episode9 ゴーレムロンド
お互いが元宮廷魔術師だとわかったリベールとベガは意気投合し、新しい魔法の開発に乗り出す。
ベガと俺は一通りお互いの技術を確認した後、
協力してある魔法を開発することにした。
その名も『ゴーレムロンド』。
単体で出すのがやっとのゴーレムを
小さくするかわりに、複数体出す大型魔法だ。
苦心を重ね、眠れない夜を過ごすこと一ヶ月。
ついに魔法が完成した。そして、その魔法を試す機会も
早くやってきた。
「ちょっと!アルがまた村にやってきたわよ!」
俺とベガが燃え尽きた顔で紅茶をすすっていると、
ジェシカが駆け込んできた。
「来たか。いい機会だな。」
「いい機会ね…」
不気味に笑う2人にジェシカはドン引きするのだった。
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広場に行くといかにも盗賊団って感じのゴロツキどもが、
わぁわぁ騒いでいた。こんなのが役人だから世も末である。
「お前ら何の用で来た!」
集団に向かってそう叫ぶと、アルがこっちを見てゆっくりと
歩いてきた。
「これはこれはリベールじゃねえか、元気してたか?」
アルは気持ち悪い笑みをニヤニヤ浮かべる。
「おかげさまでな!」
怪我をした腕を見せつけるとアルは嬉しそうに笑う。まさに人間のクズだ。
「俺様が可愛がってやってた村が最近性懲りも無く、復興してるってんで
ちょっと見に来てやろうと思ってな。」
言い終わるとアルは懐から一枚の紙を取り出した。
(ラヌゼルタ村の徴収命令…か)
どこから手に入れたのか王様のサインまでついた徴収命令書だ。
税率は現資産の100%と内容はめちゃくちゃな内容である。
「死にたくなかったら全財産をよこしな!」
言い終わるとアルとその仲間は武器を引き抜き威嚇し始める。
家に隠れている住民からは思わず悲鳴が漏れる。
「そうはさせん!『ゴーレムロンド』!!」
詠唱と共に地面に杖を突き立てると、ゴーレムが17体現れ、アル達を囲んだ。
「ヒィッ…」
逃げ場を失ったアルとその手下はダラダラと汗を流す。
ゴーレムはジリジリと間合いを詰め、さらに追い詰めていく。
すっかりゴーレムに包囲されたアルたちはついに両手を挙げて叫ぶ。
「わかったわかった降参だ!」
「許してやってもいいが、二度とこの村に立ち入るなよ?」
「わかったって」
そうしてアル達は退散して行った。
「あいつらまた来るんじゃない?」
ベガは汚物を見るような目線でアルたちをにらみつける。
「そうだな、今度は地方騎士とから連れてきそうだ。」
俺とベガは腕組みしながら、逃げていくアルを見守った。