2日目
気が付くとそこは薄暗い四畳半であった。かくして私の家はこのような間取りでは無く、畳もこの様な新調された物ではなく、座ると井草が体に纏わりつく様な忌々しい畳であった。
私がこの様になったのは幼少期に問題があると言えよう。―――保育園生くらいの時だったろうか。私は生まれつき怠惰な人間であったので、母方に、「保育園は行かなくてもいいか」と尋ねた所、「別にいいよ」と返ってきた為、当時や高校時代なんかはそれを自慢して回っていた。後になり、それが貧困の為であったと知った時は酷く悲しんだものである。
さて、この四畳半についてだが、部屋の中には本棚がいくつもあり、その作品には、「ダーウィンの進化論」「果物語」「しっかりドラゴンが嫌いな異世界転生~そしてそれに狙われたバジリス(別名:バジリスク)~」などがあるが…どれも知らない作品である。窓の外は茜色に染まっており、窓は開かない。また部屋の中にはコンビニのカレーパンと缶のコーラがあるだけ。今はとてもファミレスのチキンが食べたいところである。ガーリックトーストでもいいが。
扉は開かないが、部屋の中は比較的快適なので、ここで時間が過ぎるのを待つことにした。
すると、唐突に部屋にインターホンが響いた。―――部屋の中というか頭に響くような…
「―――はい」
「あ、宅急便です」
―――どうやら寝落ちだったようだ。夢の四畳半は…異世界?あれは…
元の部屋の中には、黒いトカゲが、颯爽と走っていた。