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新第十話 闇を取り込む闇

「許すといったけど、ちゃんと説明してもらうわよ?」


 「もちろん、そのつもりさ!」


 二人の少女が一人の女性と対峙する。女性は黒く輝くナイフをちらつかせながら、二人の少女をきっと睨む。突如、その女性──ネヴィアが動いた。


 「ッ!」


 「シーちゃん、後ろに!」


 「分かった!」


 私がモグの後ろに転がる。同じくネヴィアがモグに向かってナイフを振りかざす。


 キンッ!


 モグが足元から黒く硬い足をバッと伸ばしてそれを防ぐ。続いて私が隙を見計らってスキルを放つ。


 「【パーフェクト・スキル】……!!」


 ピンドドン!


 久々に聞くコミカルな音と共に生み出されたのは、大きなバナナの皮だった。結構デカイ。


 「ッ! こんな時に限って!」


 「いや、それでいい」


 「?」


 生み出した皮に一瞬驚いた事でネヴィアが態勢を崩す。モグはそのチャンスを逃さなかった。


 「しまっ──」


 「おそい!」


 ズドンッ!


 無数の足をネヴィアの腹を狙って攻撃する。再び壁に飛ばされ苦悶の表情を浮かべる。パラパラと壁面が崩れ落ちていく。ネヴィアが「ペッ」と口に溜まった血を吐き出す。そして口を拭い、落ちたナイフを足先で踏んで上に上げ、真っ直ぐこちらを睨みつつキャッチする。グググとナイフを握りしめ、怒りを露にする。その気迫に私はゾッとした。


「……ッ!」


 「……ネヴィア、いくら私がこの身体になったとしても力は変わらない。このまま戦いを続ければ、負けるのは君だぞ」


 「チッ。誰が心配してって言ったのよ! あんたさえいなければ、私は……私は……ッ!」


 「……ああ。私は罪を犯した。君やあの二人にも……。あの頃の私は富や名声なんかよりも自分を知りたかったから。すまない。謝って許してもらえる事ではないかも知れないが、かといって今ここで、君と戦う資格は私にはない」


 その言葉にネヴィアは私に目線をずらし、言った。


 「……あんたは……。あんたは、何で! この犯罪者を許せるわけ!? 答えなさい!」


 気迫に満ちたその言葉にたじろぐも、勇気をもって、私の気持ちを答えた。


 「……だって、一人はさみしいから」


 「……?」


 「もし私がモグの立場だったとしたらきっと、さみしくて自分を見てくれる誰かを探し求めていたと思う。きっとそうだと信じている。私がモグを信じる様に」


 「ッ! シーちゃん……」


 「だから私が、モグの隣で対等の立場で色んな事を話せる人──《友達》に心からなりたい!」


 「……あーあ。くだらない。お友達ごっこ? ふーん。その結果が『私』じゃない。対等の立場の存在をそいつ自ら作り上げ、私達は出来た。それなのに、今は戦っている。……()()()()()()()()()()()


 「……いいえ、違うわ。貴女は一つ、選択を誤った」


 「間違うわけ──」


 「貴女はモグに歩み寄らなかった」


 「ッ!?」


 私はモグに目線を向けると微笑み、頷いた。


 「モグには友達が居なかった。人と違う力を宿してしまった運命とひたすら向き合い、努力し、結果、貴女達を生み出してしまった。……けれど、私と出会った事でモグは変わった……変わり始めた!」


 私は真っ直ぐ前を見据え、自分の胸に手を当てる。そして心の声を敵であるネヴィアに叫ぶ。


 「モグが一番側に居て欲しかった貴女が何故、()()()()()()……ッ!!」


 「ッ!」


 その一言にネヴィアが初めて動揺を見せる。──が、ネヴィア達を操る者がそれを許しはしなかった。ネヴィアが自らの意思でナイフを落とし、歩み寄ろうとした瞬間、そのナイフからおぞましい何かが彼女の身体の自由を奪った。


 「うッ!? 何よ……これ……こんなものが……ッ!」


 「ネヴィア!」


 「何だ!?」


 黒い物体が徐々に彼女を永遠の闇へと誘う様に、彼女の全身を黒く染めていく。このままではまずいと感じた二人が彼女の元へ駆け寄る。すると、


 「来ちゃ……だめ……マリン……様……」


 「待て! 私が助ける!」


 「あの娘の……居場所は……湖……の──」


 「ネヴィアーッ!」


 ギュゴゴゴオオオオ……──フッ。


 「ネヴィアアアアアアアアアアアアアアアアア……ッ!!」


 モグが叫ぶ。しかしその声は届かず、ナイフが散乱しているだけだった。このままではモグの意識が危ない。そう感じた私が空かさず、彼女が最後に残していった言葉をモグに言う。


 「──湖。最後、湖って言ったわ!」


 「……ああ。行こう、シーちゃん。ネヴィアは私が助けて見せる!」


 「私も、ミーヤちゃんを助ける!」


 私がモグの手を優しく繋いだ。いつの間にか夜は明け、割れたステンドグラスの窓に光が差し込む。一部残ったガラスには二人の女の子が手を繋いだ絵が色鮮やかに輝いていた。


今日は文字数少なめなので、もうひとつ出します

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