしたが後ろからもの凄い形相で男たちがこちらを見ている。もはや睨んでいる。
身の危険を感じたので早急にその場を離れることにした。
「じゃあ、俺は部活があるからこれで」
「あ」
あれ以上あの場に居たら何されるかわかったもんじゃない。あー、怖かった。
俺は宣言通り部活へと向かった。といっても家に向かっただけだけど。
きちんと部活をやり終えた俺はゲームの画面を起動した。
「やっぱり入学式はいいなー」