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4話

当面の目標は決まったけど、実際問題僕がボスとか倒せるのだろうか?

チハルは最強キャラだけど、僕は喧嘩も満足にしたことがないし、武道の心得なんてもちろんない。

でも千春の時より身体が軽い感じはする。

僕は軽くシャドウボクシングのように拳を左右に打ち出すと、スパンっとキレの良いパンチが打ち出た。


「おぉ~、スゴイ!」


蹴りも試してみると自分の頭上より高く脚が上がった。

僕は身体は硬かったから脚なんて腰くらいまでしか上がらないのに、前屈すれば手の平が床にくっつくし、開脚すれば180度股が開いた。


ババアの身体凄い!


バレエのI字バランスのように、脚をゆっくり上げ180度のところでピタリと止める。

片足立ちなのにいっさい振れる感じもしない。

本当に凄いと思っていると鏡に脚を上げているチハルの姿が目に入った。


脚を上げたことによってロープから露わになっているババアの生脚。

そしてもっさりした感じの肌色のババアの下着。


コレハヒドイ。


僕はそっと脚を下げた。

うん、目に毒だね。

次からは絶対ズボンを穿こう。

僕は心に固く誓いました。


幸いチェストにズボンがあったのでローブの下に履く。

嫌なものを見てしまったせいで上がっていたテンションは急降下したけど、チハルのこの身体ならなんとかなる可能性が出てきた。

後は雑魚敵あたりと戦ってみて僕が本当に動けるかどうかを確認しないとだ。

そうすると西の森あたりへ行くのが良さそうかな。

西の森はゲームの序盤で行く狩場で、RPGでお馴染みなスライムとかゴブリンなどが生息している。


西の森に行く為に部屋を出て1階へ行くと、モネとラパンがお店の開店準備をしていた。

この家は2階が住居になっていて、1階が錬金術で作ったアイテムの販売所。

地下に錬金工房がある造りになっている。


「あれ、師匠どうかしました?」

「ちょっと食べ過ぎたから運動がてら西の森へ散歩に行こうかと思ってな」

「西の森ですか、そうするとお昼はどうしますか?」

「あー、そうじゃな。どうするかの」



そっか、ゲームだと一瞬でいけるけど実際は歩いて行くから移動時間がかかるのか。


「お弁当とか作りましょうか?」

「んー、流石に悪いし何か街で買うことにするかの」


僕は硬貨の入った革袋をローブの裾から取り出しながら答えた。

この革袋はさっきズボンを探している時に見つけたんだよね。

この世界のお金持ってなかったから助かったよ。


「あれ、それって師匠のヘソク……。な、なんでもないです!」

「へ?」


ヘソク……、ヘソクリか!

チハルのヘソクリはモネにバレバレだったんだね。


「あの、コレ使って下さい」


ヘソクリに手を出すほどお金に困っていると思われたのか、ラパンに見えないような感じで金貨を1枚渡してきた。

モネは気遣いができるいい娘だね!

その気遣いがなんか辛いけど。


「だ、大丈夫じゃ、行ってくる!」

「あっ、師匠!」


流石に受け取れない。

僕は逃げるように家を飛び出した。




街中を歩いている僕は興奮している。

中世ヨーロッパを彷彿とさせる街並みはゲームで見たそのまま!

頑固オヤジのドワーフがいる武具屋に、猫人族の看板娘が可愛い道具屋などなど、いざ目にするとテンションが上りまくる。

僕は聖地巡礼とか何が楽しいんだろうって思ってたけど、なんとなく気持ちが分かる気がしてきた。

いろいろ目移りしながらフラフラ歩いていたら人にぶつかってしまった。


「痛っ、あ、すみません」

「いってーな、ババア! 前見て歩け……よ?」


2mはありそうな巨漢にモヒカンヘアーの男は、ぶつかられて苛立った顔だったのに、僕の顔を見ると驚愕の顔に変わり、またたく間に青い顔になった。


そして土下座した。


「すみませんでした!!!」

「ちょっ、どうしたの!?」

「俺が道の真ん中にいたせいでチハルさんがぶつかってしまうことになってしまって申し訳ありませんでした!」

「なんで君が謝るの、ぶつかったのは僕だよ!」

「でかい図体の俺が道にいたのがそもそもの間違いです。しかもババアなどど言ってしまって……殺さないでください!」

「いや、どう見てもババアだし。って殺さないよ!?」


モヒカン男の予想もしなかった行動に僕はお年寄り口調も忘れて狼狽えていると、騒ぎに人が集まりだした。


「なんかあったのか?」

「どうやらチハルさんにババアって言ったらしいぞ」

「アイツ死んだな」

「だな」

「この前B級冒険者になったって喜んでたのにな……」

「ママー、血祭り?血祭り?」

「血祭りだねー。また見れるね」

「うん! やったー!」


野次馬達がいろいろ言ってるけど、チハルってそんなに凶暴なキャラだっけ?

後、そこの親子!血祭りで喜ぶなよ、怖いわ!

しかもまたって、何回かやってるのか!?

僕が野次馬の話に驚愕していると。


「そこで何をしている!」


衛兵の格好をした、年配の男性と若い感じの男性の2人組が駆け込んできた。


「何をしてると言われても……」


僕が聞きたいくらいだよ。

年配の男性に、僕がぶつかってしまったのに何故か土下座しだしたと伝える。


「あー、チハルさん今回は見逃してもらえないでしょうか?」

「見逃すも何もぶつかったあたしが悪いしの」

「おー、それでは見逃してもらえるのですね。そこのお前良かったな!」

「ほ、本当ですか」


土下座していたモヒカン男は勢いよく起き上がり涙目で確認してくる。


「本当じゃ、ぶつかってすまんかったの」

「本当に本当ですか! ……殺さない?」


コクンと頷くと。


「おー、神よ!」


何故か祈りだすモヒカン。

それを見て「よかったな」っと涙ぐんでいる年配の衛兵。

なんかカオスだ……。


僕が許したことで若い衛兵が野次馬を解散させている。

誰も死ななくてよかったって言っている中、子供だけが「血祭りはー?」っと母親に確認していた。


あの子の将来が不安すぎるよ。






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