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真二十一話 約束

 「……誰だい? それ?」


 「ッ! ごめん! 何でもない! 気にしないで」


 「……いや、気になり過ぎでしょ。ちょっと無理があるよ?」


 「うう……」


 私は仕方なく、『愛奈』について話し始めた。


 「……小さい頃ね、その『愛奈』って言う女の子がいたの──────








 愛奈は私が五歳の頃、当時引っ越した家の近くの公園に遊びに行った時に、砂山を作っていた私がスコップを持ってくるのを忘れて、どうしようかと悩んでいたら突然、彼女が自分のスコップを渡して来たのがきっかけだった。その頃の私は人見知りで、初めて会った愛奈にも警戒していたんだんだけど、すっかり忘れるくらい仲良くなったの。今はそのおかげで初めて会う人にも挨拶くらいは出来る様になったわ」


 「良い人だね」


 「それで?」


 「うん。それで、しばらく遊んでいたんだけど、急に遊べなくなっちゃって」


 「何で?」


 「……理由は彼女の身体にあったわ。私も後で知ったんだけど、愛奈は病気がちで、入退院を繰り返していたらしく、その日は検査で入院が決まった日だったわ」


 「でも、会えたんだよね?」


 「うん、そう。すぐに愛奈と会えたわ。ただ……」


 私は膝に掛かっていたブランケットをキュッと握ると、暗い表情のまま、話を続けた。


 「ただ──今までずっと笑顔だった彼女の表情は、私が見ても辛そうだった。だから、『お願い』したの!」


 私は何故かモグの手を両手で握ると、真剣な表情で彼女に言った。……何故この時、モグの手を握ったのかは、私には分からなかったが、何となく、そうして欲しいと、()()()()()()()()()()()のでそうした。そして、


 「私は夜空に向かって手を組んで願ったの。『私の命の半分を愛奈に分けて欲しい』……って」


 その瞬間、手を握られていたモグの肩がビクッと揺れた。恐らく強く握ってしまったのかもしれない。私が慌てて手を放すと、モグも自身の手を引っ込めた。


 「大丈夫、モグ? ごめん、ギュってし過ぎちゃった」


 「ッ! ううん! 大丈夫! ちょっと驚いただけだから……」


 話が途中で切れてしまったので、モグが続けるように私に促した。私もそれに答える。


 「それでその後、別の病院に移った愛奈を見送って、彼女とは別れたわ。で! さっきのモグに言ったのは、多分、走馬灯? みたいなものが多分見えて、思い出したから目の前にいるモグが愛奈にぼやけて見えた……的な?」


 「なるほどね……」


 「理由、分かった」


 二人が何とか納得してくれたので、こちらもホッとした。言わなかったが、半分は本当で、モグの正体が愛奈だったらいいな~……と思っていたのは、黙っておいた。と、長話が続いたが、大事な決闘の勝敗を私はアポロンに聞いておらず、「あ!」と叫ぶと、件の彼女に勝敗を尋ねた。すると、


 「シエテちゃんの勝ち。鱗は眠っている間に剣に入れた」


 「私の……勝ち!?」


 「よかったね、シーちゃん!」


 「うん! 後はマロー王を──」


 「その前に、アポロンからシエテちゃんにアーサからの伝言、預かっている」


 「アーサ王から!? 何て……」


 「各竜王を束ねし聖剣に選ばれたシエテちゃんを、【円卓の騎士団(ラウンズ・ディール)】団長に任命する」


 「円卓の……騎士団……!?」


 「だろうね。ミネルバがいないのは心もといが、仕方ない。鱗は手に入れているし、問題はないでしょ」


 「モモモモグ! わた、私はその……何を……?」


 「決まっているでしょ!」


 「え?」


 モグはその場に立ち上がると、首筋に親指をスッと走らせ、私にこう言った。




 「──────捕るんだよ。この世界を救いに。マロー王の首をさ、みんなと!」




 遂に、私達の反撃が始まった。



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