師匠(new)
これからもよろしくお願いします。
昼休みになり教室はにぎやかだ。そんな中俺は持ってきている弁当には手を付けず机に突っ伏している。
もちろん理由は昨日、一昨日の件である。
二日連続で十分な睡眠がとれていない。せめて昼休みだけでも寝ようと決めた。
すると突然校内放送が流れた。
ピンーポーンパンーポーン
『二年、湯沢和也君、生徒会室まで来なさい』
別に呼ばれるようなことは何一つしていないと思うのだが呼ばれたので仕方なく生徒会室に向かう。
フラフラになりながらも生徒会室の前までついた。ここまで来る途中やたらと視線を感じていたが気のせいだろう。
力が出ないため弱々しく扉をノックした。だが反応がない。聞こえていないのかと思いもう一度ノックをしたが返事がない。
勝手に開けるのはどうかと思ったが呼び出しておいていないということはないと思い勝手に開けた。
そこには北里先生がいた。真剣な表情で本を読んでいる。
「先生?」
声をかけても反応なしだ。声をかけてもノックしても気が付かない程真剣に読んでいる本のタイトルが気になり確認する。
その本の表紙には『イケメン男子との既成事実の作り方』と大々的に書かれている。ついにそこまで来たのかと一人で驚嘆していると先生が俺に気が付いた。
「っ!?ゆ、湯沢来ていたのか!声をかけてくれればいいのになっ!!」
と言いながら読んでいた本を俺に見えないように隠した。
「ノックもしましたし声もかけましたよ。でも先生が『イケメン男子との既成事実の作り方』を真剣に...」
「ああああああああぁぁぁぁ!!!」
急に先生が発声練習を始めた。
「おまっ、お前なに勝手に見てるんだよ!?訴えるぞ!!」
「こんなので訴えられないですよ。それに訴えられるのは先生の方じゃないですか」
「うっ」
「犯罪ですよ?」
そう言って後ろに隠してる本を指し言う。
「こ、これはだな!!両者合意の上でのことを前提としているのもでな...」
「両者合意なら既成事実とは言わないんですよ」
「...」
黙り込んで俯いてしまった。
「...こと...もん」
「なんです?」
「だってもうデートに誘って断られるのが嫌なんだもん!!」
先生が泣きながら愚痴を言い始めた。言葉遣いも普段と違うし相当心にきてるなこれ。
しかも口ぶりからすると結構最近にも断られたな。
目の前で崩れ落ちて泣いている先生を慰める。もはや恒例行事となっている。
だれかもらってあげてーーー!!
落ち着いたことを確認し用件は何か尋ねた。
「なに、ちょっと確認したいことがあってな」
「なんですか」
「お前、女子と連絡先交換したそうじゃないか」
先生にまで知られているとは。
いったいどこまで知られているんだ。
「ま、まぁしましたけど」
「どうやってそこまで進展したんだ!教えてくれ!」
「俺に聞かれても向こうから来たので何とも言えないですね」
「向こうからだとっ!?...私とはレベルが違う...」
事実を伝えると驚いたと思えば今度は落胆した。相変わらず表情が豊かだ。
すると急に顔を上げたかと思うと急に変なことを言い出した。
「湯沢、いや湯沢さん」
「はい?」
「いや、師匠!!」
勝手に師匠扱いされる。迷惑この上なしだ。
「急に何ですか」
「私にもそのテクニックを教えて下さい。お願いします」
男と無縁過ぎてついにおかしくなった。
そのあといつも通りに戻るまでいっぱい愚痴を聞かされた。
代償に俺の昼休みが無くなった。