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1話

「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁ!」


僕は鏡に写った姿に叫ばずにはいられなかった。

吊り上がった目に、寝起きなのかボサボサの白髪頭。

しみが所々にある顔には皺がいっぱいある。

このしわくちゃの顔はどう見てもババアの顔だ。

そうババアなのだ。

胸を触れば垂れ下がった乳は有り。

股間を触ればマイサンは無かった。


「ジーザス!」


僕はその場で涙ながらに崩れ落ちた。


僕の名は雪城千春。

22歳男性。


男 性 で す 。


決してこんな年寄りな年齢でもなく、性別も違うなんてことはない。

ないはずなのに僕はババアになっていた。

訳が分からないよ。

しかもこのババアの姿は、僕がハマってプレイしているゲームの『アネモネの錬金術士』に登場する主人公の師匠であるチハル80歳にソックリである。


マジでなんだコレ。

僕は、一週間の仕事も終わり、明日からゴールデンウィークなので連休中ずっとゲームする為に、途中で外出などしなくていいように食料も買い込んで万全な準備をしていた。


え、連休中ゲームしかやることないなんて寂しい奴だなだって?

ほっとけ、ゲームにハマりすぎて彼女に振られたんだよ!


ちょーっとばかりインスタントメッセンジャーのLONEの返事が遅くなったり、デートを断ったりしてたのが振られた原因だ。

彼女に「ゲームと私どっちが大切なの!」って怒られて「もちろんお前だけど、ゲームも好き」って正直に答えたら、思いっ切り頬を引っぱたかれて「もう知らない! ゲームと付き合ってろ、このハゲ!」って言われ走り去られてしまった。

すぐに追い掛けたかったけど、平手が物理的に効いていて軽い脳震盪を起こしていた僕には無理だった。

その後「ごめん」とLONEしたけど「もう無理。別れて」という感じで振られた。


同僚にも「お前はアホか」って呆れられ、僕自身もゲームを優先してたのはまずかったかなって思ったりはするし後悔もしたけど。

こうして連休中ゲーム三昧しようとするあたり、僕は頭のネジは何本か外れてるかもしれない。


夕ご飯を食べ、風呂に入り、ジュースとお菓子を用意して。

「さぁ、やるぞ!」とゲーム機のスイッチを押したら、ゲーム機から目も開けられないほどの眩しい光が放たれ、突然の閃光に目を潰された僕は「目が、目が~!」とのた打ち回っていた。

しばらくは何も見えなかったけど、なんとか視力も回復してきて、まず目に飛び込んだのがこのババアの姿である。


ありのまま、今起こったことを話せば。

僕はゲームをしようとしたらババアになっていた。

何を言っているか分からないと思うけど、僕も分からない。


どこぞの髪を立てた髪型のポルなんとかって人みたいな状態だよ!

僕がこの状態に混乱しているとガチャリと部屋のドアが開いて誰かが入ってきた。


「お婆ちゃん起きた~?」

「……マジカ」


入ってきた人物を見て僕は驚いてしまう。

大きな赤い瞳に、白色の髪のショートボブが凄く似合っている可愛い子。

ゴスロリっぽい服を着ていて、誰もが美少女と答えるであろう容姿だけど、なにより特徴的なのは頭上でウサギ耳がぴょこぴょこ動いてる。


ウサギ耳で驚いてるわけじゃない。

耳が動いてるってことは十分ビックリすることだけど、僕が驚いたのはこの子もゲームで登場するキャラクターの1人に激似だからだ。

ボクは恐る恐るそのキャラネームを呼んでみる。


「……ラパン?」

「な~に? っというかお婆ちゃん床で四つん這いになって何してるの~?」


声もゲームと同じ、名前も否定しない。

つまりこの子は『アネモネの錬金術士』で出てくる主人公の攻略キャラの1人のラパン本人なのか?


イヤイヤイヤ。


ゲームのキャラが現実にいるわけがない。

あっ、そうかこれは夢だ!

僕は頬を思い切り抓ってみた。


「いひゃい」

「……お婆ちゃん本当にどうしたの~?」


ラパンが不思議そうな感じで首をちょこんと傾げてこちらを見ている。

美少女のこういう仕草は可愛いなって思ってしまったけど。

もしラパンがゲームのキャラだったら少女ではないんだけどね。


ラパンは俗に言う男の娘キャラ。

男の娘キャラなのに主人公の攻略キャラだからゲーム会社はかなり冒険したと思う。

某大型掲示板などでは、発売前の情報の段階では男の娘キャラに抵抗があった人はキモイとかかなり叩かれていたけど。

いざ発売されてラパンルートをクリアーした人は。


「ラパンくんカワイイ」

「ラパンは俺の嫁」

「拙者いけない扉を開けてしまったでござる」

「ムチャしやがって……。だが安心しろ俺も開けた」


などなど、カワイイは正義な感じで一部の人には人気キャラになっている。

僕はそっち方面とかの抵抗はない人だから普通にプレイしてたけどね。


自分で抓った痛む頬を擦りながら考える。

頬は痛いから夢ではないということに。

本当にありえないけど、僕はゲームの世界へ来ちゃった可能性が高い。

小説とかアニメとか異世界転生の話はごろごろあるし。

僕も好きでよく読んではいたし、中学時代は自分が転生してゲームの世界に!なんて妄想をしてた時代もあったよ?


やったね!中学時代の夢……叶ったね!?

って、そんなわけあるかっ!


普通さ、こういうのって主人公とかライバルキャラとか魔王とかになるのが定番なのに。

よりにもよってババアになるっておかしいでしょ。

年齢もだけど性別も違うんだよ。

僕が千春だからチハルにってか?

マジで嫌すぎる。


神様!いるんだったらやり直しを要求します!


両手を組んで拝んでみるけど、当然何かが起こるはずもなかった。

読んでくれてありがとうございました。

感想や評価などしてもらえると凄く嬉しいです。

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