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きっと一生縁がないもの  作者: 冗長フルスロットル
第二章 恋人たちの10月
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ゲームの結果はニコラス・シルヴィ組の圧勝だった。シルヴィ以外の面々は誰もカードに集中しておらず、あるいは集中できなかったため、彼らの中で唯一勝利への情熱をめらめらと燃やしたシルヴィが勝ったのは、当然といえば当然のことなのかもしれない。


勝敗がつくと、精神的にどっと疲れた上に、もうこれ以上親友たちと妹たちの仲のよすぎる様子を目にしたくはなかったラザールは


「俺はもう休むよ。明日は久々の遠乗りだから、早く寝て明日に備えたい」


と力なく宣言した。自分がいなくなることで親友二人が妹相手に好き勝手するのだろうと思うと、本当にこれでいいのだろうかと自問せずにはいられなかったが、それでも先に下がることにしたのは、ラザールの精神が限界を超え、半ば自暴自棄になっていたからだった。


ラザールなしで二組の恋人の中に身を置くことはつらいと判断したアリーヌが慌てて


「私ももう寝ることにするわ」


とラザールの後に続いた。


「わ……私もそうします」


震える声でラザールとアリーヌの後に意思表示をしたのはイヴェットだった。彼女はラザールとは別の意味で精神が限界を超えていた。兄や妹もいる場でスヴェンに耳や首を刺激され、イヴェットは心臓が体から飛び出てしまうのではないかと思うほどどきどきしてしまっていたからだ。この機を逃してここに留まることにでもなったら心臓に負荷がかかりすぎて死んでしまうのではないかとイヴェットは本気で思った。


シルヴィは最後に勝ったことで満足したのか、ラザールとアリーヌにとって意外なことに、


「じゃあ、私も寝るわ。皆寝てしまうならつまらないし」


とあっさりと言った。


シルヴィの隣に座っていたニコラスが気を利かせてテーブルの上に散乱していたカードを集めた。


ひとまとめにしたカードを自分に手渡すニコラスに、ラザールは


「ニコラスは?」


と尋ねた。


「ああ、皆が寝るなら俺も寝るよ」


残るはスヴェン一人だったが、その他の全員が寝ると言っている以上、彼も休むことになるだろう。


ラザールがスヴェンに視線を向けたところ、ラザールは彼に何も訊かなかったのだが、彼のほうは一度大きくうなずいた。


「じゃあ、今夜はこれで解散ということにしよう」


ラザールは学校では生徒たちの取りまとめを任されることが多い。その時のくせが今回のような場でも発揮され、ラザールの言葉を合図に、一同は互いにお休みの挨拶をしてから各自の部屋に戻った。


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