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新第十一話 湖の青年ヴィア

朝の光が街を照らしていく頃、私とモグ、セレンさんとアーサ王の四人がネヴィアの消えた大部屋に立っていた。正直、今すぐ椅子に座って休みたいところだけど、モグに聞きたい事が沢山あった。なので、


 「──さて、話してもらうわよ。賢者様」


 「ッ! そうだったね。全部話すよ。でも、その前に──」


 「その前に?」


 私がキョトンとしていると、アーサ王と共に来たセレンの目の前にモグが行くと、いきなり指を指し、怒鳴りつける。


 「セレン! 何故私と会わないんだ! こっちはずっと待っていたのに……ッ!」


 「その様な約束はしてなかったはずです。私はただ、あれを動かして欲しいと頼んだだけに過ぎません」


 「グギギ……。じゃ、じゃあシーちゃんを私に紹介したのは?」


 その問いには少しビクッとしたセレンだったが、コホンと咳払いし、モグに言う。


 「シ、シエテ様と出会えてよかったではありませんか? ぼっち賢者様」


 「意図的に私に紹介したってこと!? なんだ~。それを早くいいなよ~」


 バシバシと背中を叩くモグだったが、私にはセレンさんが意図的にその発言をした事を、彼女の顔を見て理解した。……モグには悪いが、そういうことにしておこう。


 「はあ~」とため息を吐きつつ、ネヴィアが消えた辺りを七回くらい唱えて出て来た【気配を感じるスキル】で隈なく見ていくと、一本のナイフがそれに反応した。手に取って良いものかと悩んでいると、セレンさんがやって来た。そしてそれを見て、


 「これは……」


 「ッ! セレンさん、何か見えるの?」


 「おや? お話していませんでしたか。私、実は白竜族の血を引いているので、闇のスキルには抵抗とそれを見破る力を持っています。……ご存知かと?」


 「……初耳なんですけど……」


 セレンさんが肩をすくめ、目線をそのナイフに戻す。そして何事もない様にひょいと拾い上げる。


 「ああっ! だ、大丈夫なのッ!?」


 「……これは侵──」


 「侵食のスキル……だね」


 「モグ! ……っと、王様は?」


 「あの方には街の守りや食料などの補充が必要かどうかを見てもらっているよ。それより……」


 「侵食のスキル?」


 「はい。黒竜族の民が使う事が多いスキルです。……しかし」


 「しかし?」


 「禁止されたはずなんだ。このスキルは悪用される事が多かったから、昔の黒竜族の長が禁止令を発令したんだ。今ではこのスキルの存在を知る人も少ないはず。……それが今になって何故……」


 モグがうーんと唸っていると、私が手を上げて発言する。別に上げる必要はなかったけど、雰囲気的に。


 「えーと、素直に、マロー王がそれを解除したとか?」


 「一理ある。……けど、それだけが目的ならミーヤ嬢を狙う理由が分からない」


 「た、確かに……」


 「彼に聞くのですか?」


 「彼? 誰の事?」


 「ん? ああ、えーと……」


 モグが口をモゴモゴしながら人差し指の先を合わせてモジモジする。


 「モグ、どうしたの? 早く言ってよ!」


 「そうだそうだー」


 セレンが棒読みで言う。何だろう?


 「彼は……えーと、ほら! 今、行方不明で──」


 「はあ……嘘ですね。彼の居場所は知っているでしょう。それに、シエテ様も会ったことがあります。これ以上ごまかしても無駄です」


 「え? どういう事? 私、そんな人知らないよ!?」


 「あーうん。一瞬だったからそう感じちゃうかもね~……」


 私が首を傾げていると、モグが観念した様子でその人物を答える。

 「ヴィア。私の恋人にして、弟子。そして──」


 モグが指でバーンと銃で撃つ。私が二度目に神様と話していた直前の記憶。つまり、


 ──「君を撃った彼の事だ」



              ◇



 ──……セレンがナイフを布で巻き、鎖と錠前でしっかりとロックしたそれをリュックに入れると、他の旅荷物をその上に積む。私とモグも準備が整った。


 「さて、行こうか。我が愛弟子に会いに」


 「その湖って遠いの?」


 「遠いと言えば遠いかな? こことは反対方向にあるから」


 「じゃあどうやってそこまで?」


 私がまたも首を傾げると、モグが得意げな顔で答えた。


 「もちろん、飛ぶのさ」


 「飛ぶって、お空──」


 シュッ!


 ──シュワン!


