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5話

騒動が収まったので、僕は衛兵に声をかけてからその場を後にする。

衛兵が「チハルさんの御慈悲に感謝を」って言ってたけど、チハルのこの街の立ち位置が分からないよ。

住民の反応だとよく血祭りを上げているみたいだったけど、衛兵は咎めることをしないって不思議なことだよね。

ゲームの中では街の人からは魔女とも呼ばれているっていう設定だったはずだけど、魔女を通り越して暴君かなにかになってるように感じた。


でも、まぁ……。

浮かれてたせいでいらないトラブルが起きてしまったし、いろいろ気をつけないとだ。


僕は昼食を買う為に食堂『熊猫亭』へ向かう。

熊猫亭は主人公のモネがよく来ていた食堂で、宴会などのスチルに描かれていた料理がかなり美味しそうだったんだよね。


店の前まで来ると恰幅のいい50歳くらいの女性が道路に水を撒いていた。

彼女はこの店の女将でメージャと言って、街のおっかさん的な人。


「おや、チハルさんじゃないかいらっしゃい。うちにくるなんて珍しいですね」

「今から西の森に行くんじゃが、昼食用にお弁当って頼めるかの?」

「大丈夫ですよ。サンドイッチとかでいいですか」

「大丈夫じゃ」

「はい、すぐ作りますのでお店の中で座って待っていて下さいね」


メージャに促されて店の中に入る。

店の時計を見ると10時過ぎ、結構広めの店だけど時間が時間だからか朝から飲んでるお爺ちゃんくらいしかお客さんはいなかった。

ぼんやりしながら待っていると「おまたせちまちた~」と、やけに舌っ足らずな声がしたので、そちらへ振り向けば。


自分の体の半分はありそうなバスケットを抱えて、熊猫耳の白髪の幼女がふらふらしながらこちらに向かって来ていた。


カ、カワイイ。


「チハルさんすみませんね。どうしても運びたいって聞かなくて」


幼女の後ろにいたメージャは、バスケットを落とすんじゃないかと心配そうに見ながらも苦笑していた。


「あはは、可愛らしいじゃないか」

「どうじょ~」


重いのかプルプル震えながら僕に向けてバスケットを持ち上げている。


「ありがと、お手伝いかい? 偉いね」

「えへへへ」


バスケットを受け取り、頭を撫でて上げると満面の笑みを浮かべている。

でも、この幼女初めて見るね。

ゲームでは登場してなかったキャラだ。


「この子はメージャの子供かい?」

「あははは、流石に産める歳じゃないですよ。旦那の妹の子供で一時的に預かってるんですよ」

「ほぉ、いい子そうじゃな」

「お手伝いもよくしてくれるしいい子ですね。あたしの馬鹿息子がこのくらいの歳の時はいたずらばかりしてたのに女の子だとまた違うんですかねぇ」


僕は子育てとかしたことないからわからないや。

でも僕も子供の頃は遊んでばかりだったかも?


「そうかもしれんのぉ。あたしは産んだことないから分からないが」

「でも、チハルさんはアネモネちゃんとラパンちゃんを育てたじゃないですか」


あっ! ヤバイ、そうだった!

話を変えないとボロが出そうだ。


「あ~、あの子達はいい子に育ってくれたのぉ。そ、それでサンドイッチはいくらじゃ?」

「あっ、500ゴルになりますね」

「500じゃな」


不審がられてないしごまかせたかな。

僕はお金の入った革袋から銅貨6枚を取り出し幼女に渡した。

お金の価値は感覚的に1円=1ゴルで。

鉄貨1枚で10ゴル

銅貨1枚で100ゴル

銀貨1枚で1000ゴル

金貨1枚で1万ゴル

白金貨1枚で100万ゴル

っという感じの貨幣価値がある。


「い~ち、に~、しゃ~ん、よ~ん、ご~、ろ~く。あれ、おおい?」

「1枚はお手伝いしている良い子へのプレゼントじゃ」

「いいの? わ~い! おばちゃんもらった~」


よほど嬉しいのか幼女はピョンピョン飛び跳ねながらメージャに銀貨を見せている。


「チハルさんすみません。ほら、ホムホムお礼は言ったの?」

「あ、おばあちゃん。おりがとごじゃまちた!」


幼女はホムホムちゃんって名前なんだ。

なんか過去へ行くことが出来そうな魔法少女みたいな名前だね。


バスケットに被せてある布をめくると、たまごサンドやハムサンドといった定番のサンドイッチの他に唐揚げみたいなおかずも付いてた。


「おいしそうじゃの」

「ホムはね。たまごシャンドがしゅき!」

「そうかそうか」


たまごサンドを思い出してるのかホムホムは涎を垂らしてる。

サンドイッチは結構な量もあったし1つくらい上げても大丈夫そうかな。

一応上げてもいいか保護者に確認は取らないとだけど。


「ホムホムに1つサンドイッチを上げても大丈夫か?」

「!」


めっちゃホムホムちゃんが反応してる。


「お気持ちは嬉しいですが、今食べさせちゃうと昼食が食べれなくなっちゃうので」

「あー、それもそうか」

「えー、たーべーたーいー」

「今は駄目じゃが、きっと昼食はたまごサンドを作ってくれる思うぞ」

「おばちゃんほんと!?」

「そうだね。お手伝いもしてくれたし、お昼はたまごサンドにしようか」

「やった~!」


またもやホムホムちゃんはピョンピョンと飛び跳ねてる。

さて、お弁当も手に入ったしそろそろ西の森に行かないと遅くなっちゃうかな。


「それじゃ、そろそろ行ってくるかの」

「はい、お気をつけて。バスケットは帰りにでも返却してくれれば結構ですので」

「わかった」

「おばあちゃんばいば~い!」


メージャとホムホムに見送られて僕は西の森へと向かった。



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