 「──を飛ぶってこと……って──……どこここ!?」


 「もう飛んだよ? 今着いた」


 私が「へ?」という顔をしたすぐ後、それは「えええええええええ……ッ!?」に変わった。


 「モグ……あなた、何したの?」


 「だから、飛んだのだよ、ただそれだけ」


 「私が想像していたのはもっとこう……羽が生えて~とか、宙に浮いて~とか」


 「ああ~うん、そういうのもあるんだけど、正直、面倒くさかったから」


 「面倒……臭い……だと……!?」


 私が迫真の演技でガクッと地面に両手を付き、どんよりする。


 「なんかごめんね、今からでも戻ってそうする?」


 「あ……うん、もうなんか、いいや……それより!」


 私はモグに約束させたモグの話を今一度聞いた。すると、今私達が立っている崖から下に見える目的の湖を指さしながら語り始めた。


 「──私が賢者と呼ばれるのは、そこに住む、ヴィアのおかげさ」




 「真名──【ヴィヴィアン】。彼と初めて会ったのもこの湖だった。この湖は別名《運命の湖》とも呼ばれていてね、当初の目的もこの湖の調査を隣国からお願いされたからなんだ」


 「湖の調査?」


 「うん。ここには昔、恐ろしい大蛇がいるんだ~! とか、絶世の美少女がいた~! とか、そんな話」


 「それで結果は?」


 「全部嘘! ……っと言いたかったんだけど……」


 「彼がいた」


 「ああ~なるほど!」


 「そう! 美少女ではなかったけど、まさか、イケメンが釣れるとは私も思わなかった」


 「イケメン…………ゴクリ」


 「まあでも、私もそんな得体の知れない男にホイホイついて行くような人じゃないから、一先ず、彼を助けて依頼された隣国にそのまま預けちゃったんだ」


 「え? 預けたの? 何も言わず?」


 「……別に男が欲しくて調査した訳じゃないし、もう一つ収穫物の方がよっぽど重要だったから」


 「もう一つ?」


 「シーちゃんがアーサ王から貰った聖剣さ」


 「ええ!? ていうか、モグって今、何歳なの!?」


 「ん? ひぃふぅみぃ──……四百と二十歳くらいかな?」


 「おばあちゃん!?」


 「誰がババアじゃ!!」


 「いや、言ってないよ。それより、話を続けて」


 「コホン。その聖剣は長い年月をかけて出来た竜殺しの剣だったことが後に判明した。けど……」


 「けど?」


 「シーちゃんはわからないか。まあ、そうだよね。セレン、代わりに答えて」


 「何で私が」


 「いいじゃん、別に! 分かっているでしょ!」


 「はあ。では、シエテ様。もし、その剣が竜族に知れ渡った場合、どうなりますか?」


 「え? うーん……。ちょっと怖いかも」


 「三十点と言ったところでしょうか。その回答では」


 「他に何が──」


 「人が竜を簡単に殺せてしまうんだ」


 「ッ!」


 モグの一言で気が付き、はっとする。モグの言う通りだ。もし、これが知られたら戦争が起こっても不思議じゃない。この剣はとても恐ろしいものだった。


 「私……そんなものを……」


 「だからこそ、急ぐ必要があった。それを封印したり、どこかに埋めたり、私しか知らない場所に隠したり……あらゆる策を考えた。その結果、私が作った特別な鞘に剣を収める事になった」


 「でも、持ち主は王様のお父さんだったのよね?」


 「ユーサには昔、世話になったからね。研究の資金や部屋をくれたんだ。セレンに会ったのもその頃さ。可愛かったな~。幼いセレンは。私を『お姉ちゃん』って呼んでくれていたんだよ?」


 「昔の事です。ふん」


 「フフッ」


 セレンのちょっと恥ずかしがる顔を見る事に成功して口元が緩んだ。


 「それでユーサに聖剣を使うのではなく、継承用として譲ったんだ。まあ、シーちゃんに渡っちゃったのは想定外だったけど」


 そうこうしている内に例の湖に到着。とても綺麗な湖で、水が透き通っている事から中の様子も見える。特に変わった様子はないみたいだが……。


 「モグには何か見えるの?」


 「何かというか、私にはこの水は全て汚れている」


 「うそ……」


 「あの頃はまだここまでひどくはなかったんだけど、これはひどいな……」


 「何があったの?」


 「……わからない。けど、嫌な予感がする……ッ! 誰だ!」


 モグが突然、林を見る。その薄暗い林から人影が現れると徐々にそれが男であることが分かった。その男がモグを一目見ると、「おーい」と声を上げながらこちらにやって来る。私がどうしたらいいかわからずモグを見ると、「はあ」と呆れた顔でやって来る人物に手を振った。モグの反応からして敵ではない事がわかり、警戒を解く私だったが、近づいてきた男の顔を見た途端、思わず声を荒げた。


 「あああああああ……ッ!」


 「来るなら一言くれっていつも言っているだろ? 師匠」


 「別に私が何時来ようが勝手でしょ。それより、この娘に言う事あるでしょう?」


 声を荒げた私の目線の先には、あの時殺されかけた敵であるはずの男だった。


何卒、評価、お願いします。

また次回。

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